Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)類似性のあるペプチドによる転写因子の活性制御

2011-01-28 19:03:20 | 読んだ論文備忘録

Nuclear Import and DNA Binding of the ZHD5 Transcription Factor Is Modulated by a Competitive Peptide Inhibitor in Arabidopsis
Hong et al.  JBC (2011) 286:1659-1668.
DOI:10.1074/jbc.M110.167692

シロイヌナズナゲノム中には100アミノ酸残基以下のタンパク質をコードする遺伝子が3000以上存在し、その中には転写因子と相同性のあるタンパク質が含まれている。MIF(mini zinc finger)タンパク質は、zinc finger homeodomain (ZHD)転写因子と相同性のあるzinc finger(ZF)モチーフを有しているが、DNAとの結合に必要なホメオドメインを持っていない。韓国 ソウル大学校Park らは、シロイヌナズナの3種類のMIFタンパク質と14種類のZHDタンパク質が相互作用をするか酵母two-hybrid法で調査し、MIFタンパク質はZHD5、ZHD8、ZHD10、ZHD13と強い相互作用を示すことを見出した。さらにMIF1とZDH5を用いた詳細な解析から、MIF1とZHD5はZFモチーフを介してヘテロダイマーを形成することがわかった。ZHD5はホモダイマーもしくはモノマーの形でDNAと結合するが、MIF1が存在するとその量に応じてDNAに結合するZHD5が減少し、MIF1はZHD5ホモダイマーのDNA結合を妨げる作用があることがわかった。蛍光タンパク質を付加した融合タンパク質を用いてシロイヌナズナ葉肉細胞プロトプラストでのZHD5、MIF1の細胞内局在を調査したところ、ZHD5は主に核に局在し、MIF1は細胞質で小胞様の構造を形成していた。また、MIF1は生体内でZHD5と複合体を形成して細胞質の小胞様構造に局在させることでZHD5の核への移行を阻害することがわかった。MIF1 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナは、わい化し、小さく緑色が濃く光沢のある葉を形成し、湾曲した短い花糸とねじれて長くなった雌ずい群から構成された異常な花を形成した。ZHD5 を過剰発現させた形質転換シロイヌナズナは、MIF1 過剰発現個体とは逆に、成長が加速し、葉が大きくなった。MIF1 過剰発現個体とZHD5 過剰発現個体を交配して両者の発現量が増加した形質転換体の表現型は野生型と同じになった。以上の結果から、MIF1タンパク質は、ZHD5タンパク質とヘテロダイマーを形成することでZHD5タンパク質の核移行を阻害し、核内においてもZHD5タンパク質のDNA結合を阻害するという2つのステップによりZDH5活性を負に制御することが示された。

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