goo blog サービス終了のお知らせ 

Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)サイトカイニントランスポーター

2014-03-07 20:44:52 | 読んだ論文備忘録

Arabidopsis ABCG14 protein controls the acropetal translocation of root-synthesized cytokinins
Zhang et al.  Nature Communications (2014) 5:3274
doi:10.1038/ncomms4274

ATP結合カセット(ABC)トランスポーターは、ATPのエネルギーによって物質を輸送する膜輸送体で、全ての生物に存在している。シロイヌナズナゲノムにはABCトランスポーターをコードする遺伝子が120以上含まれており、配列の特徴から幾つかのサブファミリーに分類されている。米国 ブルックヘブン国立研究所Liu らは、ABCトランスポーターサブファミリーG(ABCG)のうちの機能未知なトランスポーターの遺伝子発現解析結果から、根の維管束において強い発現の見られるAtABCG14 に着目して解析を行なった。AtABCG14 遺伝子にT-DNAが挿入された機能喪失変異体の芽生えは、一次根の伸長が著しく抑制される表現型を示した。atabcg14 変異体の根分裂組織の細胞分裂活性をCYCB1;1::uidA を導入して調査したところ、野生型よりも大きく低下していることがわかった。したがって、AtABCG14 の機能喪失は根分裂組織の活性に影響していると考えられる。atabcg14 変異体の根の伸長に対する各種ホルモンおよびホルモン前駆体の効果を見たところ、オーキシンやACCの添加による伸長阻害に対しては野生型との差は見られなかったが、サイトカイニン添加による伸長阻害に対しては感受性が低下していた。また、atabcg14 変異体の花序茎は野生型よりも細く、維管束の数が少なくなっていた。さらに、維管束の師部と木部の細胞数が減少し、リグニンの合成や沈着の遅れ、維管束間繊維や木部維管束での木化した細胞の減少が観察された。このような二次成長の遅延は、サイトカイニン合成に関与するATP/ADPイソペンテニルトランスフェラーゼ(IPT)が機能喪失したatipt1;3;5;7 四重変異体においてサイトカイニン量が減少して形成層の活性が低下した際に類似の現象が見られる。よって、atabcg14 変異体ではシュートのサイトカイニン量が減少していることが推測される。他にもatabcg14 変異体芽生えは葉柄が短く、葉面積が小さく、クロロフィル含量が少ないといった表現型を示し、atabcg14 変異体では地上部組織のサイトカイニン量が減少していることが想像される。これらの形態学的および生理学的データから、AtABCG14 の機能喪失は根とシュートにおいてサイトカイニンの分布もしくは蓄積を妨げていると思われる。AtABCG14 がサイトカイニン分布に影響しているかを確認するために、タイプ-A サイトカイニンレスポンスレギュレーターをコードするARR5 のプロモーター制御下でGUS を発現するコンストラクトをatabcg14 変異体に導入してGUS活性を見たところ、野生型と比較して子葉のGUS活性は大きく減少していたが、一次根のGUS活性は組織全体で強くなっていた。成熟個体においても、atabcg14 変異体の花序のGUS活性は野生型よりも低くなっていた。よって、atabcg14 変異体ではシュートのサイトカイニン量が低く、根のサイトカイニン量が高くなっており、根とシュートの間でのサイトカイニンの分配に異常があることが示唆される。atabcg14 変異体の内生サイトカイニン量を測定したところ、根で合成されて木部を介してシュートへ輸送されるtrans-ゼアチン(tZ)-タイプやジヒドロゼアチン(DHZ)-タイプのサイトカイニンはシュートでの含量が低下し根での含量が増加していた。一方、シュートで合成され師部を介して輸送されるイソペンテニルアデニン(iP)-タイプのサイトカイニンは、シュートと根の両方で野生型よりも含量が高くなっていた。したがって、AtABCG14は根で合成されるtZ-タイプやDHZ-タイプのサイトカイニンの分布において重要な役割を演じていることが示唆される。AtABCG14 プロモーター制御下でGUS もしくはAtABCG14とGFPの融合タンパク質を発現させた解析から、AtABCG14 はシュートよりも根において強く発現しており、根の移行領域から伸長/分化領域にかけての内鞘と中心柱で主に発現し、分裂領域では殆ど発現していないことがわかった。他にも、抽だいした植物の若い葉の中ろくや葉脈、成熟した葯、長角果においても発現が見られた。また、AtABCG14タンパク質は細胞膜に局在していた。標識したtZを根に与えると、野生型ではシュートに輸送されていたが、atabcg14 変異体では殆ど輸送されていなかった。35S プロモーター制御下でAtABCG14 を過剰発現させた形質転換体の葉に標識したtZを与えると、表皮細胞への標識の取込が野生型よりも少なく、ABCトランスポーターの阻害剤であるオルトバナジウム酸塩で予め処理した葉では野生型との間の標識取込量の差が緩和された。このことから、AtABCG14は排出輸送体として機能しているものと考えられる。以上の結果から、AtABCG14は根で合成されたサイトカイニンの地上部への輸送に関与するトランスポーターであると考えられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 論文)アブシジン酸の異化を... | トップ | 論文)葉の老化におけるジャ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読んだ論文備忘録」カテゴリの最新記事