The Arabidopsis O-Linked N-Acetylglucosamine Transferase SPINDLY Interacts with Class I TCPs to Facilitate Cytokinin Responses in Leaves and Flowers
Steiner et al. Plant Cell (2012) 24:96-108.
doi:10.1105/tpc.111.093518
O-結合 N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)のSer残基もしくはThr残基への付加によるタンパク質の修飾は、タンパク質の機能調節に関与していることが知られている。この反応はO-GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)によって触媒され、シロイヌナズナにはSPINDLY(SPY)とSECRET AGENT(SEC)の2種類のOGTが存在している。SECの機能には不明な点が残されているが、SPYは、DELLAタンパク質を修飾して活性化しジベレリン(GA)シグナルの負の制御因子として機能すること、サイトカイニンシグナルの正の制御因子として機能すること等の様々な解析結果が報告されている。イスラエル エルサレム・ヘブライ大学のWeiss らは、SPYと相互作用をするタンパク質の探索を酵母two-hybrid選抜によって行ない、TCP転写因子のTCP15とそのホモログのTCP14をSPYと相互作用をするタンパク質として同定した。シロイヌナズナゲノムにはTCPをコードする遺伝子が24あり、TCP14とTCP15はクラスI のTCPに分類されている。TCP14とSPYとの関係を解析するためにTCP14 を35S プロモーター制御下で恒常的に発現する形質転換体の作出を試みたが、著しい発達異常を生じて致死となってしまった。そこで、側生器官原基で発現するASYMMETRIC LEAVES1 (AS1 )プロモーター制御下でTCP14 を発現するコンストラクトを導入した形質転換体を用いて解析を行なった。この形質転換体は、節間伸長の阻害、花弁成長の阻害、稔性低下、がく片でのトライコーム形成の促進、クロロフィル含量の増加によって濃緑色となり小型化した葉の形成、といった表現型を示し、TCP15 をAS1 プロモーター制御下で発現させた場合にも同様の傾向が見られた。この形質転換体にspy 変異を導入するとTCP14 過剰発現による表現型が抑制された。spy 変異はTCP14 の発現には影響していないことから、TCP14の活性にはSPYが必要であると考えられる。SECを用いたin vitro の実験系によって、TCP14、TCP15がO-GlcNAc修飾を受けることが確認された。tcp14 tcp15 二重変異体は葉縁が滑らかになり、がく片が無毛となるといったspy-4 変異体と類似した表現型を示したが、spy-4 変異体において観察される、細長い草型、早期開花、GA生合成阻害剤パクロブトラゾ-ル非感受性といった形質は見られなかった。葉縁の形態やがく片のトライコーム形成はSPYがサイトカイニン応答を促進していることの指標であり、草型、花成、パクロブトラゾール耐性はSPYによるGA応答の抑制に関与していることから、SPYとTCP14/TCP15との相互作用はサイトカイニン応答と関連しているものと思われる。野生型植物をサイトカイニン(BA)処理すると葉が小さくなり鋸歯が増加するが、spy-4 変異体やtcp14 tcp15 二重変異体ではそのような変化は見られなかった。また、BA処理によって野生型植物ではがく片のトライコーム形成が強く誘導されるが、spy-4 変異体、tcp14 tcp15 二重変異体でのトライコームの形成誘導は僅かであった。BA処理は花序の伸長成長を阻害し、spy-4 変異体ではその阻害が抑制されるが、tcp14 tcp15 二重変異体では野生型と同様に花序の伸長が阻害された。よって、SPY、TCP14、TCP15の機能は完全に重複してるのではない。TCP14 やTCP15 過剰発現させた個体は、がく片でのトライコーム形成の促進に加えて、分枝の促進や老化遅延といった野生型植物をサイトカイニン処理した際と同じような表現型を示した。また、TCP14 過剰発現個体ではサイトカイニンによって発現誘導されるARR5 の転写産物量が野生型よりも高くなっていた。サイトカイニンは細胞分裂を促進する作用があり、tcp14 tcp15 二重変異体では分裂因子CYCLIN B2;1 (CYCB2;1 )の転写産物量が減少していることが明らかとなっている。CYCB2;1 プロモーター制御下でGUS 遺伝子を発現するコンストラクトを導入したTCP14 過剰発現個体の花序では、GUS活性が野生型よりも強く、活性が長く持続した。サイトカイニン処理をすると、野生型、TCP14 過剰発現個体共に花序でのGUS活性が誘導されるが、TCP14 過剰発現個体の方がサイトカイニンの効果が強く現れた。よって、TCP14はサイトカイニン経路の制御を介して細胞分裂を促進していると考えられる。野生型芽生えをサイトカイニン処理するとARR5 の転写産物量が増加するが、TCP14 、TCP15 の転写産物量は変化しなかった。サイトカイニン分解酵素をコードするCK OXIDASE /DEHYDROGENASE3 (CKX3 )をAS1 プロモーター制御下で発現する形質転換体とTCP14 をAS1 プロモーター制御下で発現する形質転換体を交雑して得た個体は、CKX3 を発現させた形質転換体の特徴である花成遅延が起こり、TCP14 を過剰発現させた個体の特徴である花弁の成長抑制とがく片のトライコーム増加は抑制された。しかし、この個体にサイトカイニンを添加することでTCP14 過剰発現個体の表現型が回復した。よって、サイトカイニンはTCP14活性を促進していると考えられる。以上の結果から、SPYはTCP14、TCP15といったクラスI TCP転写因子と相互作用をすることで葉や花におけるサイトカイニン応答を促進していると考えられる。