Cell-surface receptors enable perception of extracellular cytokinins
Antoniadi et al. Nature Communications (2020) 11:4284.
doi:10.1038/s41467-020-17700-9
Cytokinin fluoroprobe reveals multiple sites of cytokinin perception at plasma membrane and endoplasmic reticulum
Kubiasová et al. Nature Communications (2020) 11:4285.
doi:10.1038/s41467-020-17949-0
サイトカイニン受容体である膜貫通型ヒスチジンキナーゼ(HK)は、小胞体(ER)膜上に局在すことが報告されているが、細胞膜上の受容体が細胞外サイトカイニンを受容するという説は完全には排除されてはいない。
英国 インペリアル・カレッジ・ロンドンのTurnbull ら[Nature Communications (2020) 11:4284.]は、シロイヌナズナの根のシンプラストとアポプラストに含まれるサイトカイニン類を調査し、サイトカイニン活性のないグルコシル化したサイトカイニンはシンプラストに多く含まれていること、遊離型およびリボシド型サイトカイニンはシンプラストとアポプラストで同等に分布しているか幾分アポプラストの方が多いことを見出した。このことから、細胞外に局在する活性型サイトカイニンはサイトカイニンシグナル伝達を引き起こしているのではないかと考えた。そこで、合成レポーターTCSn::GFP を導入したシロイヌナズナの根由来プロトプラストを遊離のサイトカイニンもしくはリンカーを介してサイトカイニンを結合させたセファロースビーズで処理をして蛍光シグナルを観察した。その結果、ビーズ処理により細胞外サイトカイニンを受容することでもサイトカイニン応答が活性化されることがわかった。この細胞外サイトカイニン処理はサイトカイニンによって発現が誘導される遺伝子の転写産物量も増加させた。サイトカイニン受容体のARABIDOPSIS HISITIDINE KINASE(AHK) の変異体を用いた解析から、細胞外サイトカイニンによるTCSn::GFP の活性化がAHK受容体を介していることが確認された。また、AHK-GFP融合タンパク質の解析から、AHK3の25%、AHK4の36%は小胞体膜以外に局在しており、細胞膜に局在する受容体が細胞外サイトカイニンに応答してシグナル伝達を行なっていると考えられる。
チェコ パラツキー大学オロモウツのSpíchal ら[Nature Communications (2020) 11:4285.]は、イソペンテニルアデニン(iP)のN9位に蛍光団の7-ニトロ-2,1,3-ベンゾオキサジアゾール(NBD)を付加した標識サイトカイニン(iP-NBD)を合成した。iP-NBDは、サイトカイニン受容体CRE1/AHK4に親和性があり、弱いサイトカイニン応答性も有していた。iP-NBDの細胞内局在をシロイヌナズナの分化した側根の根冠細胞、根分裂領域の表皮細胞で調査し、両細胞種においてiP-NBDはER特異的マーカー(p24δ5-RFP)と共存することが確認された。一方で、iP-NBD蛍光はERレポーターとは重ならないスポット状のシグナルを発していることを見出した。このシグナルは細胞内で検出され、細胞膜やエンドサイトーシス時の小胞を染色するFM4-64と共存していた。そこで、各種マーカーを用いてiP-NBDの細胞内局在を解析したところ、iP-NBDと親和性を有するタンパク質はERに限らずエンドソーム膜輸送系や細胞膜にも局在することが推測された。GFPで標識したCRE1/AHK4(CRE1/GHK4-GFP)は、側根根冠細胞や根分裂組織表皮細胞ではERマーカーと共存していたが、分裂組織の表皮細胞ではCRE1/GHK4-GFPシグナルは細胞膜で見られ、ERでは検出されなかった。さらに分裂過程の分裂組織細胞ではCRE1/GHK4-GFPシグナルは細胞板においても検出された。これらの結果から、CRE1/GHK4は側根根冠細胞では主にERに局在するが、根端分裂組織の表皮細胞では細胞内膜系に入ってERと細胞膜の両方に局在していると考えられる。
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