人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

ホセ・クーラのドン・カルロ ヴェルディ / Jose Cura / Don Carlo / Verdi

2016-09-16 | オペラの舞台―ヴェルディ



ヴェルディの傑作のひとつ、オペラ、ドン・カルロ。ホセ・クーラは、2001年にチューリッヒ歌劇場で、タイトルロールでデビューしました。

実はクーラは、アルゼンチンからイタリアに移住した翌年の1992年、ヴェローナのアレーナのドン・カルロで、カバー(代役)として採用されていましたが、結局、出番はなかったようです。また、1998年に日本で、このドン・カルロを歌う予定だったようですが、事前にキャンセルしています(理由は不明)。
ということで、2001年からチューリッヒで、同じプロダクションを何シーズンか歌い、ウィーン国立歌劇場で2006年に出演しましたが、それ以降は歌っておらず、クーラとしてはあまり出演回数は多くありません。

ドン・カルロは、主に、フランス語上演の5幕版(1867年)と、イタリア語上演の4幕版(1884年)がありますが、クーラが出演しているのはイタリア語4幕版です。
このオペラは、主要な役それぞれに、素晴らしいアリアがあり、デュエットがあり、そして複雑な心理、葛藤、苦悩を表現することが求められています。もちろん音楽は本当に素晴らしく、魅力たっぷりです。

クーラは、このスペインの王子ドン・カルロ役について、「カルロは、本当のヒーローだ。彼は夢想家、そして理想主義者であり、異端審問に異議を申し立てる」と語っています。そして、理想を抱き、そのために行動する熱い心をもち、同時に、許されない恋を断ち切れず、苦悩し、逡巡する、悩み深き、複雑な人物像、ナーバスで過敏な青年として描きだそうとしているようです。

このドン・カルロでも、オペラ舞台の正規のDVDやCDなどがありません。つくづく残念でなりません。美しく、切ない、繊細なドン・カルロの内面を描き出すのにぴったりな、若い時のホセ・クーラのドン・カルロの舞台を映像化して欲しかったと思います。

ということで、画質や音質が良くないものも多いのですが、アップされているいくつかの映像や録音、インタビューやレビューなどから、クーラのドン・カルロを紹介します。

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●ロンドンでの2001年コンサートより
DVDも出されている、ロンドンで開かれたコンサート"A Passion for Verdi"より、ドン・カルロの第1幕、カルロと、カルロが愛するエリザベッタ(父の妻)とのデュエットを。義母にあたるエリザベッタ役は、ダニエラ・デッシー。

Io vengo a domandar (Don Carlos) - Jose Cura, Daniela Dessi


ダニエラ・デッシーは、大変に残念なことに、今年2016年の8月、亡くなりました。クーラは、このコンサートの他にも、1996年のマスカーニのイリスをはじめ、トスカ、アンドレア・シェニエ、マノン・レスコー、オテロなどで共演も多く、フェイスブックに追悼のメッセージを掲載しました。







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〈クーラのインタビューより〉
●2006年――掘り下げが可能な役 ドン・カルロ、カニオ・・・
Q、役を演じる時、関連資料を読む?

イエス、もちろん、役割に応じて。
本当に、心理的に、内面を掘り下げることが可能な、いくつかの役柄がある。ドン・カルロ、カニオ、サムソンやオテロなどだ。
例えばトゥーランドットのカラフなどの役割は、魅力的な存在感をもって、上手に歌うならば、それですでに十分だ。多分、2、3のカラーを見出すことができるけれど、それは心理的な背景の面では、豊かなキャラクターではない。 

●2005年インタビューより――「海賊」にふくまれる、ドン・カルロのフレーズ
ヴェルディのオペラ「海賊」(Il Corsaro)についてどう評価する?

これは傑作ではないことは明らかだ。しかし非常に興味深い作品。そして、オペラが好きならば誰もがそれを一度聞くべきだ。
ヴェルディは、彼が後の作品で使用することの多くを、「海賊」の中でテストした。
そこには椿姫のバー・ラインがあり、ドン・カルロからフレーズ、そしてオテロからカラー。これは、テノールのための簡単な役ではない。緻密なオーケストレーションと限定的なインストゥルメンテーションの輝きによるシリアスな瞬間がある。

〈舞台のレビューより〉
●2001年チューリッヒ
クーラは、誕生から運命に愛されていない子ども、内省的で神経質なカルロを描きだした。彼は磨かれた輝かしい声で、最初の言葉から魂をむき出しにした。クーラは陰気な性格を強調したが、彼の歌唱の推進力に抵抗するのは難しい。

●2003年チューリッヒ
チューリッヒのプロダクションで、1つのオリジナルな点、それは、英雄的な行動を通じてエリザベートへの情熱を忘れようする、理想的な英雄としてスペインの王子を提示していないことだ。
むしろ弱い人として、過敏さと動揺、失われた愛の悲しみによって取り乱し、人生の方向を模索する、歴史的真実に近いドン・カルロ。
ホセ・クーラは、舞台上の存在と驚異的なコミットメントが素晴らしい。疑いによって苛まれ、エボリまたは彼の父親が彼に非難を浴びせるとき、しばしば地面にうずくまり、痙攣に苦しむカルロを演じる。
声において、華麗なフォームを示し、特に明確な、明るい高音が開始から終了まで火花を放つ。




〈チューリッヒの舞台の動画――YouTubeより〉
幸いにして、YouTubeに、チューリッヒでの舞台の動画がアップされています。残念ながら遠くからの映像で、画質、音質もあまりよくありません。でもクーラの歌唱、演技の雰囲気だけでもつかめるので、ありがたいです。悲しい運命に翻弄されるカルロ、許されない恋に苦悩するカルロの姿が、本当に切なく、美しい。

チューリッヒ歌劇場2001年、ドン・カルロ 第1幕第1場
互いに愛し合っていた恋人で、自分の父、王の妻になったエリザベッタへの思いが断ち切れないドン・カルロ。かつての日を思い歌う。
Jose Cura 2001 "Io l'ho perduta" Don Carlo (Verdi )


第1幕第1場 親友のロドリーゴが、思いを断ち切り、迫害に苦しむフランドルの人々のために立ち上がるように諭す。カルロも決意し、ロドリーゴとの永遠の友情を誓う、有名な二重唱。
Jose Cura 2001 Don Carlo & Rodrigo duet


第1幕2場 カルロは、自分をフランドルに派遣するように父、王を説得してほしいと、エリザベッタに頼む。しかしエリザベッタへの想いがこみ上げ、愛を求めるカルロ。しかし動揺しつつ、理性を保ったエリザベッタは、カルロを拒絶する。
Giuseppe Verdi, Don Carlo 2001 "Io vengo a domandar"


第2幕1場 カルロは受け取った手紙をエリザベッタからのものと思い込み、夜、庭園で彼女を待つ。現れた女性をエリザベッタと思い、愛を告白するが、実は、ヴェールの下にはエボリが。驚くカルロに、エボリは激怒し復讐を誓う。
Giuseppe Verdi, Don Carlo & Eboli duet


第3幕 異端尋問に抗議し、捉えられたカルロ。その牢獄にロドリーゴが訪ねて来る。美しいロドリーゴのアリアと二重唱。
Giuseppe Verdi, Don Carlo 2001 Don Carlo & Rodrigo Act3 duet


第4幕 
生きている世界での愛を諦め、二人は永遠の別れを告げる。ラストシーンへ。
Giuseppe Verdi, Don Carlo 2001 Don Carlo & Elisabetta Act 4 duet



●音声のみ コンサートの録音

1999年パリでのコンサートより。
Jose Cura 1999 "Io l'ho perduta" Don Carlo (Verdi )


2001年 ベルリンでのコンサートより
Jose Cura 2001 "Lo vengo a domandar" Don Carlo


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ドラマと心理的リアリズムを大切にするクーラは、たぶん、もうドン・カルロを歌うことはないと思います。すでにカヴァレリアのトゥリッドウも歌わないことを宣言しています。でも今後、演出や指揮で、とりあげることがあるかもしれません。ぜひその際には、ネット中継や映像のホセ・クーラTVへのアップなどを期待しています。

(おまけ)
クーラがマスタークラスを実施した、フランス、ナンシー国立歌劇場の受講生とのコンサートで、指揮をしながら一緒にドン・カルロの二重唱を歌う。
José Cura & Ricardo Velasquez - E lui! desso l´infante - Don Carlo





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