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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)CLAVATA受容体によるタンパク質キナーゼの活性制御

2011-02-15 20:07:43 | 読んだ論文備忘録

Mitogen-Activated Protein Kinase Regulated by the CLAVATA Receptors Contributes to Shoot Apical Meristem Homeostasis
Betsuyaku et al.  Plant Cell Physiol. (2011) 52:14-29.
doi:10.1093/pcp/pcq157

シロイヌナズナの茎頂分裂組織幹細胞集団の大きさはCLAVATA(CLV)経路によって制御されている。茎頂中心部(central zone)の幹細胞から分泌されるCLV3ペプチドは、ホメオボックス転写因子をコードするWUSCHELWUS )の発現領域を制限しており、CLV3の受容体複合体として、CLV1、CLV2-SOL2/CRN、RPK2/TOAD2の3種類が知られている。しかしながら、CLV3シグナルがどのように伝達されるかについての詳細は明らかではない。東京大学の別役らは、CLV受容体やCLV3をN. benthamiana で一過的に発現させる実験系を用いて、CLV1はSOL2/CRN存在下でCLV2、SOL2/CRN、RPK2/TOAD2と相互作用を示すこと、CLV1はCLV3を認識することによって自己リン酸化すること、この自己リン酸化は他のCLV受容体による制御を受けている可能性があることを見出した。CLV経路の下流に位置するシグナルとして、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)によるリン酸化の有無をゲル内キナーゼアッセイにより調査し、N. benthamiana でのCLV3の一過的発現によりNbSIPKに相当する46 kDaのタンパク質キナーゼが活性化されることがわかった。46 kDa タンパク質キナーゼの活性化はCLV受容体を一過的に発現させた場合にも観察されるが、CLV1とCLV2はCLV3を同時に発現させると発現させなかったときよりも活性が低下し、RPK2/TOAD2ではCVL3を同時に発現させることによってタンパク質キナーゼ活性が上昇した。また、シロイヌナズナ芽生えをCLV3処理することでMPK6が活性化されること、cvl1-101 変異体ではCLV3処理なしにMPK6が恒常的に活性化され、CLV3処理をするとMPK6の活性化状態がCLV3無処理の野生型と同等にまで低下すること、clv2-101 変異体ではCLV3無処理の状態でMPK6活性が野生型よりも僅かに低く、CLV3処理によってMPK6活性が上昇すること、cvl1-101 clv2-101 二重変異体ではCLV3処理の有無によるMPK6活性の変化が見られないことを見出した。したがって、CLV受容体はMAPKの活性化に対して異なる応答を示し、CLV3に依存してCLV1は負の、RPK2/TOAD2は正の制御因子として機能していると考えられる。CLV2はCLV3が存在しない状態ではMAPKの活性化因子として機能するが、CLV3が存在するとその機能は失われる。以上の結果から、これらのCLV受容体は、茎頂分裂組織においてCLV3によって引き起こされるMAPKの異所的な活性化を抑制し、MAPK活性を一定の状態に保つことで茎頂分裂組織の維持を行なっていると考えられる。

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