金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

30:岡田淳 『びりっかすの神さま』

2017-02-15 23:24:24 | 17 本の感想
岡田淳『びりっかすの神さま』(偕成社文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

毎日、そこですごしているひとには、わからないのに、
ふいに、よそからやってきたひとが気づく、そんなことがあります。
この物語の転入生は、四年一組の教室で、
いままでだれも見なかったものを、見ました。
小学中級から。

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小学生たちが大好きな岡田淳。
読むのは2冊目だけども、参りました。

成績で席順が決められ、勉強ができるかどうかが
互いにはっきりとわかるシステムになっている教室で、
そのシステムが突き崩されていく有様が、
本当に柔らかいタッチで自然に描かれている。
「勉強のできない子を見下すのっておかしいよ!」みたいな青臭いセリフは一切なく、
ただ「楽しい・面白い」を動機として仲間が増えていき、
そしてその中である種の自浄作用みたいなものが働いて
学びそのものは放棄されないという展開に感服。
ラストにはちゃんと驚きも用意されている。
「〇〇は××に似ていた」というラストは「え、なぜ??」と釈然としないけれど、
解釈の余地があって、大人も楽しめそう。

好みとは違うけど、すばらしい。


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29:杉森久英『天皇の料理番〈上〉』

2017-02-14 22:14:20 | 17 本の感想
杉森久英『天皇の料理番 (上)』(集英社文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

小さいときから強情でいたずらっこだった篤蔵は、
福井の大庄屋の次男坊。
高等小学校の時、ひょんなことから
鯖江連隊の田辺軍曹からご馳走になった“カツレツ”の味に仰天。
彼の運命が大きく変わることに―。
その後、家出同然に東京へ行き、西洋料理の世界に裸一貫で飛び込んでいく。
明治生まれの若者が、日露戦争以降の東京で、
激動の時代と共に、力強く成長していく立身出世の物語。

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なんかドラマになってたみたいね……という程度の
前知識しかない状態で読み始めた。
ナレーション部分で、「筆者も~」と作者の語りが入る小説、
久しぶりに読んだ気がする。
明治時代の洋食事情は知らないことだらけで楽しく読めたけれども、
どうにも主人公が好きになれない。
勉強熱心だし、人をよく観察して抜け目なくふるまうのは賢さゆえだけども、
この人、結構自分勝手なんだよね。
華族会館を辞めることになったのも、相手が悪いとしているが、
まずお前が悪いだろ!
そして、現代とは倫理観がずいぶん違うのだろうが、養子に入った先で、
嫁いできた奥さんを置いて失踪、死産してほっとする主人公は、
リアルなだけに腹立たしい。


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大河ドラマ「おんな城主直虎」#6

2017-02-12 20:44:16 | 大河ドラマ「おんな城主直...
大河ドラマ「おんな城主直虎」#6

最後の10分は良かったよ。最後の10分は。

お家と恋の板挟み、で45分使いよった……。
冗長に思えるのは、自分が結末を知っているから?
知らなかったら、「どうなるんだろう、ドキドキ」って思えたのかしら。

井伊の家に何かあったときのための備えとして、
亀と結婚しない道を選んだおとわには、ちょっぴりほろっときた。
周囲に迷惑かけなくっていたこの子がねえ……という視点で。
しかし、本当に何もしないな、おとわ父は……。

気の強い瀬名と竹千代も、着々とエピソードを重ねていっているのだが、
年齢設定に無理のありすぎる阿部サダヲの竹千代が、
瀬名の中で存在感を発揮するそのエピソードというのが、
「鷹をもらえないので雀を飼い、人に懐かない雀を手なずけた」
という何とも微妙なもの。
瀬名はおもしろいのでもっと出てほしい。
女子社会でうまく生きられない感じがいいよね。

鶴が不遇すぎて胸が痛い。
爆発して何かやらかしても無理ないだろう、これは。
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28:柚木麻子 『私にふさわしいホテル』

2017-02-08 09:31:18 | 17 本の感想
柚木麻子『私にふさわしいホテル』(扶桑社)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

「元アイドルと同時受賞」という、史上最悪のデビューを飾った
新人作家・中島加代子。
さらに「単行本出版を阻止される」「有名作家と大喧嘩する」
「編集者に裏切られる」etc.絶体絶命のトラブルに次々と襲われる羽目に。
しかし、あふれんばかりの野心と、奇想天外なアイデアで
加代子は自分の道を切り拓いていく―。
何があってもあきらめない不屈の主人公・加代子。
これぞ、今こそ読みたい新世代の女子下剋上物語。

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出版業界を舞台にしたコメディ。
『小説ばるす』に笑った。
こちらが慣れてしまったのか、徐々にパワーダウンしていくように感じられたのだけど、
ほしいものをつかみ取るために、人を蹴落とすのもいとわない、
エネルギッシュな主人公が面白い。
もうちょっとはっちゃけてもいいと思うけど。

作者さんと仲がいいのであろう実在の作家が、
キャラクターとして実際に登場するのは、
なんだかなれ合いを見せつけられているようで気恥ずかしい。

「人を嫌な気持ちにさせず、はっきりと映像が浮かび、
 主人公の成長が明確に描けていること、
 老人か動物か美味しいものが出てくればなおベター」
という「売れる本」の条件は、あるあるだった。


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27:ジェニファー・L・スコット 『フランス人は10着しか服を持たない』

2017-02-07 19:33:07 | 17 本の感想
ジェニファー・L・スコット『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~』(大和書房)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

間食はせず、食事を存分に楽しむ。
上質な物を少しだけ持ち、大切に使う。
日常のなかに、ささやかな喜びを見つける。
典型的なカリフォルニアガールだった著者は、
フランスの貴族の家にホームステイすることになる。
その家を取り仕切るマダム・シックから学んだ、
毎日を“特別な日”のように生きること。

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めちゃ売れてるってことと、
読んだ友だちがこき下ろしてたってことくらいしか
前情報がないままに読んだ。
意外に悪くない。
忙しさのあまり生活が荒れ果てていたときに読んだので、
余計に身に染みたのかも。
10着って少ないように思えるけども、実際気に入ってきてるものって
そんなに多くないんだよね。


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26:永井紗耶子 『帝都東京華族少女』

2017-02-06 19:37:06 | 17 本の感想
永井紗耶子『帝都東京華族少女』(幻冬舎文庫)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

明治三十九年の東京。
千武男爵家の令嬢・斗輝子は、
住み込みの書生たちをからかって遊ぶのが楽しみだが、
なぜか帝大生の影森にだけは、馬鹿にされっぱなしだ。
そんな二人が参加した夜会で、殺人事件が起きた。
嫌疑がかけられたのは、斗輝子の祖父・総八郎。
影森と斗輝子は、総八郎の疑いを晴らそうとするが——。
異色コンビが活躍する爽快&傑作ミステリ!

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初めての作家さん。
お転婆ヒロインと斜に構えた相手役という組み合わせは
ライト文芸によくある感じ。
実行犯については比較的早い段階で目星がついたものの、
その背景はかなり意外だった。

「異色コンビ」というほど、二人が進行上重要な役割を果たしているわけでもなく、
コンビとして味があるわけでもなく、
二人ともじいさんの手のひらの上で転がされているのみ。
ヒロインと相手役のキャラクターとか関係性はまったく好みではないけれど、
次々に新事実が明らかになる終盤は、楽しめた。
伏線回収も美しい。


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25:瀧羽麻子 『左京区七夕通東入ル』

2017-02-06 14:55:44 | 17 本の感想
瀧羽麻子『左京区七夕通東入ル』(小学館)
★★★☆☆2.5

【Amazonの内容紹介】

七月七日にわたしたちは出会った——。
京都での学生生活も4年目。
主人公の花は思いがけないことをきっかけに、
友人のアリサから合コンに誘われる。
三条木屋町の店にひとり遅れて現れた男子は、
その場にそぐわない一風変わった雰囲気の持ち主だった。
名前は龍彦だという。
「たっくんて呼んでいい?」「いいよ」。
文学部で数学嫌いの花にとって、理学部数学科のたっくんは謎に満ちていて、
また彼の暮らす学生寮の友人たちもどこかキテレツな理系男子で、
花はこれまで経験しなかった不可思議でにぎやかなキャンパスライフを

送ることになるのだが……。
いま注目の若手女性作家・瀧羽麻子が、京都を舞台に
のびやかに描いた青春キャンパス・ラブストーリー。

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『左京区恋月橋渡ル』からのつながりで読んでみたけど、
こちらははっきり、自分には合わなかった。

京大生同士の恋愛というところが面白そうだと思ったんだけど、

「京大生だけど、おしゃれでクラブなんかにも行ってるリア充な私、
 ダサい男の子たちとも仲良くなれちゃう☆」

という感じであった……。
バイト先の話やら卒業旅行のくだりなんかは、本当に必要だったんだろうか。
肝心の恋愛要素がなんだかぼやけていて、
相手役のたっくんの存在感があまりなく、
ヒロインの恋愛感情もあまり感じられなかった。
ライバルか? と思わせて登場した女性だとか、
「実はお前のことが好きだった」な男友達とか、
20年くらい前のドラマによくあったな~。


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大河ドラマ「おんな城主直虎」#5

2017-02-05 20:32:21 | 大河ドラマ「おんな城主直...
大河ドラマ「おんな城主直虎」#5

妄想オチのギャグパートはいらんつーの!
笑ったけど!!

子役が退場しても、相変わらずのゆったり(間延び)進行。
おとわから子供時代のウザさが根こそぎ消えたのはよかった。

そして亀の乙女ヒロイン要素は消失してしまったが、
わざとらしい笑顔以外は違和感なし。
顔の類似性を考えて配役がなされているのはいいね。

戻って来て好感度大のイケメンぶりを振りまき、
みんなにちやほやされる亀を、
距離をおいて眺める鶴が切ない。
家中で微妙な立場になっているし、
顔がなんだか幸薄そうで、判官びいき的な肩入れをしたくなる。

出番が少ないくせに、異様にキャラ立ちをしてる瀬名と
そして「次回へ続く」の少女漫画的展開は楽しみ。
コメント (2)
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24:セバスチャン・ジャプリゾ 『シンデレラの罠』

2017-02-04 15:37:41 | 17 本の感想
セバスチャン・ジャプリゾ『シンデレラの罠』(創元推理文庫)
★★★☆☆2.5

【Amazonの内容紹介】

語り手である私は20歳。
その私は、探偵であり、証人であり、被害者であり、しかも犯人である?! 
空前のトリックで伝説的傑作の新訳。

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『作家で十年いきのびる方法』に登場して
面白そうだと思って読んでみた。
序盤から「いったい何が起こったのか」という謎は提示されているものの、
もたもたもたもたしていて話が一向に進まない感じがして、
三回も寝落ちしてしまった。
後半、「自分は誰なのか?」という新たな謎が出てきてからは
楽しめた。

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23:恩田陸 『蜜蜂と遠雷』

2017-02-02 20:52:54 | 17 本の感想
恩田陸『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

俺はまだ、神に愛されているだろうか?

ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、
そして音楽を描き切った青春群像小説。

著者渾身、文句なしの最高傑作!

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。
「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」
ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵15歳。
かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇し
CDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、
長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。
音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンで
コンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。
完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される
名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる
競争という名の自らとの闘い。
第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

**************************************************

祝・直木賞受賞。

先輩に貸してもらった。
音楽の素養も音楽への興味も、まったくといっていいほどないけれども、
実際には聞くことのできない音楽を、
文字から形成されるイメージで伝えてくれているので
特に支障なく楽しめた。

たぶん、これまでの恩田作品の中でいちばんオタク要素(※)が少なく、
一般受けしそう。
(※漫画とかアニメっぽいということではない。
  オタク気質の人が喜びそうなマニアックな知識や要素が恩田作品には多い気がする)
そして、恩田作品と言えば、「壮大な肩透かし」なのだけども、
これは見事に盛り上げてきれいに終わっている。

個人的には明石がいちばん好き。
彼にもちゃんと救いがあってよかった。

2段組みでなおかつ厚いので、文庫落ちするときは分冊になるだろうな……。


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