PHYTOCHROME INTERACTING FACTORS PIF4 and PIF5 promote heat stress induced leaf senescence in Arabidopsis
Li et al. Journal of Experimental Botany (2021) 72:4577-4589.
doi:10.1093/jxb/erab158
高温ストレスは葉の老化を誘導するが、その分子機構は明らかとなっていない。中国科学院 植物学研究所のWang らは、暗所や加齢による葉の老化に関与しているPHYTOCHROME INTERACTING FACTOR 4(PIF4)/PIF5と高温ストレスによる葉の老化との関係を調査した。その結果、シロイヌナズナpif4 pif5 二重変異体は高温ストレス処理(42℃、5時間)によって誘導される葉の老化が野生型植物よりも遅延することが判った。この表現型は他のpif 多重変異体においても観察され、PIF4とPIF5が特に重要であった。また、PIF3 、PIF4 、PIF5 のいずれかを過剰発現させた系統は高温ストレスが誘導する葉の老化が促進された。RNA-seq解析の結果、高温ストレス処理をした葉では2165遺伝子の発現量に差が見られ、これらの遺伝子の遺伝子オントロジー(GO)を見ると老化制御遺伝子(SRGs)を含め様々な生物過程のものが見られた。しかし、pif4 pif5 二重変異体で発現量が変化したのは291遺伝子のみであった。よって、PIF4/PIF5は複数の経路との相互作用を介して高温ストレスが誘導する葉の老化を制御していると考えられる。野生型植物を高温ストレス処理するとSAG113 、NAC019 、NYE2 、SAG29 、NAC055 、WRKY6 の発現量が増加し、IAA29 、CBF2 、BRI1 、ARR5 の発現量が減少した。しかしながら、pif4 pif5 二重変異体ではそのような変化は見られなかった。ChIP-seq解析の結果、NAC019 、SAG113 、IAA29 、CBF2 、BRI1 遺伝子は高温ストレスが誘導する葉の老化におけるPIF4/PIF5の直接のターゲットであることが判明した。PIF4 /PIF5 の転写産物量は高温処理後からその数日の回復過程で減少していった。しかし、PIF4/PIF5のタンパク質量は、高温処理初日は減少したが、その後は増加していった。よって、PIF4/PIF5は高温処理によって転写と転写後の2種類の制御を受けていると考えられる。植物の高温耐性は概日時計によって調節されている。そこで、12時間日長で育成している芽生えに異なる時刻に高温ストレスを与えて葉の老化誘導を観察したところ、夜間に高温ストレスを与えた場合は葉の老化が加速し、日中に与えた場合は遅延することが判った。また、12時間日長で育成した芽生えを連続光下で育成し、異なる時刻に高温ストレスを与えて葉の老化を観察したところ、日中に相当する時刻に高温ストレスを与えた際に葉の老化が加速し、夜間に相当する時刻に与えた場合は老化誘導が遅延した。NAC019 、SAG113 、IAA29 の発現量の変化も日中に高温ストレスを与えた場合に大きくなっており、植物は日中に高温ストレスが誘導する葉の老化に対して活発な応答をするものと思われる。以上の結果から、PIF4/PIF5は高温ストレスによる葉の老化を誘導する因子として機能していると考えられる。
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