人と、オペラと、芸術と ~ ホセ・クーラ情報を中心に by Ree2014

テノール・指揮者・作曲家・演出家として活動を広げるホセ・クーラの情報を収集中

(ライブ中継無事終了) ホセ・クーラ テアトロ・コロンのアンドレア・シェニエに出演 / Jose Cura's Andrea Chénier of Teatro Colón

2017-12-31 | テアトロコロンのアンドレア・シェニエ2017





報告が遅くなりましたが、ホセ・クーラ、2017年最後の出演、故郷アルゼンチンのテアトロコロンでのアンドレア・シェニエが無事、終了しました。
そして最終日の12月16日(日本時間では17日の朝8時開演)の舞台は全世界にむけてインターネットでライブ中継されました。

当初、回線の状況を心配していましたが、私の自宅PCでは、数回程度、動画が短時間ストップしたり、画質が粗くなったところがあったものの、全体としてはかなりスムーズに、画質も音質も良好で、視聴を楽しむことができました。各演目ごとにライブ中継を実施してくれるテアトロコロンには、地球の反対側から感謝を伝えたいと思います!

中継の様子や簡単な感想をすぐに掲載しようと思っていたのですが、つい繰り返し録画、録音を聞いてライブ中継の余韻に浸っていたために、すっかり遅くなってしまいました。それくらい今回のシェニエの中継は、私にとってはクリスマスプレゼントとお年玉を一度にもらったような(笑)、宝物になりました。本当に素晴らしい公演だったと思います。何といってもクーラの声の魅力と迫力、演技と存在感、そして堅実で実力ある共演者に恵まれて、激動の社会で信念を貫いたシェニエの人間像が浮き彫りになり、革命と愛、死をめぐるドラマに圧倒されました。






DIRECTOR MUSICAL INVITADO = Christian Badea , DIRECTOR MUSICAL = Mario Perusso *
DIRECTOR DE ESCENA = Matías Cambiasso , DISEÑO DE ESCENOGRAFÍA = Emilio Basaldúa , SUPERVISOR DE VESTUARIO = Eduardo Caldirola
DISEÑO DE ILUMINACIÓN = Rubén Conde , DISEÑO DE COREOGRAFÍA = Carlos Trunsky
DIRECTOR DEL CORO ESTABLE DEL TEATRO COLÓN = Miguel Martínez , ASISTENTE DE DIRECCIÓN ESCÉNICA = Ángela Boveri
ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Oscar Vázquez , SEGUNDO ASISTENTE DE ESCENOGRAFÍA = Carolina Basaladúa , ASISTENTE DE ILUMINACIÓN = Ariel Conde

PRINCIPALES INTÉRPRETES
ANDREA CHÉNIER = José Cura
CARLO GERARD = Fabián Veloz
MADDALENA = María Pía Piscitelli
BERSI = Gaudalupe Barrientos
MATHIEU = Hernán Iturralde
ROUCHER = Emiliano Bulacios
INCREDIBILE = Sergio Spina
CONDESA COIGNY = Cecilia Aguirre Paz
MADELON = Alejandra Malvino , FLEVILLE = Noberto Marcos , ABATE = Iván Maier


●クーラのシェニエ――ライブ映像から

今回の演出は、急きょ演出家の交代があったりしたために、基本的にオペラの台本に忠実で、セットはシンプル、衣装も歴史的なものでした。
演出やセットに刺激や意外性がないだけに、出演者のパフォーマンスの出来に公演の成否がかかるわけですが、クーラはじめ、主な共演者、コーラスとも演技も歌も大熱演で、集中して鑑賞できました。
いくつか画像と、またYoutubeにシェニエとマッダレーナの二重唱がアップされていたので紹介したいと思います。


≪第1幕≫

第1幕、シェニエのアリア「ある日青空を眺めて」、クーラは伸びやかに、余裕をもって歌いました。アルゼンチンの国旗の色でもあるスカイブルーの衣装も美しく、白髪交じりのクーラの髪が衣装の色に合って、凛々しい詩人ぶりでした。後半は非常に激しく、クーラがオペラにおける「プロテスト・ソング」と指摘するとおり、貴族社会の欺瞞と偽善を暴く情熱的な歌唱だったと思います。







≪第2幕≫

第2幕は、友人ルーシェとのやりとり、そして再会したマッダレーナと愛を確認しあう美しい二重唱と、見どころの多い幕です。クーラがきめ細かな演技をしながら、とても柔らかく、美しく歌ったのが印象的でした。








シェニエとマッダレーナとの二重唱。困難な境遇に追い詰められた2人が再会し、つよい絆と愛情を結ぶシーン。とても美しく、また愛を歌いながら、死への恐怖を克服し、ともに運命に立ち向かう決意を語り合う、とても激しくつよい意志の込められた歌唱です。

Andrea Chenier Act II duet: Ecco l altare



≪第3幕≫

裁判で反革命の汚名をきせられ、自分はペンを武器に偽善者とたたかってきた、裏切り者ではない、運命は死へと向かうのだろうか、しかし名誉は残してくれ、と誇り高く激しく訴えるシーン。こういう場面のクーラの存在感、ドラマティックな歌唱と演技はやはり抜群だと思います。










≪第4幕≫

第4幕は圧巻でした。クーラの「五月の晴れた日のように」は非常に柔らかく優しく歌い出し、死を覚悟したシェニエの絶望と諦観、生と愛へ渇望を表現しました。
そしてラスト、マッダレーナとの二重唱は、本当に感動的でした。マッダレーナ役のイタリアのソプラノ、マリア・ピア・ピスチテッリさんがまた、ベテランで演技、歌唱とも非常に素晴らしく、クーラのシェニエと相性も非常に良かったと思います。彼女の切々とした歌唱は胸を打ちました。
最後の二重唱は、死を前にして愛を賛美する内容で、あまり盛り上げすぎると、盲目的な愛の賛歌のような印象になってしまい、現代的な視点からはちょっとどうかなと思うシーンでもあります。しかし2人の演技と歌唱は、非常に控え目で、抑えがちでありながら、悲劇的な運命に立ち向かい、愛の力で、2人で最後まで、生をいとおしみ、意志をつらぬいてゆくという決然とした姿がつよく印象に残りました。崇高で凛々しいシェニエとマッダレーナ、魅力的でした。











最後の二重唱の動画です。

Andrea Chenier final duet: Vicino a te





●もしかすると再放送が?

クーラが終演直後に、ドレッシングルームからあげた写真です。これはFBのものですが、インスタの投稿には、ビデオストリーミングがあるというクーラのコメントがついていました。もしかすると、再放送があるのかもしれません。

“テアトロコロンの私のドレッシングルームから。シェニエは終わった。任務完了!
 そこにいなかった人のために、ビデオ・ストリーミングがある。後ほどお知らせがあるだろう。
 明日、自宅に帰って、子どもたちとペットに!  Peace & Love!”





今回のシェニエ、クーラは公演初日に55歳の誕生日を迎えました。テノールとしてはキャリアは終盤に差し掛かっているといえるでしょうが、声はまだまだ艶やかで響きが美しく、若い頃よりもさらに表現力が増しているように思います。そして演技、存在感、役柄の解釈と合わさって、総体として素晴らしいシェニエだったと思います。

今年もまもなく終わります。世界でも日本でも、大変に厳しい年であり、また困難ななかに、希望の光も見えた年でもありました。
クーラのシェニエの解釈は非常に現代的です。このオペラをつうじて、世界の変革を求める人々と、それを押しとどめようとする体制、偽善者の姿、そして変革が歴史のうねりのなかで逆流となった激動の時代、その時の人間像を描こうとしています。その時々にどう生きるのか――いかなる圧政に対しても、自由を求め、信念を貫き、人を愛し、恐れずに運命に立ち向かう人間像を、クーラは、シェニエそのものが生き、革命と人生、愛と死を歌っているかのように演じてくれました。
年の終わりにこのようなクーラのシェニエを見ることができて、喜びと感謝の思いでいっぱいです。


テアトロコロンは、SNS上でも繰り返しライブ放送の告知を発信していました。以下は劇場の告知用画像です。
コロンは2500席プラス立見席という巨大劇場ですが、ライブ放送で映った様子だとほぼ満席。観客の反応も非常に良く、クーラをはじめ、すべての出演者が大喝采を受けていました。
DVDなどで正規の動画がリリースされることをつよく願っています。









コメント
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