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トランプ大統領のアフガン新戦略(米軍引き揚げの見送り・増強)の問題点:法政大学名誉教授・多谷千香子 

2017-12-08 15:04:22 | 日記
(1)アフガン戦争開始(2001年)から16年
アフガニスタンでの対テロ戦争が始まってすでに16年。
今、タリバーンが勢いを増す。
《感想》
世界同時多発テロの首謀者オサマ・ビンラディンは、米軍がすでに殺害した。(2011年)
だがオサマ・ビンラディンをかくまったタリバーンとのアフガン戦争が、その後も終わらない。
今や、アフガン戦争は、目的なき戦いだ。

(2)トランプ大統領のアフガン新戦略(2017年):米軍引き揚げの見送り・増強
2017年8月、トランプ大統領がアフガン新戦略を発表した。①米軍数千人の増派、②空爆を2倍にする、③米軍引き揚げの見送り。
米国はもはや、タリバーンを戦闘で打ち負かすことが不可能との判断だ。
撤退期限を定めず戦うことで和平交渉の席に着かせることを狙う。
米軍引き揚げの見送りは、《権力の空白による混乱が生じれば、テロリストが自由に動き回り、米本土に対する危険が増す》ので、それを避けるためだ。
《感想》
米軍の決定は、彼らの状況判断・経験則・予測を前提すれば、極めて合理的だ。
日本のように、指導者の面子(メンツ)や、場の雰囲気にもとづく決定ではない。
米国はプラグマティズムの国だ。

(3)民間軍事会社に下請けさせる「戦争の民営化」案
トランプ政権は初め、民間軍事会社に下請けさせる「戦争の民営化」を、検討した。
理由は①費用が安い、②米国民のアフガン戦争への反対を緩和できる、③タリバーンが疲れ果てるまで戦争し続け、和平に持ち込む。
だが(ア)タリバーン勢力は無尽蔵で、(イ)民間軍事会社に下請けさせる戦争では米国側が軍事的に弱体化する。かくて戦争の民営化案は不採用となった。
《感想》
「戦争の民営化」とは、つまり傭兵だ。
国際法は、傭兵を認めておらず、捕虜に関する規定も適用されない。傭兵として敵を殺害した場合、帰国後、殺人罪に問われることもある。
しかしイラク戦争で米国が「民間軍事会社」を大々的に 導入。2007年には各社合わせ米正規軍を超える18万人が活動したと言われる。この中には事実上の傭兵が含まれる。

(4)タリバーン勢力は無尽蔵&外国軍占領下で和平交渉に応じないだろう:新戦略の問題点(その1)
①タリバーン勢力は、イスラム原理主義的な田舎の慣習に従うアフガン民衆そのものだから、当然、無尽蔵だ。
②一般市民は、空爆による被害が増していることもあり、外国軍やガ二政権に反感を持ち、心情的にタリバーンに同調する。
③トランプ大統領のアフガン新戦略に対し、タリバーンは、「外国軍がいる限り戦う」と述べる。彼らは親子代々戦い続けており、外国軍占領下で和平交渉に応じることは、期待できない。
《感想》
すでに戦争は16年続いている。戦争が日常化している。
彼らは親子代々戦い続けている。
若者は若年の死を覚悟しているだろう。日本の「軍国少年」が、かつてそうだった。
また、例えば、クルド人の若者も同様な状況だ。
おそらくアフガニスタンの若者には、「細く長い」人生は構想できない。
戦争に行かなくてすむある年齢まで生き残れば、その後の一定の長さの人生設計が可能となるだろう。

(5)新戦略の問題点(その2):印パの敵対関係が助長される
新戦略は、アフガン国軍の訓練をインドに大幅に担わせ、米国の負担軽減を狙う。
タリバーンは、パキスタンが支援する。
かくて印パの敵対関係が助長され、パキスタンのタリバーン支援が強化される。
戦闘の激化が予想される。
《感想》
「憎しみ」が、利用され・助長される。
あらゆる勢力争い・戦争における基本手段だ。
印パの敵対関係は、インド独立の時のヒンズー教インドとイスラム教パキスタンの対立が、根源だ。

(6)新戦略の問題点(その3):米軍引き揚げの見送りと増強で、ロシア、イランがタリバーン支援を強化し、戦闘激化を招く
なお数年前から、ロシアやイランもタリバーンに影響力を持ち始め、現在は強い影響力をもつ。
ロシアやイランがタリバーンを支援する理由が3つある。
①米国に戦争を続けさせ疲弊させたい。(米ロは対立し、また米イランも対立する)。
②ロシアやイラン、それぞれにとって危険な過激派組織「イスラム国」に、タリバーンが対峙している。
③ガ二政権が、余りに米国寄りだ。

(7)米国はアフガンから撤退すべきだ:ただしその後はガ二政権へのタリバーンの攻勢となる可能性が最大
新戦略は、和平と米国の名誉ある撤退でなく、地域敵対関係(インド対パ、ガ二政権対タリバーン)をあおり、戦闘を激化させる。
米国はアフガンから撤退すべきだ。
①最新兵器はアフガン国軍に残す。
②インドをアフガンに呼び込まない。
③アルカイダらテロリストをこの地に封じ込める。
④戦闘激化せず、タリバーンの急伸が起きず、場合によっては和平交渉も可能。
⑤ただし、実は米国撤退後、ガ二政権へのタリバーンの攻勢となる可能性が最大。しかし米国にとって疲弊は最小限だ。

《感想1》
アフガニスタン内戦はイスラム勢力と共産党勢力間で1978年に始まる。
共産党勢力を肩入れするため、1979年、ソ連がアフガニスタン侵攻。
これに対し、反ソ勢力を米軍が後押し、以後、内戦へ。
1989年、ソ連のペレストロイカ、東欧自由化の中で、ソ連軍撤退。
一時、内戦が終了した。
しかし反ソ勢力間で、諸民族の対立から内戦再開。
2001年、タリバーンがアフガニスタンを事実上統一し、内戦終了しつつあった。
ところが、アメリカのタリバーン攻撃で、アフガニスタン戦争開始。
かくて1978年から、アフガニスタンは、38年も戦争が続く。
不幸で厳しい運命だ。
《感想2》
多谷千香子氏の立論は、アフガニスタンでの戦闘沈静化の観点から、最良の方策を提示する。
かくて、米国撤退を主張。
将来的には、政権側との和平交渉にもとづき、事実上タリバーンによるアフガニスタン統一を、多谷氏は見通しているようだ。

《参考文献》「米国の対アフガン戦略、軍隊引き揚げが唯一の道」(法政大学名誉教授・多谷千香子)(『朝日新聞』2017/11/16朝刊)
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