Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)DELLAタンパク質はJAZタンパク質を介してジャスモン酸シグナルを制御する

2011-02-22 19:20:36 | 読んだ論文備忘録

DELLAs Modulate Jasmonate Signaling via Competitive Binding to JAZs
Hou et al.  Develpmental Cell (2010) 19:884-894.
DOI:10.1016/j.devcel.2010.10.024

ジャスモン酸(JA)シグナル伝達経路は他の植物ホルモンとのクロストークによって複雑な調節ネットワークを形成している。JAによるストレス応答や成長制御には、ジベレリン(GA)によって分解が誘導されるDELLAタンパク質が関与していることが報告されているが、その詳細な分子機構は明らかとなっていない。シンガポール国立大学Yu らは、シロイヌナズナGA欠損ga1-3 変異体芽生えのJA応答遺伝子の発現誘導がJAとGAを同時に処理することによって弱められること、野生型植物をGA生合成阻害剤パクロブトラゾール(PAC)処理するとJA処理によるJA応答遺伝子の発現が増加することを見出した。また、DELLAタンパク質の機能喪失はJA処理によるJA応答遺伝子の発現誘導を弱めること、ga1-3 変異体でのDELLAタンパク質の機能喪失はJAとGAを同時に処理した際のJA応答遺伝子の発現抑制が弱まることがわかった。よって、DELLAタンパク質はJA応答遺伝子のJAシグナルによる発現を促進する作用がある。ga1-3 変異体芽生えの根の成長はJA処理によって抑制されるが、ga1-3 変異と各種DELLA変異を組み合わせることでJAによる抑制効果が弱まった。よって、DELLAタンパク質はシロイヌナズナの成長におけるJA応答に対しても正に作用している。DELLAタンパク質と相互作用をする因子を探索するために、N末端を欠いたRGA(RGAΔN)をベイトに用いてシロイヌナズナcDNAライブラリーの酵母two-hybridスクリーニングを行なったところ、JAシグナル伝達における主要な抑制因子であるJAZ1がRGNΔNと相互作用をすることがわかった。他のJAZタンパク質のJAZ3やJAZ9もRGAΔNと相互作用を示し、RGA以外のDELLAタンパク質(GAI、RGL1、RGL2)もJAZ1と相互作用を示した。しかし、JA応答遺伝子発現の活性化転写因子であるMYC2はRGAΔNと相互作用を示さなかった。RGAとJAZ1の相互作用は生体内でも起こることが確認され、DELLAタンパク質はJAZタンパク質相互作用をすることでJAシグナル伝達経路を制御していると考えられる。JAによるJAZ1の分解にGAやPACは関与しておらず、JAはRGAの分解に関与していなかった。また、JA応答遺伝子の発現に対するGAやPACの効果はJAZタンパク質の分解が起こらないcoi1-1 変異体においても観察された。in vitroプルダウンアッセイにより、MYC2とJAZ1との相互作用はRGA量が増加するにつれて弱められること、同様にMYC2もまたRGAとJAZ1との相互作用を弱めることがわかった。よって、DELLAタンパク質はJAZタンパク質との結合においてMYC2と拮抗することでJAZ/MYC2複合体からのMYC2の解離を促進する作用があると思われる。生体内において、PAC処理によるDELLAタンパク質量の増加はMYC2の直接のターゲットであるLOX2TAT1 遺伝子のプロモーター領域への結合を強め、MYC2の転写活性を促進させた。一過的発現実験系において、MYC2によるターゲット遺伝子の転写促進はJAZ1によって抑制され、さらにRGAを発現させることで発現抑制が弱められた。MYC2ターゲット遺伝子のJAZ1による発現抑制のRGAによる阻害は、GAを添加することで効果が失われた。よって、DELLAタンパク質はMYC2のターゲット遺伝子の転写制御に影響することでJAシグナル伝達を調節していることが示唆される。GA欠損ga1 変異にJA過剰生産変異hy1-101 を付与した芽生えは根の成長が抑制されるが、ここへさらにRGA機能喪失rga28 変異が加わると根の伸長抑制が緩和された。ga1 coi1-1 二重変異体はJAZタンパク質が蓄積してJAに対する感受性が低下するが、ここへRGA機能喪失rga28 変異を付与してもJA感受性低下に変化は見られなかった。よって、DELLAタンパク質によるJA応答の制御は、JAを受容するCOI1の機能に依存している。JAZタンパク質において保存されているNT、ZIM、Jasの3つのドメインのうち、NTドメインとJasドメインがRGAとの相互作用に関与しており、DELLAタンパク質のDELLAドメインとLZ1ドメインはJAZ1との相互作用とMYC2転写活性制御に関与していることがわかった。以上の結果から、DELLAタンパク質は直接JAZ1と相互作用を示すことでJA応答に関与していることが明らかとなった。この相互作用はJAZ1とMYC2の相互作用を妨げ、MYC2のターゲット遺伝子のプロモーター領域への結合を高める。その結果として、DELLAタンパク質はJA応答遺伝子の発現を促進することになる。一方、GAはDELLAタンパク質の分解を引き起こしてJAZ1とMYC2との結合を可能とし、JAシグナルを抑制する。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする