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1453 ノディエ(1780ー1844)『青靴下のジャン=フランソワ』1832年: 著者は科学の時代に幻視を信じるor信じたい! 

2018-10-01 19:11:04 | 日記
(1)
狂人ジャン=フランソワの話。1793年のこと。フランソワは20代半ば。青靴下をいつもはき、小さな三角帽子をかぶった気のいい若者、しかし狂人だった。
(2)
フランソワは二重の存在で、精密科学が極めて優秀で正確に理性的に議論する。しかし日常生活は全くだめで、人と話を交わせない。そして彼はしばしば目を遠くへ向ける幻視者だった。
(2)ー2 
あるいはフランソワには二つの魂があると言ってもよい。一方で、現実世界(粗雑な世界)では彼は狂った魂をもつ。他方で精密科学の高貴な空間(世界)では彼は純化された魂を持つ。ここでの彼の話は脈絡がありまっとうだ。
(3)
1793年10月16日、青靴下のジャン=フランソオワが物思わしげに天を見ていた。そして言った。「あの血のあとを目でたどってごらん。フランス王妃マリ=アントワネットが天に昇ってゆくのが見えるよ。」後になって、「この日、王妃が断頭台で斬首された」とのニュースが伝わった。フランソワは王妃の死を幻視した。
(4)
フランソワは学生時代、きわめて優秀で学校でいくつも賞をとり表彰された。しかも彼は天使のような美男子だった。彼を見込んで、有力貴族の夫人がその一人娘の家庭教師に彼を雇った。彼はその娘を思慕した。しかし彼は仕立屋の息子にすぎず、身分差はどうにもならない。彼はその苦悩を紛らわすために、オカルト学や心霊術の研究に陥った。そして彼は狂った。
(5)
私はその秋、勉強のためストラスブールに移った。そしてフランソワの事は忘れていた。春になり、私は実家に戻った。ある朝父が新聞を見て、「あの貴族夫人とその一人娘が3日前、夕方4時過ぎに斬首された」と言った。
(6)
ところが実はその日、私は広場に立って天空を凝視するフランソワに会ったのだ。彼は、夕方4時頃、空に手をさしのべ、一声叫んで倒れ死んだ。それは貴族夫人とその一人娘が斬首された時間だった。フランソワは、彼が愛したあの貴族の一人娘の死を幻視したに違いない。

《感想》狂人である幻視者、そして彼の純愛の話だ。1832年の著者は科学の時代(or理性の時代)に生きる。だが著者は幻視を信じるor信じたい。
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