アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』
★★★☆☆
【Amazonの内容紹介】
優しい夫、よき子供に恵まれ、
女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。
が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で
出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に
疑問を抱きはじめる……
女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いた
ロマンチック・サスペンス。
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長い間積んであったもの。
ようやく読んだ。
ネタバレするけど、すでに古典といっていいくらいの作品だから
いいよね。
身につまされてつらい……。
自分が周りの人々を愛し、彼らのためを思って尽くし、
愛され、必要とされていると信じていたのに、
自分の愛は欺瞞であり、皆を苦しめ不幸にし、
皆から嫌われていたのだと気づいてしまったヒロイン。
その事実に気づくヒントはたくさんあったのに、
全力で目を背けていたのが、旅の途中のトラブルで
いやおうなしに自分と向き合うことになって、
その事実に気づかざるを得なくなる。
ヒロインにとっては、その気づきは、
人生をがらりと変えるくらいの大きなものだったのに、
夫と顔を合わせたときに、結局、
それを気の迷いとしてなかったことにしてしまったのが、
またねえ……。
この選択が、理解できるだけに、やるせない。
「変えること」よりも「変えないこと」のほうが
遙かに楽だもの。