Perturbations in plant energy homeostasis prime lateral root initiation via SnRK1-bZIP63-ARF19 signaling
Muralidhara et al. PNAS (2021) 118:e2106961118.
doi:10.1073/pnas.2106961118
植物は環境の変化に応じてエネルギー代謝を調整し、その結果、構造に大きな可塑性を持たせている。ドイツ ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルクのDröge-Laser らは、シロイヌナズナ芽生えを一定期間低光量で育成し、光合成によるエネルギー供給を低下させた際の根の構造変化を観察した。その結果、明期の光量を3日間光補償点まで下げて育成した芽生えは、対照と比較して側根密度が増加し、4日間以上低光量処理をした芽生えは側根密度が低下することが判った。また、明期開始2時間後に0.5時間の暗黒処理をすることでも側根密度は増加した。これらの結果から、シロイヌナズナ芽生えは光合成活性の変動に迅速かつ一時的に反応して根の成長を変化させていることが示唆される。短時間暗黒処理をした芽生えの根では、可溶性糖類や糖シグナル分子として機能するトレハロース-6-リン酸(T6P)の含量が減少し、エネルギーストレスマーカー遺伝子のDARK-INDUCED6/ASPARAGINE SYNTHETASE1 (DIN6/ASN1 )の発現量が増加していた。DIN6/ASN1 はエネルギー代謝を制御しているSnf1関連キナーゼ1(SnRK1)の下流応答遺伝子として知られており、T6PはSnRK1を阻害することが確認されている。そこで、エネルギー飢餓に応答した側根形成におけるSnRK1の役割を変異体を用いて解析したところ、snrk1α1 変異体では短時間暗黒処理に応答した側根密度の増加が低下することが判った。SnRK1は根の様々な細胞、特に活発に分裂している細胞や発達中の側根の核で検出され、核においてSnRK1がリン酸化活性を示すことが確認された。SnRK1のターゲットとして知られている転写因子のbZIP63が機能喪失したbzip63 変異体は、snrk1α1 変異体と同じように、短時間暗黒処理による側根密度の増加が見られなかった。また、bZIP63に3ヶ所存在するSnRK1リン酸化Ser残基をAlaに置換した変異タンパク質をbzip63 変異体で発現させても側根密度の増加は見られなかった。bzip63 変異体の根系は通常の生育条件では野生型よりも幾分拡張していたが、短時間暗黒処理をした場合には対照よりも縮小した。これらの結果から、bZIP63はSnRK1によるリン酸化によって活性化されることで側根密度を制御していると考えられる。bZIP63 は根端分裂組織や側根発達部位において発現していた。クロマチン免疫沈降(ChIP)解析の結果、bZIP63は側根形成に関与している転写因子をコードするAUXIN RESPONSE FACTOR19 (ARF19 )遺伝子のプロモーター領域のG-box1エレメントに結合することが確認された。ARF19 の発現は短時間暗黒処理によって2倍に増加したが、bzip63 変異体では発現量変化は見られなかった。また、arf19 変異体では短時間暗黒処理による側根密度の増加が見られなかった。これらの結果から、ARF19はSnRK1-bZIP63シグナル伝達におけるターゲットであり、エネルギー欠乏時の側根形成を担っていることが示唆される。
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