皆が楽観的になっているときこそ注意が必要
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日本株は完全に膠着状態にある。25日の日経平均株価は、先週末の米国の主要株価指数が過去最高値を更新したことなどを受けて、上値を試す場面があった。しかし、その後は徐々に上値が重くなり、引けでは前週末比6円安の1万6620円となった。
下値を売る動きも限られているが、上値を買う動きも少ない。今週は26・27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、28・29日には日銀金融政策決定会合が開催される。さらに企業業績の発表も続いている。これらの状況の中で、上値を買う動きが手控えられるのは当然かもしれない。
もはや「金融まつり」と化した金融政策決定会合
市場では、日銀が何かしらの追加緩和策を導入するとみているようだ。安倍政権が具体的な景気刺激策を発表することに合わせて、財政・金融の両面での景気押し上げ策を発表することで、心理的な効果を狙おうというものである。
これらがどの程度の内容で、それが実体経済に効果があるかは全くの未知数だ。もちろん、実際に市場が驚くような内容のものになれば、株価やドル円相場は相応に反応するだろう。ただし、これらの反応が持続的なものになるかは不透明である。また先読みすることは、かなり困難である。実際には、市場の反応を見ながらの対応にならざるを得ないだろう。
特に値幅を取りに行くトレーダーの感覚からすれば、これらの政策の効果よりも、価格の方向性にしか関心がないといってもよいだろう。この点からも、いまの市場では、いまや「一大イベント」と化している金融政策の決定のタイミングは、まさに最高の収益機会となっている。このことを政府・日銀が知らないはずもないのだが、これらの動きをコントロールすることはできない。政府・日銀関係者は、イベントに賭ける市場参加者の行動を、指をくわえてみているしかない。株安・円高方向に仕掛けられたくないのであれば、市場参加者が納得するだけの実効性の政策を打ち出すしかないだろう。
それはともかく、頭を痛めているのは日本政府・日銀だけではないだろう。米国も現在のドル高の対応に苦慮しているものと思われる。ドルの総合的な価値を表す「ドル指数」は、97を超え、直近高値を更新している。7年ごとに上昇・下落を繰り返すサイクルが鮮明なドル指数だが、今年は下落、つまりドル安に転換する年だった。
再びドル高がリスク要因に浮上へ
確かに、年初からは徐々に水準を切り下げる動きが鮮明だった。しかし、これが反転し始めたのが5月末であり、さらに上昇をより鮮明にしたのが英国のEU離脱決定後である。このドル高基調が改善されなければ、いずれリスク要因として市場は無視できなくなってくるのではないかと考えている。
ドル高になれば、前回の本欄でも解説したように、ドル建て原油価格の下押しにつながる。原油価格が下落すれば、石油関連株に下押し圧力がかかる。またドル高はドル建てで取引されるコモディティ全般に下押し圧力となる。資源関連株が下落すれば、米国株への影響は少なからず出てくるだろう。また、ドル高は新興国通貨の下落につながる。これも市場リスクとしては、リスクオフ方向に作用することになる。この点を市場が重視していないのは、米国株が高値を更新し、楽観的な見方が蔓延しているからなのだろう。
以前にも解説したように、現在の市場構造においては、「ドル高=円安にならず円高どまり=資源国・新興国通貨安」が最悪のパターンである。いまはこれに「欧州通貨安」が加わった。
この関係が、徐々に市場にダメージを与える可能性があることを、市場はほとんど織り込んでいないだろう。このように考えると、FRBが利上げを敢行することは、とてもではないができるはずがない。自らドル高を誘導するような政策を取る意味は全くないといってよいだろう。利上げをせずとも、ドル高を強いられる現状において、米国にドル安に転換させるすべがあるのか、この点にも注目していくことになるだろう。
米国市場では、VIX指数(シカゴ・オプション取引所が作ったボラティリティインデックス=恐怖指数)が一時11台にまで低下するなど、市場が楽観した状態にあることを示す指標が相次いでいる。
この水準をみると、昨年の8月を思い出す。8月5日に一時10台を示した後は、徐々に水準を切り上げ、最終的には「チャイナショック」をきっかけに、一時53台にまで急騰した。いつものことではあるが、VIXの水準が低いことは、将来の高ボラティリティと株価の大幅な調整の可能性を示している。
そして、VIXが急騰するときは、決まって株価が急落するときである。VIXがこのような低水準にあるときに、上昇する株価をみて上値を買い進むのは、決まって楽観的な投資家である。無論、このような投資行動が大きな成果を上げることも少なくない。現在の米国市場では、過去最高値を更新する中でも、市場には過熱感はないとの指摘も多いようである。
しかし、前述のように、どうしても原油価格の低迷が気にかかる。さて、今回のケースはどのような結果になるか。FOMCを経た米国株の動向をまずは確認したいところである。