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「歌う袋」『スペイン民話集(エスピノーサ篇)』(10話):人々は、いつも「悪」にひどい目にあわされているから、虚構の話の中でも「悪」に勝利されては、たまったものでない!

2020-11-05 14:02:19 | 日記
(1)
3人の娘を持つ父親が、祭りに行き、娘たちに黄金の指輪を1つずつ買ってきた。ある日、末の娘が洗濯に行って、傷めないよう金の指輪を抜き、泉の石の上に置いた。洗濯を終えると娘は指輪の事を忘れ、家に帰った。やがて指輪を忘れたのに気づき、娘が泉に戻った。
《感想1》よくある話。指輪が見つかるといい。しかし見つからないかもしれない。娘は不安だ。
(2)
泉のそばに1人の老人がいた。「わしは指輪のありかを知っているよ。もしあんたがこの袋に入ったら、返してやろう」と娘(少女)に言った。
《感想2》何というとんでもない老人だ。娘は迷う。怖い話だ。
(3)
少女は指輪を返してほしいので、袋に入った。すると老人は、袋の中の少女に「わしがお前に《歌え、歌え、ずだ袋、歌わないと殴ってやるぞ》と言ったら歌うのだぞ」と脅した。老人は、その袋を背負って歩き出した。
《感想3》老人は、なぜこんなことを少女に言ったのか。実は老人は、金儲けを企(タクラ)んでいた。
(4)
老人は少女の入った袋を持って村に入り、人々に言った。「私は歌う袋を持っております。歌を歌わせますから、お金を下さい。」そして「歌え、歌え、ずだ袋、歌わないと殴ってやるぞ」と老人が言った。袋の中の少女はおびえて歌った。「泉に忘れた金の指輪のために、私は父さんも母さんも忘れて、袋の中で死ぬでしょう。」
《感想4》「歌う袋」とは不思議な見世物だ。村人は老人にお金を渡すだろう。村人は旅芸人、見世物、娯楽をいつも待っている。Cf. 映画『道』の旅芸人を思い出させる。
(5)
老人はこのように村から村へと、多くの村をまわった。少女は袋の中で歌い続け、人々はほんとうに袋が歌っていると思い、たくさんのお金を老人にやった。
《感想5》老人はよい見世物の仕掛け、「歌う袋」を手に入れた。Cf. 少女の「排せつ」等はどうしたのか?道端でさせたのだろう。
(6)
旅を続け、やがて老人は少女の村にやってきた。そして偶然にも少女の家に宿を求めた。老人は食事代の代わりにと、袋に歌を歌わせた。するとすぐ姉さんたちにはその声が、妹の声と分かった。
《感想6》だが姉たちはこの時点ですぐに、老人に「袋の中を見せてもらいたい」と言えない。なぜなら(ア)老人は他人で客だし、失礼なことは出来ない。また(イ)もしかしたら間違いかも知れないからだ。
(7)
老人が夕食を終え、酒場へ飲みに出たすきに、姉さんたちは妹を袋の中から救い出した。そして袋の中に代わりに犬や猫を入れた。老人は酒場から戻ると寝てしまった。
《感想7》(a)犬と猫を一緒に入れて、よくケンカしないものだ。また(b)ワンワン、ニャーニャー鳴かず行儀のよい犬と猫だ。そして(c)老人が酔っ払っていてよかった。
(8)
次の日の朝早く、老人は袋を背負って家を出た。隣村に着くと早速、老人が袋に言った。「歌え、歌え、ずだ袋、歌わないと殴ってやるぞ」。ところが袋は歌を歌わない。怒った老人は袋を何度も殴りつけた。だが歌わない。かくて老人は金が手に入らない。
《感想8》老人は困った。だがまだ袋に少女が入っていると思っている。なぜなら犬と猫はワンワンともニャーニャーとも鳴かないからだ。(不思議な犬と猫だ!)
(9)
老人が袋を開けた。老人に殴られた犬と猫が袋から跳びだした。犬は老人の鼻に噛みつき引きちぎり、猫は老人の顔中をひっかいて傷だらけにした。
《感想9》悪者の老人は懲罰を受け、被害者の少女は救われ、ハッピーエンドだ。つまり勧善懲悪(カンゼンチョウアク)だ。昔話の定番!「悪」が栄える話は人々に受け入れられない。人々は、いつも「悪」にひどい目にあわされているから、虚構の話の中でも「悪」に勝利されては、たまったものでない。
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