人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2015/5 マーラーの交響曲第2番「復活」を指揮 Jose Cura / Mahler Symphony No.2 'Auferstehung'

2016-05-10 | 指揮者・作曲家として


2015年の5月9日、ちょうど1年前ですが、ホセ・クーラは、ポーランドのノヴィ・ソンチで、グスタフ・マーラーの交響曲第2番「復活」を指揮しました。
何度か投稿で紹介しましたが、クーラはもともと作曲家、指揮者志望で、大学でも作曲と指揮を専攻、さまざまなアクシデントと運命的な出会いにより、テノールとして国際的キャリアを築いてきました。そして近年また、指揮者として、また作曲家としての活動に、少しずつシフトしつつあります。
 → 詳しくは 「音楽への道」、または、「略歴」

今回は、ソプラノのアーダ・サーリの名を冠した国際声楽フェスティバルの開幕コンサートという位置づけでした。クーラはこの招待にたいし、「とても誇りに思う。特に文化と教育に影響を与える世界不況のもと、私に希望を与え、あきらめない努力のために、私たちの仕事がまだ価値あることを感じさせてくれる」と語っていました。



会場は、ポーランドのノヴィ・ソンチにある聖十字架教会。正面には巨大な十字架に磔になったキリストの像があり、ステンドグラスと彫刻に囲まれた美しい教会のようです。





オケはベートーヴェン・アカデミー・オーケストラ。ポーランドラジオ合唱団とグレツキ室内合唱団、ソリストが加わり、参加したアーティストは、最終的に186人になったとのことです。そして観客は、子どもを含めて1000人以上が参加したと報道されていました。
Orkiestra Akademii Beethovenowskiej
Chór Polskiego Radia , Górecki Chamber Choir
Małgorzata Walewska , Urška Arlič Gololičič
José Cura


クーラが2016/11/26に、ウィーン国立歌劇場デビュー20周年を記念してシェアするとしてアップした、当日の録画。1時間半以上の全曲の演奏の様子がビデオに収められています。 → クーラの動画ページ(ホセ・クーラTV)




クーラは直前のインタビューで、「今日のコンサートは素晴らしい音楽的経験になるだろう。とりわけ私にとって、特別な人間的体験だ。私のような理想主義者にとっての夢だ。ルーティンではなく、目に輝きをもつ人々とともに働く機会を得た」と意気込みを語っていました。

現地の報道によると、クーラは指揮者としてはかなり型破りのようで、観客と直接コンタクトをとっていたそうです。指揮台に立ってすぐに、満席で座る席のない観客には「長い曲だから床に座って」と声をかけ、子どもたちには前の席に来るように手招きしたとのこと。
そして、終了後、観客から大きな喝さいを受けると、スコアを高くかかげ、作曲家マーラー自身と第2番「復活」の楽曲そのものへの敬意を示しました。

終了後、ベートーヴェン・アカデミー・オーケストラはFBで、「感情の震えは巨大だった。観客は熱心に我々を歓迎してくれた」と報告しています。




現地のレビューでは、「‥豊かな質感のメロディーと楽器のダイナミクス。あるべき全てのものがあった。巨大なフォルテからピアニッシモ、轟くドラマから軽快さと喜び。最後の審判の劇的ラストは楽観性の中にあった」など、好意的な報道がされました。

終了後、コンサートの様子とインタビューを収めた動画。クーラの指揮するマーラーの一部が4分頃から。
Wywiad z Jose Curą ? argentyńskim dyrygentem i tenorem.




〈インタビューや記者会見での、マーラーについてのクーラ語録〉

●マーラーの第2番を指揮することは、バッハのミサ曲やベートーベンの交響曲第9番の指揮に匹敵する、知的、精神的な経験だ。その後、我々はそれまでと同じではいられない。

●そのような名曲を指揮するときには、非常に重要な態度がある。それは「シンプルかつ控え目」 にすることだ。かつて、私の友人で偉大なイタリアの指揮者、ダニエレ·ガッティが語っていたように。

●私はマーラーを愛する。なぜなら彼は暴君ではないから。すべての人が、10の違う方法で、彼の交響曲を理解することができる。指揮者のパーソナリティだけでなく、その瞬間、瞬間に。

●私はオペラ、演劇、ドラマの人間。そしてマーラーは最もドラマティックなアーティストの一人だ。この作品への私のアプローチはとても演劇的になる。リスナーの感情に働きかける意味で。



●音楽を創ることは、愛し合うこと(メイキング・ラブ)と同じ。だからマーラー交響曲第2番の私の解釈がどうなるかはわからない。まだ恋人であるオーケストラと会っていないのだから。

●私ははじめてマーラーの交響曲第2番「復活」を指揮した。その夜、それは文字通り、私の魂と心をハイジャックした。その状態は数日間続いた。

●今年一番嬉しかったことは初めてマーラーの交響曲第2番「復活」を指揮したことだ。私は、もう一度、すぐにこのような「地球外の経験」をくり返すことが待ちきれない。

●誰か他の作曲家の音楽を指揮する時には、大きな責任を持つ。作曲家自身が何を言いたかったのか、懸命に理解しようと試みなければならない。自分が作曲した音楽を指揮する場合には、この問題(解釈すること)は生じない。しかし別の問題がある。ここで小さな変更をしないようにすべきかどうか?――それは無限のプロセスだ。
そうするとマーラーのように働く必要がある。マーラーは彼の交響曲を指揮する時、多くの変更を行った。最終的に10バージョンになった。

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初めてのマーラーの第2番は、クーラ自身にとっても忘れられない体験となったようです。少年時代から合唱の指揮を始め、指揮者をめざして勉強してきたクーラ。指揮台に立つ時、本当に嬉しそうで、オケや出演者と共に音楽をともにつくりあげることを真に楽しんでいる様子が伝わってきます。テノールとしてクーラの声を聴く機会が減りつつあるのはとても残念ではありますが、指揮者としての活動がさらに広がり、来日や録音などで聴けるようになるよう願っています。

リハーサルなどの様子の動画。主催者のFBに掲載されています。 →リンク


公演前の記者会見の様子。全体で1時間以上の動画。クーラは英語で話し、ポーランド語に通訳
Konferencja prasowa w Krakowie przed Festiwalem im. Ady Sari 2015


                            






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