ringoのつぶやき

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世界をトロンでつなぐ(1)東大教授坂村健氏――無料の国産OSを提唱(仕事人秘録)

2014年07月22日 11時03分31秒 | ケンミレコラム

(日経産業)

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  坂村健氏は1984年、国産の基本ソフト(OS)「トロン」を開発した。だれもが無料で使える「オープンソフト」の草分けで、現在も家電などで幅広く使われている。ただ、パソコン用OSでは日米貿易摩擦のあおりで普及しないなど苦渋もなめた。坂村氏とトロンの軌跡は日本のソフト開発の盛衰とも重なる。
 2013年12月、東京・六本木の東京ミッドタウンで「トロンショー」が開かれた。私が開発したトロンを、その基礎技術から応用であるトロンを使ったIoT――「モノのインターネット」まで紹介するイベントだ。今回も富士通や日立製作所など46社、3日で延べ1万人以上の関係者でにぎわった。
 最近は機器間通信(マシン・ツー・マシン=M2M)やIoT、ユビキタスコンピューティングに注目が集まっている。それらを制御するトロンへの関心も高まっている。
 ほとんどの人はOSというとパソコン用のウィンドウズ、スマートフォン用のiOSやアンドロイドを思い浮かべるだろう。しかし、OSは世の中のもっと色々なところで使われている。
 10年に地球に帰還し、そのドラマチックな展開に映画化もされた小惑星探査機「はやぶさ」にもトロンが使われている。トロンの得意とするのが、このようなリアルタイムな計算を必要とする機械の制御。華々しく表には出てこないが、生活を裏で支える黒子のような存在だ。
  トロンは誕生から今年でちょうど30年。トロンの歴史はまさに「山あり谷あり」だった。
 現在は機器制御用OSのシェア60%を占めるまで成長した(13年時点)。しかし各国の思惑や企業のエゴなど色々なものに振り回されてきた。歴史に「if(もしも)」はないが、トロンがウィンドウズのようにパソコン向けOSとして使われ、世界中で普及する可能性もあった。
 機器制御用OSとしては世界最大のシェアを持つため、よく「OS一つにつき10円でも取っていればマイクロソフトの創業者みたいに大金持ちになれたのに」と言われる。
 しかし、もしお金をとっていたらここまで世界に広がらなかっただろう。トロンは仕様を全面的に公開するオープンアーキテクチャーだ。誰もが無料で使え、手を加えることもできる。これこそトロンの大きな貢献と思っている。だれもがITの利益を等しく享受できるように。そんな単純な思いが今も私を突き動かしている。
 トロン自体はコンピューターの歴史のほんの一部だ。それでも私は様々な形で日本のコンピューター開発の多くにかかわることができた。それらを振り返ることで、読者の方々の役に立てれば幸いだ。
 さかむら・けん 1979年(昭54年)慶大大学院工学研究科修了、同年東大助手。84年に組み込み機器用OS「トロン」を開発。96年に同教授。2003年に紫綬褒章を受章。現在、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長や政府の国家戦略特区諮問会議の民間議員なども務める。東京都出身。62歳。
 遠藤賢介が担当します。


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