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植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)二次壁形成を抑制するWRKY転写因子

2011-01-04 19:04:08 | 読んだ論文備忘録

Mutation of WRKY transcription factors initiates pith secondary wall formation and increases stem biomass in dicotyledonous plants
Wang et al.  PNAS (2010) 107:22338-22343.
doi:10.1073/pnas.1016436107


米国 サミュエル・ロバーツ・ノーブル財団Dixon らは、タルウマゴヤシ(Medicago truncatula )のTnt1 レトロトランスポゾン挿入集団の中から、茎切片のリグニン自家蛍光が野生型よりも強いNF3788変異系統を選抜した。この変異体の茎全体でのリグニン量の増加は僅かであったが、髄の部分のリグニン量は野生型の2倍、シリンギルリグニンは4倍増加しており、リグニン化した髄細胞壁は野生型よりも厚くなっていた。この変異体の髄細胞壁は二次壁の肥厚を引き起こしていることから、mutant secondary wall thickening in pith(mtstp-1 )と命名した。この変異の原因遺伝子の探索を行ない、茎節間で発現しているWRKYファミリー転写因子をコードする遺伝子にTnt1 が挿入され、変異体ではこの遺伝子の発現見られないことを確認した。今回見出されたWRKY転写因子と相同なタンパク質は、ブドウ、ダイズ、シロイヌナズナ(AtWRKY12/At2g44745)からも同定されている。シロイヌナズナのAtWRKY12 遺伝子にT-DNA挿入され発現量が低下した変異体wrky12-1wrky12-2mtstp-1 変異体と同様のリグニン変化を示していた。よって、AtWRKY12MtSTP は髄細胞壁形成の制御に関与している真のホモログであると考えられる。AtWRKY12 は茎と胚軸の髄細胞、皮層組織で発現しており、根や花では発現が見られなかった。AtWRKY12タンパク質は核に局在していると考えられる。wrky12 変異体での遺伝子発現をマイクロアレイによって網羅的に解析したところ、二次細胞壁合成に関与しているC3H zinc inger転写因子やNACドメイン転写因子NST2 の発現量が増加していた。これらの遺伝子のプロモーター領域にはWRKY転写因子が結合するとされているW-box(TTGACT/C)が見られることから、AtWRKY12は直接これらの遺伝子のプロモーター領域に結合して遺伝子発現を抑制しているものと考えられる。

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