人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

2016年 ホセ・クーラ スペイン・リェイダでドヴォルザーク「新世界より」を指揮 / Jose Cura conducts Dvorak Symphony No.9 in Lleida

2016-12-31 | 指揮者・作曲家として



ホセ・クーラの2016年最後の公演は、スペインの東部カタルーニャ州のリェイダ(リエダ)でのコンサート。
地元のオーケストラ、フリア・カボネル・デ・レス・テレス・デ・リエダ交響楽団=Orquestra Simfònica Julià Carbonell de les Terres de Lleida (OJC)を指揮して、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」などを演奏しました。

実は指揮者としてクーラは、このドヴォルザークの第9番を頻繁に演奏していて、CDも出しています。 → クーラのHPのCD紹介ページ
このCDは、マタフ・ハンガリー交響楽団との演奏ですが、「新世界より」の他に、ドヴォルザークのチェコ語の歌曲、愛の歌をクーラが歌ったものもはいっている、ユニークなものです。





さて今回のコンサート。無事に成功し、良いレビューも出されました。

「クーラはリハーサルで驚異的な仕事をした。(オケの編成が通常の『新世界より』を演奏するより小さい)これらの条件で管理し、ミュージシャンたちは感動を覚えた。彼らは互いにすべてに耳を傾けあった。」「ピアソラの美しいタンゴとバーバーのアダージョ・・あなたは一目で恋に落ちる。何という素晴らしいコンサート!」(SEGRE.COM)

録音や録画などはありませんが、オーケストラや現地のプレスが画像をアップしてくれましたので、それを紹介したいと思います。
また、コンサートに向けたインタビューもありましたので、抜粋して紹介しました。

オケHPの告知とプログラムのページ



2016/12/17
フリア・カボネル・デ・レス・テレス・デ・リエダ交響楽団
指揮 ホセ・クーラ

≪プログラム≫
●サミュエル・バーバー(アメリカ) 「弦楽のためのアダージョ」
●アストル・ピアソラ(アルゼンチン) タンガーソ
●アントニン・ドヴォルザーク(チェコ) 交響曲第9番「新世界より」

Saturday 17 December 2016
Orquestra Simfònica Julià Carbonell de les Terres de Lleida (OJC)
Director: José Cura

PROGRAMME
Samuel Barber  Adagio for Strings
Astor Piazzolla   Tangazo
Antonin DvorakSymphony  no. 9, Op. 95 in E minor, "From the New World"

12月の真冬に、半そでオケとリハーサル中のクーラ。



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――2016年12月、リェイダでのインタビューより

Q、自分を定義するのは?

A、あなたが自分自身を定義するとき、それがすべてになる。アーティストの死がその定義だ。アーティストであることをやめる。
ミュージシャンは、公的に規制された活動ではない。私はあらゆる面で快適に感じる。
しかし、仕事でチームをリードするとき、チームが安心感をもてるように、十分に良く、権限を持っていることに本当に感謝している。

Q、あなたは世界の舞台、特権的な場所で39年以上の国際的経験を持つが、「テノール」の役柄は、最も重視され続けている?

A、それはテノールの役柄ではなく、歌手のことだ。
もっと技術的には、純粋に生理学的レベルにおいて恵まれていれば、声は個人の心理学に密接に関連しているもの。
ヴァイオリニストは、心理的に問題があれば効果的に演奏できないけれど、機器は引き続き機能している。しかし歌手は楽器を演奏することができないだけでなく、それはもはや機能しない。なぜなら、あなた自身が楽器であるから。不安は歌唱に影響を与える。





Q、歌手として、賞賛と拒絶反応を同時に呼び起こすのは?

A、それは私の名前についての個人的なものだとは思わない。
提案しなければ意見が分かれることはない。1つのことを創る目的のための相違であり、結果が判明するのを確認することだ。

間違いを避ける唯一の方法は何もしないこと。リスクは依然として存在する。
加えて言うならば、私たちのラテン社会は非常に困難だ。(サッカーの)メッシを賞賛したかと思うと、別のものを試してみて、それを終わらせようとする。
誰もがあなたを好きなら、新しいことをしていないということ。しかし、皆に不快感を与えるならば、それは間違っているということだ。





Q、演出をしながら、同時に歌うのは?

A、私は歌と演出を同時に行った。それは可能だが、しかしとても疲れる。最終的に、エネルギーとリスクのコストは評価されない。
それはコーチであるサッカー選手のようなもの。頼んだことができることを知っていて、彼らの反対側にいるという利点がある。あなたはできないとは言えない。
同様に、あなたが歌手として、そのフレージングを、ディレクターとしてうまく管理することができれば、大きな利益がある。

Q、あなたは1999年からマドリッドに住んでいる。スペインのオーケストラを指揮したことは?

A、スペインのオーケストラを私が指揮したのは初めて。
私は作曲家と指揮者としてキャリアをスタートした。しかし当時、軍政下のアルゼンチンではすべて非常に困難だった。作曲家や演出家として成功することは難しかった。
私はいつも歌っていたが、オペラ歌手になるつもりはまったくなかった。
音楽学校では、歌は補完的なものであり、ある日、教授が私に言った――「歌を学びなさい。歌手になるためではなく、最高の指揮者になりたいならば」と。





Q、ここのオーケストラ(OJC)についてどう考える?どのように協力を?

A、オーケストラは非凡で、ミュージシャンは非常に良いプロフェッショナルだ。
彼らは本当に音楽をつくりたいと思っている。
練習には長所と短所があるが、私たちは共通のプロジェクトを達成するため、楽しもうとする姿勢がある。
私たちは一緒に演奏し、共通のプロジェクトをもっている。コンサートのエネルギーは素晴らしいものになるだろう。私も楽しんだし、すべてのリハーサルを楽しみにしていた。

Q、オーケストラはちょうど創立15年を迎えた。支援と成長への助けをどう考える?

A、ますます人間性を無視している世界において、私たちの文化機関を支援することは不可欠だ。
純粋なクラシック音楽、バレエやスポーツは、きわめて稀な人間的な活動である。それは、共通言語としての音楽による通訳で、出演者と聴衆との間のコンピュータを介さないネットワークだ。
人々と社会が必要とするように、実行されなければならない。人々の守護者として政治家が責任を負うべきだ。
そして、私たちが今週、オーケストラと一緒につくっているような喜びやポジティブな姿勢が、成長を続ける力になる。





Q、この劇場ではオペラの訓練も行っている。こうした機会に参加したい?

A、私は大好きだ。私が貢献できるものはすべて歓迎する。
しかし、そうするためには強い有機的な構造が必要だ。
劇場は素晴らしい...そして、それは作動しなければならない。それはスペインで最初の劇場の一つになる可能性がある。

Q、最後に、土曜日のコンサートでは何が待っている?

A、素晴らしいプログラムだ。
ピアソラのタンガーソはリェイダでは初めてだと思うが、自信を持って素晴らしいものだと言える。
バーバーのアダージョは非常に感情的であり、ドヴォルザークの交響曲「新世界より」は、あらゆる人によって演奏され、おそらく最もよく知られている。
私たちは、人々が快適に感じ、楽しめて、オーケストラを観ることができるコンサートをめざしてきた。なぜならステージ上での練習は、街の延長だからだ。聴衆とオーケストラとの間につよい交友関係があることを私は確信している。

(「REVISTA MUSICAL CATALANA」)





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リェイダのマスコミにも出演しました。
コンサートの前日には、ラジオ番組に出演して、インタビューを受けたようです。




こちらはリハーサルの様子とインタビューを報道した現地の新聞。






今回のコンサートの録音はありませんが、2003年にクーラがプラハで指揮したドヴォルザーク「新世界より」の録画が、クーラの動画チャンネルにあります。
リンクを。 → クーラ指揮「新世界より」(Vimeo)




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2016年内のブログの更新はこの記事が最後です。たまたまですが、今年2月にスタートして、この記事がちょうど、100ページ目となりました。

クーラは2006年以来、10年間来日がなく、日本ではほとんど情報がありません。しかしアーティストとして多面的にますます充実しているクーラ。そのユニークな最近の活動を、できるだけ客観的に伝えたいという思いから、毎回インタビューもできるだけ紹介するようにしてきました。ただ、熱意と意気込みだけはあるのですが(笑)、語学力がついていかず、しかも英語だけでなく、ドイツ語をはじめ、スペイン語やイタリア語、また最近はハンガリー語やチェコ語などが多くて、誤訳だらけ、直訳、拙い仕上がりとなっているのは、恥ずかしく、申しわけなく思っています。

実はこのブログは、2017年/2018年シーズンが、新国立劇場創立20周年、ホセ・クーラが初来日で出演したアイーダから20年となることから、この節目に何らかの形でクーラが招聘されることを願って、少しでも現在のクーラの情報を発信したいという思いから始めたものでした。大変おこがましい話ですが・・。

残念ながら、今のところ、その可能性はほとんどないようにみえます。
また今年、ヨハン・ボータやダニエラ・デッシーの急逝、ホロストフスキーの闘病など、同年代のオペラ歌手の体調不良に関するニュースがかけめぐりました。これにショックを受けた私としては、クーラに、体にも精神的にも負担がかかる来日を望むのはやめて、彼自身が居心地良く、音楽が楽しめる場所で、これまで通り自らの芸術の道をつきすすんでもらいたい、と思うようになりました。もちろん望むのは自由ですし、私には何の力もないので、おかしな話ではありますが(笑)。

ということで、このブログの当初の目的は達成できないことになってしまいました。そのためブログを続ける意味もなくなったわけで、もう止めても良いのですが、せっかく始めたことでもあり、もうしばらく、多面的な活動でアーティストとして成熟期にあるクーラの活動を、紹介していきたいと思っています。
これまで読んでくださった皆様には、ほんとうにありがとうございました。
ぜひまた来年も、よろしくお願いいたします。

またこのブログに目をとめてくださった方で、クーラのことをお好きな方がいらっしゃったら、このブログへのコメント欄や、ツイッターのメッセージ、フェイスブックのメッセージなどに、コメントをお寄せいただければうれしいです。




*写真はリハーサルの様子






*画像は、OJCのHPやFBなどからお借りしました。

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