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論文)フィトクロム相互作用因子(PIF)のリン酸化と分解

2011-04-27 20:34:14 | 読んだ論文備忘録

Phosphorylation by CK2 Enhances the Rapid Light-induced Degradation of Phytochrome Interacting Factor 1 in Arabidopsis
Bu et al.  JBC (2011) 286:12066-12074.
DOI:10.1074/jbc.M110.186882

フィトクロムは赤色光に曝されて活性のあるPfr型に変化すると、核へ移行して様々な因子と相互作用をして遺伝子発現を制御し、光形態形成を引き起こす。bHLH型転写因子のフィトクロム相互作用因子(PIF)は光形態形成における転写抑制因子として機能しており、Pfr型フィトクロムと相互作用をすることでリン酸化され、ユビキチン化と26Sプロテアソームによる分解を受ける。しかしながら、PIFをリン酸化するキナーゼとリン酸化されたPIFを認識してユビキチン化するE3リガーゼは明らかとなっていない。シロイヌナズナにおいて光シグナルや概日リズムの制御に関与しているキナーゼとして、セリン/スレオニンキナーゼのCK2(カゼインキナーゼⅡ)が知られており、CK2は光シグナルの正の制御因子であるHY5やHFR1をリン酸化して安定化させることが知られている。CK2ホロ酵素は2つの触媒αサブユニットと2つの調節βサブユニットから構成されており、シロイヌナズナゲノムにはαサブユニットをコードする遺伝子が4つ、βサブユニットをコードする遺伝子が4つ存在している。米国 テキサス大学オースチン校Huq らは、CK2が光シグナルの負の制御因子であるPIFのリン酸化にも関与しているかを調査した。in vitro キナーゼアッセイを行ったところ、PIF1はCK2α1サブユニットにより弱くリン酸化され、ここにβ1サブユニットを添加することでPIF1のリン酸化が強く刺激された。また、CK2活性の特異的阻害剤であるヘパリンを添加するとPIF1のリン酸化は阻害された。よって、PIF1はCK2の基質となっていることが示唆される。全てのαβホロ酵素の組み合わせがαサブユニット単独よりも強いリン酸化活性を示したが、組み合わせによって活性の強さが異なり、特にα1β2、α2β3、α2β4の組み合わせがPIF1のリン酸化に対して強い活性を示した。CK2サブユニットをコードする遺伝子は組織によって発現量が異なっていた。マススペクトル等によりPIF1ポリペプチドのリン酸化されるセリン/スレオニン残基を7箇所同定し、これらの残基をアラニンに置換した変異PIF1はCK2によるリン酸化が全く起こらないことを確認した。リン酸化残基を1箇所のみ置換した変異PIF1を発現させた形質転換シロイヌナズナでは赤色光照射により変異PIF1がリン酸化され分解されたが、6箇所置換した変異PIF1(PIF1-6M)は正常なPIF1よりも分解が遅くなり、赤色光照射した形質転換体芽生えの胚軸は野生型よりも長くなっていた。したがって、PIF1-6Mは野生型PIF1と同様にフィトクロムシグナルの負の制御因子として機能し、光照射下での安定性が増したことで胚軸の伸長を促進したと考えられる。また、リン酸化されるアミノ酸残基のうち、C末端側に位置する3つのセリン残基(Ser-464-466)が光照射によるPIF1の分解にとって重要であることがわかった。CK2βサブユニットを過剰発現させた形質転換シロイヌナズナは光照射によるPIF1の分解が強まっていた。以上の結果から、PIF1はCK2の基質となっており、光照射によりCK2によってリン酸化されたPIF1は分解され、光形態形成が誘導されると考えられる。リン酸化されたPIF1が分解されやすくなる機構は明らかではないが、フィトクロムとの親和性の変化が関与しているかもしれない。

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