DIARY yuutu

yuuutunna toki no nikki

カフカ「中年のひとり者ブルームフェルト」:悪意はないし、気味悪くもないが、心を持っているように見える「白いセルロイドのボール」の話はカフカ的妄想世界だ!

2020-05-30 12:50:13 | 日記
※カフカ(1883-1924)「中年のひとり者ブルームフェルト」(1920)『カフカ短編集』岩波文庫(池内紀編訳)

(1)アパートの7階に、中年のひとり者ブルームフェルトは住む。階段を上るのが大変だ。彼が帰っても、誰も迎えてくれない。彼は自分で仕込んだ果実酒を飲み、フランスの雑誌を読む。通いの老人の掃除女は耳が遠く、足も悪い。仕事ぶりも、ブルームフェルトの目から見て、いいと言えない。
《感想1》中年のひとり者ブルームフェルトは、収入が良いわけでないが、それなりの生活だ。掃除女を雇うし、フランスの雑誌も購入する。
(2)彼は、寂しいから「犬を飼いたい」とも思う。しかし①犬は部屋を汚す。部屋の清潔さが気にかかる。②犬はノミがいる。③病気にもなる。④老いぼれる。そう思うとやはりこの先30年一人でいた方がいいとブルームフェルトは思う。
《感想2》ひとり者のブルームフェルトは神経質だ。部屋の清潔さが気にかかる。犬を飼いたいが、結局、あれこれ考えて、飼わない。
(3)ブルームフェルトが7階にたどり着くと、自分の部屋から変な音がする。ドアをあけ電気をつけると、何と白いセルロイドのボールが二つ、床に当たって跳ねて、かわるがわる上がったり下がったりしている。つかまえようとすると逃げるが、それでいてブルームフェルトの後ろをついてくる。
《感想3》「白いセルロイドのボール」の話はカフカ的妄想世界だ。ユーモラスだ。悪意はないし、気味悪いというわけでもない。「白いセルロイドのボール」は心を持っているように見える。
(4)ボールにまといつかれて疲れ、ブルームフェルトはベッドに入る。するとボールはベッドの下に入ってしまう。ところが夜中ずっと誰かがドアをたたいている気がして、ブルームフェルトは、結局、よく眠れなかった。
《感想4》ボールは、悪意はないし、気味悪いわけでもないが、正体不明の物体だから、ブルームフェルトは安眠できなかった。
(5)次の朝、掃除女のノックの音でブルームフェルトは目が覚めた。朝食を準備しに来たのだ。だが彼は、ボールを知られたくない。何とか見つけられないように努力する。掃除女が帰ると、ブルームフェルトは仕事に行かなければならないので、ボールを洋服ダンスに、閉じ込めた。
《感想5》正体不明の物体を、ブルームフェルトは掃除女に見せまいとする。常識的な現実からかけ離れた出来事だから、見られたら他人から何と言われるかわからないからだ。
(6)掃除女の子供の少年に、ブルームフェルトはボールをあげてしまおうとしたが、少年は要領を得ない。アパートの管理人の少女2人が、「あたしたちがもらう」と言う。しかしブルームフェルトは少女たちがどうも尻軽すぎるようで気が進まない。
《感想6》中年のひとり者ブルームフェルトは、子供が苦手だ。少年はわけが分からないし、少女たちは尻軽すぎる。
(7)ブルームフェルトは下着の製造工場に勤めている。事務室で女工から製品を受け取り、賃金を渡す。少年の助手が2人いるが、怠け者でさぼってばかりだ。すでに20年勤務するブルームフェルトの昔ながらのやり方を、工場主のオトマール氏は非効率だと批判し、見ると腹が立つらしく、滅多に事務室に来ない。
《感想7》中年のひとり者ブルームフェルトは、真面目で頑固な人柄だ。少年の助手2人をうまく手なづけられない。工場主のオトマール氏には煙たい存在だ。
(8)小使いは耳の遠い老人で、神さま並びに工場主のお目こぼしで食いつなぐ。小使いは「掃除こそ自分の職務」と心得、箒を誰にもわたさない。助手2人が、ふざけて箒を取り上げようとして、小使いといさかいになる。ブルームフェルトが、「そこの2人、仕事につくんだ」と助手に注意すると、助手たちは睨み返すが注意に従う。
《感想8》ブルームフェルトは、《すまじきものは宮仕え》といった趣だ。
Comment    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 現存在の根源的全体の根拠は... | TOP | 映画『スターリンの葬送狂騒... »
最新の画像もっと見る

post a comment

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Recent Entries | 日記