金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

38:重松清 『ひとりっ子同盟』

2020-02-21 19:32:58 | 20 本の感想
重松清 『一人っ子同盟』(新潮文庫)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

ノブとハム子は、同じ団地に住む小学六年生。
ともに“一人っ子”だが、実はノブには幼いころ
交通事故で亡くなった兄がいて、
ハム子にも母の再婚で四歳の弟ができた。
困った時は助け合う、と密かな同盟を結んだ二人は、
年下の転校生、オサムに出会う。
お調子者で嘘つきのオサムにもまた、複雑な事情があって―。
いまはもう会えない友だちと過ごしたあの頃と、
忘れられない奇跡の一瞬を描く物語。

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やるせない。

両親の善良さ、ハム子のわかりにくい優しさなど、
ほんの時折、宝物のような美しさを潜ませつつも、
決して調子よく物事が解決したりはせず、
修復できないままに関係が終わったりして
全体的にはビター。

子どもであるがゆえのままならなさ、もどかしさを
必要以上に誇張するわけでもなく
淡々と描いていて胸が痛む。

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37:大岡敏昭 『新訂 幕末下級武士の絵日記』

2020-02-21 19:14:25 | 20 本の感想
大岡敏昭 『新訂 幕末下級武士の絵日記』(水曜社)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

忍藩(現・埼玉県行田市)の下級武士・
尾崎石城(おざきせきじょう)が書き残した「石城日記」。

石城と家族、親戚、友人、寺の和尚、料亭の女将ら
様々な人々との交遊が描かれた絵日記は、
一般に考えられていた封建的で厳格な武士社会のイメージを覆し、
貧しくも心豊かな下級武士たちの日常生活がわかる
貴重な記録であった。
今回、新たに尾崎石城の生涯がほぼ判明したことに伴い、
旧版に大幅な加筆修正と判型の大型化、図版の充実を図り、
新訂版オールカラーで刊行。

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ネットで紹介されているのを見て知った本。

幕末の下級武士が残した絵日記を紹介したもの。
絵がついていることで、
「座布団は客に出すものではなかった」
「料理は膳に載せず、大皿を床に直置きして
 取り皿を使って食べていた」
「行灯が大きい。行灯に絵をつけていた」
等々、当時の生活ぶりがわかるようになっていて楽しい。

和宮の下向だったり天狗党の乱だったり、
幕末らしい出来事は起こっているし、
著者の石城も上申したことで
謹慎処分を何度も受けているんだけど、
絵柄がほんわかしているせいで、あまり悲壮感はない。
お金はないけど客が来たらもてなし、
お坊さんや中級武士たちとも仲良く
頻繁に行き来していて楽しげ。
妹の夫である義弟と仲良く過ごしていたり、
その子である姪っ子を非常に可愛がっていたりして、
人気のある人だったんだろう。

ちょっと高いけど(3000円する)、カラーだし
面白いのでおすすめ。

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映画:『前田建設ファンタジー営業部』

2020-02-21 18:53:59 | 映画の感想
2020年の映画③:『前田建設ファンタジー営業部』(英勉 監督)
★★★☆☆3.5

【シネマトゥデイのあらすじ】

2003年のある日、前田建設工業の広報グループ長が
アニメ「マジンガーZ」に登場する
地下格納庫兼プールの発注を受けたという設定で
建設を検証するウェブ連載を発案する。
若手社員の土井航(高杉真宙)は当初
このプロジェクトに乗り気ではなかったが、
社内外の技術者たちの熱意を目の当たりにし、
無意味だと思っていた業務に真摯(しんし)に臨もうとする。

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知人が絶賛していたので、見に行った。
いまあらすじを探しに行って初めて知ったのだけど、
これ、本当に前田建設工業が持ってるWebコンテンツが
もとになってたのね……。

序盤は、
「おじさん、何言ってるか聞き取れないよ……」
「若者ふたり、自分で抗議できないなら
 腹くくってちゃんとやれよ! 特に女の子の方!」
「メンバーが社内で避けられる表現が、
 コメディに徹し切れていなくて白ける」
等々不満が募り、気分も上がらなかったんだけど、
中盤、プロフェッショナルのプライドと知識、経験に
スポットライトが当たるようになってから面白くなってきた。
これまで縁のなかった建設業界のやっていることを
のぞき見できる楽しさもあった。

現実と空想が交差する終盤、夢オチだろうな……と
思わせて、の展開もよし。

ただ、キャッチ―じゃないんだよね……。
確かにおもしろかったんだけど、
おもしろさを説明しにくい。
広い映画館に、わたしともう一人しか客が入ってなかった。
主人公とダムおじさんの組み合わせは可愛かったけど、
この子を主役にした意義みたいなのも感じられなくてね……。
好きだからこそ、もう少し何とかならなかったのか、と
もったいなく思う。
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