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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)光合成によって生産された糖による概日時計の調節

2013-12-13 23:40:39 | 読んだ論文備忘録

Photosynthetic entrainment of the Arabidopsis thaliana circadian clock
Haydon et al.  Nature (2013) 502:689-692.
doi:10.1038/nature12603

植物の炭素同化やデンプン代謝は概日リズムによる制御を受けており、クロロフィル生合成や光合成装置に関与している転写産物の量は明け方4時間後付近で最大となる。シロイヌナズナの芽生えを糖を含む培地で育成すると、連続光下で育成した芽生えは概日周期が短くなり、暗黒下で育成した芽生えでは概日リズムが持続される。英国 ケンブリッジ大学Webb らは、光合成によって生産された内生の糖類自身が概日リズムに影響しているかを調査した。時計遺伝子のPSEUDORESPONSE REGULATOR 7PRR7 )およびCIRCADIAN CLOCK ASSOCIATED 1CCA1 )のプロモーター制御下でルシフェラーゼ(LUC)を発現するコンストラクトを概日周期のレポーターとして導入したシロイヌナズナ芽生えを二酸化炭素を含まない空気中、もしくは光化学系IIの阻害剤である3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素(DCMU)を添加して低光量の連続光下で育成すると、時計遺伝子の発現周期が二酸化炭素除去で2.9時間、DCMU処理で2.5時間対照よりも長くなった。また、両処理によって、PRR7:LUC の活性は増加し、CCA1:LUC の活性は減少した。これらの処理による時計遺伝子の発現周期の延長は、芽生えにショ糖を与えることによって抑制された。ノルフルラゾンやリンコマイシンといった葉緑体から核へのシグナル伝達の低下を引き起こす薬剤処理を行なった芽生えでは、ショ糖の添加に関係なくPRR7:LUC の発現周期の延長やCCA1:LUC の活性低下は起こらなかった。さらに、光合成は活性酸素種の生産を介して時計機能に影響を及ぼしているのではないことか確認された。CCA1:LUCPRR7:LUC およびTIMING OF CAB EXPRESSION 1TOC1 )プロモーター制御下でLUC を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナを用いて、糖添加による概日周期の変化を見たところ、低光量の連続光下ではショ糖、グルコース、フラクトースの添加はマンニトールを添加した場合よりも概日周期が平均して4.2時間短くなった。概日周期レポーターの活性変動は連続暗黒下では殆ど見られないが、これらの糖の添加は概日周期変動をもたらし、マンニトールや非代謝グルコースアナログの3-O-メチルグルコースの添加ではそのような効果は見られなかった。これらの結果から、代謝される糖類は概日リズムのタイプ1の同調因子として機能することが示唆される。糖の添加によって、概日周期明期初期のCCA1:LUC 活性は促進されたが、暗期の活性に対しては効果は見られなかった。暗黒下に適応したした芽生えにタイプ0の同調因子である光の照射もしくは糖を添加をした際のCHLOROPHYLL A/B BINDING PROTEIN 2CAB2 )プロモーター:LUC 活性の最初の概日リズムのピークの出現時期を見ると、光照射ではピークが26.9時間後に現れるが、糖添加の場合は22.8時間後に現れ、糖添加は光処理よりもピークの出現が4.1時間早かった。それぞれの処理によるピーク出現時刻は、光強度や糖添加量を変えても変化は見られなかった。光照射下した芽生えにDCMUを添加しての光合成による糖の生産を阻害すると、ピークの出現は2.5-3.5時間遅れた。これらの結果から、光と糖の2つの同調因子は別々に機能していると考えられる。両者の周期の差異は明け方から内生のショ糖やグルコース含量が最大となるまでのすれと一致しており、光合成によって生産された糖類は中心振動体に信号を入力して概日時計の調節に関与していることが推測される。概日時計遺伝子のうち、PPR7 はDCMU処理をすることによって転写産物量が増加し、ppr7 変異体は概日周期に対する糖の効能が低下していた。よって、光合成によって生産された内生の糖類はPPR7を介して概日リズムの同調に関与していると考えられる。

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