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沖田瑞穂『すごい神話』30.「世界中にある『三種の神器』――ケルト、スキタイ、日本」:三機能体系説(続々々)ケルトの運命の石、槍と剣、釜!スキタイの杯、斧、鋤と軛!日本の鏡、剣、玉!

2023-09-28 14:35:25 | 日記
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第二章 言葉と音と(世界各地の「言葉」・「音」・「数字」の神話)(19~30)

(1)ケルト神話の「運命の石」(聖性)、「槍と剣」(戦闘)、「釜」(豊穣)!
デュメジルが述べた神話のもつ三機能体系はインド=ヨーロッパ語族のケルト、スキタイの「三点一組の宝物」の神話にもみられる。ケルト神話によれば女神ダナの民はアイルランド島に到達したとき、4つの宝物を持っていた。①「運命の石」リア・ラファル:正しい王がこの石に触れると石は叫び声を上げる。つまり「正しい王」を選ぶ。これはデュメジルの神聖性・主権性に関わる第一機能(「聖性」)に相当する。②ルグ神の「槍」とヌアドゥ神の「剣」(この剣で打ち倒された者は生き延びることができない)。これらは第二機能(「戦闘」)に相当する。③ダグダ神の持つ「釜」:無尽蔵に食料が出てくる。これは第三機能(「豊穣」)に相当する。

(2)スキタイの宝物:「杯」(聖性)、「斧」(戦闘)、「鋤(スキ)と軛(クビキ)」(豊穣)!
スキタイにも「三点一組の宝物」の神話がある。これもデュメジルの三機能体系のよって説明できる。イラン系遊牧民のスキタイは自分たちの神話を書き記していないが、ギリシアの歴史家ヘロドトス『歴史』がスキタイの神話を伝える。王権を持つ者は「天から落ちてきた黄金の宝物」を所有する。それらはスキタイの王家に代々受け継がれた。①黄金の「杯」:宗教的器物でありスキタイの王たちは即位に当って女神の前で神聖な飲み物を「杯」から飲む儀礼を行っていた。「杯」はデュメジルの神聖性・主権性に関わる第一機能(「聖性」)に相当する。②黄金の「斧」:これは第二機能(「戦闘」)に相当する。③黄金の「鋤(スキ)と軛(クビキ)」:これらは第三機能(「豊穣」)に相当する。

(3)日本の「三種の神器」:「鏡」(聖性)、「剣」(戦闘)、「玉」(豊穣)!   
インド=ヨーロッパ語族の「三点一組の宝物」の神話は多くがデュメジルの機能体系説で解釈できる。日本の「三種の神器」(鏡、剣、玉)もインド=ヨーロッパ語族の「三点一組の宝物」に似る。①「鏡」はアマテラスの御神体として伊勢神宮に祀られ、神道の祭祀の中心的な役割を担ってきた。「鏡」はデュメジルの神聖性・主権性に関わる第一機能(「聖性」)に相当する。②「剣」はデュメジルの第二機能(「戦闘」)に相当する。③「玉」はデュメジルの第三機能(「豊穣」)に相当する。『古事記』によれば、アマテラスはイザナキから「ミクビタマ」という玉の首飾りを与えられている。「ミクビタマ」は別名を「ミクラタナ」という。「ミクラタナ」は穀倉の棚に祭られる稲魂(イナダマ)の神を表す。「ミクビタマ」=「ミクラタナ」は稲作を代表とする農業生産にかかわる神宝だ。(Cf. 吉田敦彦『日本神話と印欧神話』1974年)

《参考1》「三種の神器」は天孫降臨 の際にアマテラス( 天照大神 )が ニニギ (瓊瓊杵尊、邇邇芸命)に授けた「八咫鏡」 ・「 天叢雲剣 ( 草薙剣 )」・ 「八尺瓊勾玉」 の総称 だ。①「八咫鏡(ヤタノカガミ)」は伊勢神宮にある御神体と、その御神体を象って作ったという皇居にある形代の2つがある。「八咫鏡」は天照大神(アマテラスオオミカミ)が天の岩屋に隠れたとき、大神の出御を願い、石凝姥命イシコリドメノミコトが作ったという鏡である。
《参考1-2》②「天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)」あるいは「草薙剣(クサナギノツルギ)」は熱田神宮にある本体と、皇居にある形代の2つがある 。「天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)」は素戔嗚尊スサノオノミコトが出雲国で八岐大蛇ヤマタノオロチを退治した時その尾から出た剣だ。後に日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征のおり、倭姫命(ヤマトヒメノミコト)から賜ったこの剣で草をなぎ払って難を逃れたので「草薙剣(クサナギノツルギ)」と呼ばれる。
《参考1-3》③宮中に実物があるとされる「八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)」は『古事記』に最初二度登場する。(ア) スサノオがイザナギから葦原中津国を追い出された後、アマテラスに挨拶しようと思い高天原(タカマガハラ)に向かう。スサノオが向かうと山や川、国土が震えどよめく。アマテラスはスサノオが高天原を奪いに来たと考え、武装してスサノオを待ち構える。そのとき「八尺瓊勾玉」(八尺勾玉)を飾りものとして両手や首にかけ戦闘態勢をとった。結局スサノオノは「国を奪うつもりがない」ことを誓約(ウケイ)という占いで証明した。(イ)後に「アマテラスの岩戸隠れ」の際に「八尺瓊勾玉」は、「八咫鏡」とともに榊の木に掛けられた。

《参考2》フランスの比較神話学者ジョルジュ・デュメジルはインド=ヨーロッパ語族の神話は、神聖性・主権性に関わる第一機能(「聖性」)、戦闘性・力強さに関わる第二機能(「戦闘」)、多産(生産)・豊穣性・平和・美に関わる第三機能(「豊穣」)、これら三つが絡み合うことで神話世界が構築されていると指摘する。これは「三機能体系説」と呼ばれる。
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