Isochorismate-derived biosynthesis of the plant stress hormone salicylic acid
Rekhter et al. Science (2019) 365:498-502.
DOI: 10.1126/science.aaw1720
植物のサリチル酸(SA)生合成は、プラスチドで生産されるコリスミ酸が分岐点となる代謝産物とされている。シロイヌナズナの変異体の解析から、葉緑体包膜に局在するMATEファミリートランスポーターのENHANCED DISEASE SUSCEPTIBILITY5(EDS5)およびプラスチドに局在するイソコリスミ酸シンターゼ1(ICS1)がSA生合成に関与していることが知られており、これらが欠失した変異体は病原体が感染してもSAが蓄積しない。SAを生産する細菌はイソコリスミ酸ピルビン酸リアーゼ(IPL)がイソコリスミ酸をSAに転換しているが、植物ではIPL ホモログは見出されていない。ドイツ ゲッティンゲン大学のFeussner らは、avrPphB SUSCEPTIBLE3 (PBS3 )遺伝子の変異体も病原体感染によるSA蓄積が見られないことを見出した。PBS3 はGH3アシル活性化酵素遺伝子ファミリーに属している。PBS3 はICS1 やEDS5 と共発現していることから、これらの3遺伝子はSAもしくはその前駆体の修飾、輸送、生合成に関与していることが示唆される。SAを恒常的に高蓄積するsnc2-1D npr1-1 二重変異体にpbs3 変異を導入するとSA量は野生型と同等になり、イソコリスミ酸が蓄積した。snc2-1D npr1-1 二重変異体にeds5 変異を導入してもイソコリスミ酸の蓄積は見られないことから、イソコリスミ酸はPBS3の基質であることが推測される。精製標品を用いた解析から、PBS3はイソコリスミ酸とグルタミン酸を結合する反応を触媒することがわかった。さらに、生成されたイソコリスミ酸-9-グルタミン酸は非酵素的にSAと2-ヒドロキシ-アクリロイル-N-グルタミン酸に分解することがわかった。PBS3は細胞質に局在することが確認された。以上の結果から、以下の経路が示唆される。EDS5がイソコリスミ酸をプラスチドから細胞質へ排出し、PBS3がイソコリスミ酸-9-グルタミン酸を生成する。そして非酵素的な分解によってSAが生成される。
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