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ミュージカル 『キャバレー』<松尾スズキ版>@大阪厚生年金会館大ホール

2007-11-07 | ステージれびゅー
今年は毎月一本観劇と調子にのっていたのに、10月は観たかった公演のチケットが取れず、11月には四本も集中する事に。

11月の一本目は、今年一番の注目作、松尾スズキ版のミュージカル『キャバレー』です。

いろんなところで“天才的”とか“変態オヤジ”と、話題の絶えない松尾スズキ初の本格ミュージカル作品を演出という事で、何をやらかしてくれるのか期待しまくり。
こんなの機会があったらチェックしない訳にはいかないでしょう。

メインキャストは、ヒロインにミュージカル初挑戦の松雪泰子、キャバレー・キット・カット・クラブの司会に今年大ブレイク中の阿部サダヲ、先日の『血の婚礼』での印象は微妙だった森山未来は主人公的な役がら。
安部サダヲの他に、大人計画からは平岩紙、村杉蝉之介、あーんど星野源。
それから、松尾スズキの舞台と縁の深い秋山菜津子、『犬顔家の一族の陰謀~金田真一耕助之介の事件です。ノート』でも面白かった小松和重。

ミュージカル映画が大好きな観点から、どうしても今回書きたかった不満が。

この先ネタバレ多し。
※俺の見た、大阪最終日一回目の公演だけ限った事なのかもしれません。

それは、この舞台の花であるはずの松雪泰子。
照明に負けていたのか、俺の観た回では歌っている間ほとんど目が開いていない状態。
目に力が入っていないと表情も単調で、美しさや華やかさに欠けてしまうし、何より致命的なのは色気まで欠けてしまう。
ポスターに写っているように短い髪型ならばまだ目も映えて良かったのでしょうけれど、広がった髪形だったので、細くしている目が余計に小さく見え、オペラグラスを使っても顔の表情は読み取れない。
歌声の声質も軽くてミュージカル調ではなく、迫力でも他の出演者に負けており、ディーヴァとしての魅力に全く欠けた。
サントラ欲しいと思わせる歌唱力くらいは最低でも必要なのでは?
彼女だけが友近を連想する海外ドラマの吹き替えのような喋り方だったのは松尾スズキの演出なのでしょうけれど、見た目はダメ、歌もダメと有っては、これが意図した芝居であってもただ下手なように観えてしまい、舞台の華がこんな状況なので、このミュージカル自体の印象が悪かった。

自分を女優だと勘違いしているキャバレーの華を地で行く女優として惨めな所を晒す為に招いたのなら知りませんよ、つか、それが松尾さんの狙いなら怖くて何とも言えませんw
映画では松雪さん上手いんだし…一応。

舞台セットとダンスにも不満が。
二階席から観ていたので、一階正面からの印象とかなり違うのかもしれませんが、ケバケバしいキャバレーのイメージも、ダンサーがエロティックに踊る姿も足りず、踊りも密度が薄い。
(この薄さが、都合の良いカットばかりを集めた映像で収録されると、どんな印象に変わるのかは楽しみだけど)
結果、華の無い松雪泰子が中心のミュージカルパートでは、絢爛豪華さが無いに等しかった。

こういうミュージカルって、とにかく歌が盛り上がるのに合わせて気分も高揚するはずなんだけど…。
大人計画のテイストと言えばらしい安っぽさだけど、多分目指していたのはそれを含んだうえでずっと高みだったと思うんですよね、わざわざ劇団の外でやってるわけだし。
芝居の楽しい部分と、歌で感動させるメリハリは、はっきり付けようとしている意図も感じたし。
そうで無いなら人数だけ投入して『クワイエットルームへようこそ』のシュールなダンスでまとめてくれた方が松尾スズキファンだらけの会場はもっと盛り上がったでしょう。
猫やお米券の着ぐるみダンサーでも、男同士のベロチューでもなんでも笑って受け入れてしまう客層(俺も含めて)なんですから。

でも、きっとそういう事でやりたい舞台色を失わせてしまうよりも確実で手っ取り早かったのは、もっと実力のある歌姫を据えて統率させる事だったんじゃないかな。
事実、初めて生で観る阿部サダヲは映像で観るよりもさらにテンションが高く、舞台を引っ張るオーラが満ち満ちていて、彼が出てくるだけで舞台に不足していた華やかさがズワァッと広がっていた。
まさに舞台上の世界に引き込まれて行く感覚になれた。
セットやダンスに不足を感じるスキを与えちゃいけないんですよ、きっと。
んなもの無くても役者の力で補えるはずなんだから。
その力が松雪泰子には欠けていた。

森山未来もこういう好青年の役では輝きを増していたし、声は若いけれど歌はさすがに慣れているだけあって安定していて、芝居も上手いから安心して観ることができた。

秋山菜津子なんかはどう考えても松雪泰子よりも歌が上手いし、歌での表現も素敵過ぎて、なんなら歌姫役代わって欲しいくらいに感じた。
ダンサー引き連れずに歌っていても楽しい気分になったもの。

事前にメイン以外のキャストを調べていなかったので、幕が上がった後にいきなり星野源が飛び出して来たのには驚きました。
その後も様々なオイシイ役をいくつもこなして出まくりで、累計するとメインキャストの何人かよりは長い間登場していたかもしれない。
彼のギターがBGMになったり、阿部サダヲと並んで踊ったり、注目していた生の星野源を偶然観れただけでも大感動なのに、いろんな姿が観れて、今後益々楽しみ。
いつか生でSAKEROCKのライブも観てみたいな。

平岩紙も、普段のボーっとしている顔の表情からくる印象から演技をすると豹変するのが面白くて好きな女優だったので、今回生で観れて良かった。

総じて考えてみると、『クワイエットルームへようこそ』の出来が良すぎて、こちらが見劣りしただけなのかもしれないけれど、正統派で行かないのなら松雪泰子の代わりに池津祥子を据えて、派手にぶち壊してくれるバージョンなんかあったらファンは大喜びしそう。
でも、楽しいミュージカルは、大人計画ファンではなくて、オキャマがマネしたくなるテイストで仕上げないと万人ウケは難しいかな。

終わってから松尾スズキが登場し、某妖怪人間ソングを歌って逃げていきましたw
初、生松尾スズキごちです。
クワイエットルームへようこそ』『ヒートアイランド』『自虐の詩』と、三週間続いた怒涛の松尾スズキ連鎖の〆に相応しい感じw
もうしばらくはお腹いっぱい。

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