想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

ビフォーアフターin フクシマ原発

2011-10-11 01:04:32 | Weblog
今年3月12日の午前中、ベイビーは雪の上を走っていた。
森の春はまだ遠く、樹々は冬眠からいまだ醒めない頃だった。
おだかやな、静かな、夢見るような時を、この日も過ごしていた。

静けさは、続いていたけれど。
地震で那須の山が盛り上がり、こちらへ迫ってくるように見えて
くりかえしくりかえし、山を振り仰いだ日だった。


午後3時半頃だったか、ニュース速報で第一原発に白煙が上がった
ことを知った。まだ寒いけれど外はいいあたたかな陽射しで、日向が
ここちよい日だった。
少し、風が出てきた。日が翳り始めた。
風は強くなり、雨に変わった。



雨は雪を融かし去年の枯れ草が露になった。雨といっしょに放射能にも
濡れた日だった。ベイビーはそんなことは知らない。
外で思いきり遊べる春を待っている。



高速道路が封鎖され、物資が滞り、ガソリンがなく食べ物が店から
消えた日。うさこは森に閉じこもって、まだ本当の怖さを知らなかった。
ベイビーに合羽代わりのTシャツを着せ、自分もマスクと合羽に傘さしの
変なかっこうでしか、庭であるはずの森を歩けないのが堪えていた。
森が大好きな自分に気づいて、少し肩を落として。



高速道路通行止め解除、少しだけ楽になった気がした5月。
新芽が顔を出していた。森はこれから春だ。


桜も咲いた。いつも通り、ゴールデンウィークに咲く山桜。
今年は例年よりたくさん花をつけてくれた。花は桜。
桜って、祝いの花? 何祝う? と見上げながら、ちょい泣き。
桜はこころの花、日本人の。と気づいて、涙を拭く。
咲いてくれて、ありがとう、なんだと。


芽吹きの時、放射能などどこ吹く風で、森はどんどん新芽をつけて
にぎやかに緑の衣を織り始める。
このときはまだ知らなかったこと、3月のあの日、広葉樹はまだ裸で、
葉をつけていなかった。新芽もまだ‥。名残り雪と腐葉土の上に降り
注いだのだった。
ということは、新しい芽は汚れていないのだ。
反面、針葉樹の松は、松やにもあり、放射性物質が付着しやすい。
あの日もあおあおとして寒さの中で立ち続けていたのだった。

この森は人の手が入っていない分、自然のままにさまざまな雑木が
茂っている。特に落葉樹、広葉樹が多い。
福島は森と湖が美しい国。豊かな森が放射性物質を受け止める壁と
なって周辺地域へ拡散するのを防ぐ役割を果たしたようだ。
平らな土地であれば、もっと風は流れ、被害は広がったものを森が
ほとんどを受け止めてくれたのだ。



だから今、森はぐったりと疲れている。
森から降りてくる風は、けっきょくのところ、平地の人々の暮らしの
方へと向かって流れ、子供達の歩く場所へとあらぬものを運んでいく。
放射性物質は土を汚し、水を汚し続けている。

林野庁はなにをどうするつもりなのか。
誰か教えてほしい。
と言っててもしかたがないので、忙しく自ら働くしかないのである。
森が大好きだから、な、しかたがないぜ。
がんばるぜ、後始末だ。ビフォーアフター、美しまふくしま!







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