北朝鮮の「核・ミサイル開発」にどう対応するか?
(1)
北朝鮮の主要な関心は、「国家の存立」にある。
北朝鮮が「核・ミサイル開発」をする目的は、アメリカによる北朝鮮の「国家としての承認」だ。
(1)-2
そもそも北朝鮮の「敵」は、「米国」であって、「日本」でも、「韓国」でもない。
北朝鮮は、「国家としての存立の保障」を米国から得ることを最大の目的とする。
(2)
日本は、アメリカの「核の傘」が必要か?
(2)-2
「日本の核武装」は、核不拡散体制のもとで、米英ロ中仏が許さない。
今の北朝鮮のように、世界の大部分の国を、敵にまわす。
メリットがない。
(2)-3
逆に言えば、「非核」の日本を、核保有国は、攻撃してはならない国際法上の義務がある。
日本は、今、アメリカの「核の傘」が必要とするが、それはアメリカの義務でもある。
(2)-4
日本国民の安全(生命・財産の安全)は、「非核」の方針のもとで、外交的・専守防衛的な手段で、確保すべきだ。
(3)
北朝鮮に、「核・ミサイル開発」の中止を決断させるためには、北朝鮮の「国家としての存立」の保障が必要だろう。
一方で、「核不拡散体制」を北朝鮮に認めさせ、「核・ミサイル開発」を中止させる。
他方で、北朝鮮の「国家としての存立」を、日米韓中(ロ)が保障する。
この2点をおさえ、北朝鮮と「外交交渉」を行うべきだ。
(3)-2
北朝鮮の「核・ミサイル開発」に対し、「最大限の圧力が必要で、いまは対話の時でない」と主張するにしても、それは、北朝鮮を「軍事攻撃」すべきだ、ということであってはならない。
最終目的は、北朝鮮を「外交交渉」に応じさせることだ。
その場合、外交交渉は、北朝鮮の「核・ミサイル開発」の中止と、「国家としての存立の保障」をセットにする以外ないだろう。
(4)
最重要なのは、「日本国民の安全(生命・財産の安全)」だ。
米国が北朝鮮を「軍事攻撃」すれば、北朝鮮政府を崩壊させ・北朝鮮正規軍の大部分を無力化できるだろう。
しかし崩壊までの期間に、北朝鮮正規軍は、韓国主要都市及び日本主要都市を、ミサイル攻撃・砲撃し、相当数の死者・負傷者を発生させるだろう。
さらに謀略的な破壊工作もあるだろう。
(4)-2
米軍と北朝鮮が「軍事衝突」した場合、北朝鮮にとって、米本土の核攻撃は、結果が不確実だ。
むしろ、北朝鮮は、「暴発」的に、日本(及び在日米軍基地)を核攻撃する可能性がある。
(4)-3
韓国は、同じ民族なので、北朝鮮の核攻撃を受けないだろう。
(そもそも、韓国と北朝鮮には、各種チャンネルがあるはずだ。)
(5)
北朝鮮と米国の「軍事衝突」で、最もひどい被害を受けるのは日本だ。
ミサイル防衛は、気休めで、北朝鮮による大量のミサイル攻撃に、日本は対抗できない。
(5)-2
北朝鮮にたいする米国の「軍事攻撃」の可能性は、北朝鮮への「圧力」となる。
その上で、「外交交渉」を行い、一方で北朝鮮に「国家としての存立を保障」し、他方で「核・ミサイル開発の中止」を認めさせる。
かくて、日本政府は、日本国民の安全(生命・財産の安全)を守るべきだ。
(6)
日本政府は、「外交交渉」で事態を解決するとの立場を堅持しなければならない。
そして、この立場に立って、米国に対応する。
今の、米政権は、予測不可能な面がある。
この点を考慮し、日本は、日本国民の安全(生命・財産の安全)のため、細心の注意を払うべきだ。
(6)-2
日本政府は、「外交的解決を通じた平和の構築」を目的とするべきだ。
日本政府の目的は、「日本国民の安全(生命・財産の安全)」を守ることだ。
「北朝鮮を締め付けること」が究極の目的でない。
北朝鮮を「暴発」させ、「軍事衝突」を引き起こすことが、北朝鮮に「圧力」をかける目的ではない。
(7)
「圧力」(Pressure)には3つの「C」が必要だ:「P3C」。
「連携」(Coordination):日米韓中の綿密なシナリオ・打ち合わせが重要だ。
「有事」(Contingency):軍事衝突時の最低限の危機管理計画。邦人救出、難民対策等。
「対話のチャンネル」(Communication Channel):意図しない軍事衝突の回避のため、北朝鮮との間に、対話のチャンネル構築しておく。
(7)-2
「北朝鮮の核兵器を、事実上認知すればよい」という議論は、問題を先送りするだけだ。
核を放棄させるまで、交渉しなければならない。
(7)-3
「拉致問題」は、包括的な形で解決する必要がある。
「核・ミサイル問題」を解決する中で、北朝鮮が要求する「戦後の清算や処理」を解決し、その中に「拉致問題」を包み込んで解決すべきだ。
(8)
米国は、これまで世界のリーダーとしての安定感があったが、今、トランプ政権の米国は違う。
日本の外交力が、試されている。
《参考文献》「対北朝鮮、打開の道は」田中均(1947-)(2002年小泉首相訪朝を秘密裏に準備。)(『朝日新聞』2018/02/06号)
(1)
北朝鮮の主要な関心は、「国家の存立」にある。
北朝鮮が「核・ミサイル開発」をする目的は、アメリカによる北朝鮮の「国家としての承認」だ。
(1)-2
そもそも北朝鮮の「敵」は、「米国」であって、「日本」でも、「韓国」でもない。
北朝鮮は、「国家としての存立の保障」を米国から得ることを最大の目的とする。
(2)
日本は、アメリカの「核の傘」が必要か?
(2)-2
「日本の核武装」は、核不拡散体制のもとで、米英ロ中仏が許さない。
今の北朝鮮のように、世界の大部分の国を、敵にまわす。
メリットがない。
(2)-3
逆に言えば、「非核」の日本を、核保有国は、攻撃してはならない国際法上の義務がある。
日本は、今、アメリカの「核の傘」が必要とするが、それはアメリカの義務でもある。
(2)-4
日本国民の安全(生命・財産の安全)は、「非核」の方針のもとで、外交的・専守防衛的な手段で、確保すべきだ。
(3)
北朝鮮に、「核・ミサイル開発」の中止を決断させるためには、北朝鮮の「国家としての存立」の保障が必要だろう。
一方で、「核不拡散体制」を北朝鮮に認めさせ、「核・ミサイル開発」を中止させる。
他方で、北朝鮮の「国家としての存立」を、日米韓中(ロ)が保障する。
この2点をおさえ、北朝鮮と「外交交渉」を行うべきだ。
(3)-2
北朝鮮の「核・ミサイル開発」に対し、「最大限の圧力が必要で、いまは対話の時でない」と主張するにしても、それは、北朝鮮を「軍事攻撃」すべきだ、ということであってはならない。
最終目的は、北朝鮮を「外交交渉」に応じさせることだ。
その場合、外交交渉は、北朝鮮の「核・ミサイル開発」の中止と、「国家としての存立の保障」をセットにする以外ないだろう。
(4)
最重要なのは、「日本国民の安全(生命・財産の安全)」だ。
米国が北朝鮮を「軍事攻撃」すれば、北朝鮮政府を崩壊させ・北朝鮮正規軍の大部分を無力化できるだろう。
しかし崩壊までの期間に、北朝鮮正規軍は、韓国主要都市及び日本主要都市を、ミサイル攻撃・砲撃し、相当数の死者・負傷者を発生させるだろう。
さらに謀略的な破壊工作もあるだろう。
(4)-2
米軍と北朝鮮が「軍事衝突」した場合、北朝鮮にとって、米本土の核攻撃は、結果が不確実だ。
むしろ、北朝鮮は、「暴発」的に、日本(及び在日米軍基地)を核攻撃する可能性がある。
(4)-3
韓国は、同じ民族なので、北朝鮮の核攻撃を受けないだろう。
(そもそも、韓国と北朝鮮には、各種チャンネルがあるはずだ。)
(5)
北朝鮮と米国の「軍事衝突」で、最もひどい被害を受けるのは日本だ。
ミサイル防衛は、気休めで、北朝鮮による大量のミサイル攻撃に、日本は対抗できない。
(5)-2
北朝鮮にたいする米国の「軍事攻撃」の可能性は、北朝鮮への「圧力」となる。
その上で、「外交交渉」を行い、一方で北朝鮮に「国家としての存立を保障」し、他方で「核・ミサイル開発の中止」を認めさせる。
かくて、日本政府は、日本国民の安全(生命・財産の安全)を守るべきだ。
(6)
日本政府は、「外交交渉」で事態を解決するとの立場を堅持しなければならない。
そして、この立場に立って、米国に対応する。
今の、米政権は、予測不可能な面がある。
この点を考慮し、日本は、日本国民の安全(生命・財産の安全)のため、細心の注意を払うべきだ。
(6)-2
日本政府は、「外交的解決を通じた平和の構築」を目的とするべきだ。
日本政府の目的は、「日本国民の安全(生命・財産の安全)」を守ることだ。
「北朝鮮を締め付けること」が究極の目的でない。
北朝鮮を「暴発」させ、「軍事衝突」を引き起こすことが、北朝鮮に「圧力」をかける目的ではない。
(7)
「圧力」(Pressure)には3つの「C」が必要だ:「P3C」。
「連携」(Coordination):日米韓中の綿密なシナリオ・打ち合わせが重要だ。
「有事」(Contingency):軍事衝突時の最低限の危機管理計画。邦人救出、難民対策等。
「対話のチャンネル」(Communication Channel):意図しない軍事衝突の回避のため、北朝鮮との間に、対話のチャンネル構築しておく。
(7)-2
「北朝鮮の核兵器を、事実上認知すればよい」という議論は、問題を先送りするだけだ。
核を放棄させるまで、交渉しなければならない。
(7)-3
「拉致問題」は、包括的な形で解決する必要がある。
「核・ミサイル問題」を解決する中で、北朝鮮が要求する「戦後の清算や処理」を解決し、その中に「拉致問題」を包み込んで解決すべきだ。
(8)
米国は、これまで世界のリーダーとしての安定感があったが、今、トランプ政権の米国は違う。
日本の外交力が、試されている。
《参考文献》「対北朝鮮、打開の道は」田中均(1947-)(2002年小泉首相訪朝を秘密裏に準備。)(『朝日新聞』2018/02/06号)