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ソロモンの偽証 前篇 事件

2015-03-12 | 劇場映画れびゅー
前後篇を1ヶ月しか間を置かずに公開という、邦画としては珍しいチャレンジに並々ならぬ意欲を感じて期待していた『ソロモンの偽証 前篇 事件』を観てきました。
★★★★★

前篇だけでも拍手を贈りたい面白さ。
続く後篇を沸々とした気持ちで待たなくても、直ぐ公開してくれると言うのが嬉しい。

オープニングタイトルにまで『宮部みゆき ソロモンの偽証 前篇 事件』と、原作者名がどーんと出てくる映画と言うのも珍しいけど、宮部みゆきを読んだ事が無いので、原作に対する期待はゼロの状態からの鑑賞でした。

中学生の自殺を切欠に、学校に広がり始めた猜疑心。
疑心暗鬼になる学生達を、事なかれ主義で抑え付けようとする学校側と、目に見える範囲で捜査を終わらせてしまう警察組織の仕組み。
それらを利用しようとする者や、マスコミの扇動によって、自殺で片付けられたはずの事件は、学生達を飲み込む大きなうねりへと変わっていく。

それぞれの組織の中に様々な考え方や対応をする者が居て、その事からどういうところに問題が潜在しているのか、ステレオタイプな一般論の描写が物語のスパイスになっているところが面白い。
関わる人々それぞれに家庭、人生が有って、と言う深いところまで踏み込んで人物描写をしいるところが、感じさせる事の多い映画になっている。

基本的な時間軸が一本通っているところに、登場人物の記憶を描く場面では境界を少しぼかしたりしているので、「いつ」の事が描かれているのか若干曖昧で迷子になる感覚に捕らわれる場面も。
引き込まれてじっくり観ている最中に、その事によって「おや?」と思わせ、より注意深く観る切欠になっているように感じた。

安心して観ていられる大御所の大人役者さん達がこの映画を支えていることは間違い有りませんが、子供たちの芸達者なこと。
前週に観た『くちびるに歌を』に登場した中学生達が、純粋無垢な田舎の中学生達をそのまま投影したような、素人っぽさを前面にキラキラと輝いていたのとは完全に対称的で、本作の中学生達は都会っ子で小生意気で我が強いのをベースに、演じている子役の良い意味での子役タレントっぽさが物語の根幹を大人と一緒に支えている。
特に主演の藤野涼子の演技力は次のスター女優の登場を確信させた。

1990年に中学校2年生と言う事は、自分よりちょっと年下で、当時俺高校生だったよなーなんて懐かしく思いながら時代考証に沿った映像も楽しみました。

ネタバレ
生徒たちを取り巻く環境として、事件に翻弄される先生達の細かな描写が面白い。
本気で子供たちと向き合いたいから、あえて臭い物には蓋をしようと告発状を隠蔽する判断を下してしまった校長(小日向文世)と、その事に噛み付いていた女性教師(安藤玉恵)。
黒木華演じる、自信が無いなりに生徒思いの担任が告発状を破り捨てたと言う疑惑に対して、疑惑の時点で点数稼ぎのように他の教師の前で責任を迫る男性教師(木下ほうか)。
前半はこの小日向文世と黒木華にフィーチャーして、警察の正義と、真の正義とは程遠いマスコミの毒牙に翻弄される様子を描き、後半は噛み付いていた安藤玉恵と木下ほうかの根本が保身である事の露呈に辟易とさせられ、松重豊演じる熱血教師が生徒達を信じて導く姿に頼もしく感じると言う作り。
先生と言えば、何のゴタゴタも起きなさそうな“現在”の校長役に、何をやっても絶対に面白い余貴美子をキャスティングしているところが贅沢。

一方、生徒の家庭を描く場面では、それぞれの生徒の後ろ盾となっている家庭環境がそのまま生徒の性格に反映されているのが怖くも面白い。
生徒の親を演じる役者達も、それぞれ芝居に定評の有る役者さん達が当てられていて、特に永作博美の役は本谷有希子と絡んで以来のぶっ壊れっぷりを想像させ、後篇が楽しみで仕方が無くなる。

後篇で気になるのは、やっぱり自殺した柏木卓也の本性。
序盤で黒木華が怖がっていた彼の表情とか、藤野涼子や神原和彦に告げていた「偽善者って言うんだよ」と言う言葉の真意。
特に藤野涼子に言った時は、彼女の記憶の中では笑みを浮かべていたようにも思えました。
謎の多い神原和彦弁護士対、藤野涼子検事。『後篇 裁判』はどんな展開が待っているのでしょうか。



ソロモンの偽証 第I部 事件
宮部 みゆき
新潮社
ソロモンの偽証 第II部 決意
宮部 みゆき
新潮社
ソロモンの偽証 第III部 法廷
宮部 みゆき
新潮社
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