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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)重力刺激によるPIN3タンパク質のトランスサイトーシス

2011-01-06 22:45:08 | 読んだ論文備忘録

Gravity-induced PIN transcytosis for polarization of auxin fluxes in gravity-sensing root cells
Kleine-Vehn et al.  PNAS (2010) 107:22344-22349.
doi:10.1073/pnas.1013145107

根の重力屈性は、オーキシン排出キャリアのPIN3によって制御されていることが知られている。根を水平にすることによって重力方向を変化させると、PIN3は細胞の重力方向に局在することで下側のオーキシン濃度が増加し、根の下側の成長を抑制することで屈曲が起こる。しかしながら、重力刺激によるPIN3の細胞内局在変化の詳細な機構は明らかではない。ベルギー ゲント大学のFriml らは、シロイヌナズナpin3 変異体を用いた解析から、pin3 変異による根の重力屈性の低下は薬剤によるオーキシン輸送阻害による低下ほどは強くなく、PIN3と相同性が高く発現部位も重なっているPIN7がPIN3の機能を相補することを見出した。PIN3にGFPを融合したタンパク質をシロイヌナズナで発現させてPIN3を可視化して観察したところ、重力方向の変化に対して30分以内にコルメラ細胞のPIN3タンパク質の局在変化が見られ、これは新規に合成されたPIN3タンパク質やPIN3タンパク質の液胞での分解の増加によるものではないことがわかった。重力刺激変化を与えて5-10分後に、PIN3タンパク質が細胞膜からエンドソームへの内在化が観察されるようになり、細胞膜上のPIN3タンパク質が減少していった。クラスリンによるエンドサイトーシス過程を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤チルホスチンA23は、PIN3タンパク質の内在化を抑制し、さらに、PIN3タンパク質の重力方向への局在化、オーキシンの不均等分布、重力屈性を抑制した。このことは、PIN3タンパク質の内在化は、重力刺激変化によるPIN3タンパク質の局在化にとって重要であることを示唆している。PINタンパク質のエンドソームから細胞膜への移行を阻害するブレフェルジンA(BFA)を処理すると、重力刺激変化を受けたコルメラ細胞でのPIN3タンパク質のBFAコンパートメントの形成が増加し、重力屈性が弱まった。また、BFA非感受性のGNOMタンパク質を発現させることによって、重力刺激変化によるPIN3タンパク質の局在化、オーキシン不均等分布、重力屈性が回復した。よって、PIN3タンパク質の局在化は、BFA感受性のGNOMを介した輸送機構によって行なわれていると考えられる。以上の結果から、重力刺激変化を受けた際のPIN3タンパク質の局在変化は、エンドソームを介したトランスサイトーシスを介して行われていると考えられる。

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