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論文)アブラナ蜜腺の細胞壁インベルターゼによる花蜜量と糖分組成の制御

2021-10-01 16:39:40 | 読んだ論文備忘録

A cell wall invertase controls nectar volume and sugar composition
Minami et al.  Plant Journal (2021) 107:1016-1028.

doi: 10.1111/tpj.15357

花蜜の量と糖分組成は、植物とポリネーターの相互作用の強さを決定する重要な要素である。アブラナ科植物は、二糖類のショ糖が非常に少なく、グルコースとフルクトースが多く含まれるヘキソース主体の花蜜を作る。ショ糖のヘキソースへの分解はインベルターゼによって触媒されており、シロイヌナズナの花では細胞壁インベルターゼ4(AtCWINV4)がショ糖分解に関与していることが知られている。米国 ミネソタ大学Carter らは、アブラナの蜜腺(側蜜腺、中央蜜腺)で発現している細胞壁インベルターゼを調査し、BrCWINV4A (BraA04g025740.3C ) が高い発現を示すことを見出した。野生型植物とbrcwinv4a-1 機能喪失変異体で蜜腺の構造に差異は見られないが、brcwinv4a-1 変異体は蜜腺からの花蜜の分泌量が野生型の10%程度になっていた。また、brcwinv4a-1 変異体の側蜜腺が分泌する花蜜は、野生型と比較してショ糖含量が高いが全糖類の量は少なかった。側蜜腺のインベルターゼ活性が花蜜量を制御しているかを調査るために、インベルターゼ阻害剤ヘプタモリブデン酸アンモニウム処理を行なったところ、阻害剤処理濃度に応じて花蜜量が減少することが判った。野生型植物とbrcwinv4a-1 変異体のポリネーター訪花数と種子収量を野外で比較調査したところ、野生型の花はbrcwinv4a-1 変異体の花の約2倍の昆虫が訪花し、特にミツバチとジョウカイボンの訪花が多かった。しかし、ツヤハナバチ、ハエ、その他のハチや甲虫の訪花数は野生型とbrcwinv4a-1 変異体で同程度であった。また、野生型植物はbrcwinv4a-1 変異体よりも1株あたりの種子数が約30%多かったが、1株あたりの総種子重量に有意差はなかった。brcwinv4a-1 変異体の種子は野生型種子よりもサイズが大きく千粒重が重かった。以上の結果から、アブラナでは蜜腺の細胞壁インベルターゼBrCWINV4が花蜜の量と糖分組成を制御していると考えられる。

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