想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

歯磨きしながら泣く

2020-11-03 16:28:25 | Weblog
(ここも失われる場所)

新聞にひととおり目を通し
簡素な朝餉を済まし
口をゆすぎ歯を磨く

洗面台の鏡には初老の女
眉間を寄せ頬にかかる髪を
払いもせず歯ブラシを動かす

目を赤くして
悲しいのか、怒っているのか
まだ朝だというのに
泣いているのか

****************

政府は原発を再稼働し新設さえする
という。脱炭素を理由に原発推進、
「毒をもって毒を制すアクロバット」
鎌田慧氏がコラム(東京新聞11/3)
に書いていた。

温室効果ガス排出量ゼロ
この大義名分を借り原発を再稼働
するという短絡さ。
声高に財界へのメッセージを挙げ
保身をはかる政治家たち。
「今後十年間は再稼働に全精力を注ぐ」
と梶山経産相は言い、
前経産相、自民党参院幹事長世耕氏は
「新技術を取り入れた原発の新説も
検討することが重要だ」と言った。


(一面の緑が黒いパネルになる場所)

一方で福島の海は放射能汚染水の
海洋放出の危機にある。
やっと十年、ようやく十年、
漁師たちは耐えに耐えてきた。
その海に、汚染水を流すという。
政府は東電のために動いていると、
漁師たちは憤っている。

漁師だけでなく、福島の人々で
これに賛成する人はどのくらい
いるだろうか。岩手、宮城、茨城も
みな海岸線に面してつながり、
風評被害の払拭に懸命だった。

汚染水を処理水と言い換え安全を
主張しているのは東電と政府だけだ。
原発事故の汚染水はトリチウムだけ
でなくストロンチウムや他の放射性
物質も含まれている。
魚は獲れなくなる。
今より売れないだろう。

最寄りのイオンストアに福島産の
魚類が売られるようになったのは
今年に入ってからだ。数種類ある。
売れ行きが芳しくないのは見て
わかる。私も手が伸びない。
鮮魚だと売れないから総菜や
加工食品にされるだろう。
産地が目立たない工夫をして……
それで、漁師の誇りはどうなる?

来春が本格操業という矢先に、
汚染水を海洋放出するとは!
国から漁協へ説明があったのは
1回きりである。
福島の漁師には廃業せよというのか、
自殺者が出てもおかしくない。
さまざまに耐えてきて犬死にではないか。



木の実はやろっこはちまき
地元の人に教えてもらった名。
ナツハゼの実を今年も採った。
事故から2度目の収穫。
浜通りの家の庭先や裏山や
あちこちにあったかもしれない。
酸っぱくて美味しい。
もう一度、原発事故が起きたら
ここには住めなくなるだろう。
ナツハゼのジャムも作れない。


(桜模様のお皿にナツハゼの葉)

経済優先の政策というが、
経済ではない既得権益者のための
政治が止まない。
大切なものを喪失したのは
彼らではない。
自然の恵みでつつましく
土地に根ざして生きてきた人たちだ。
それが許されないのだろうか。
そもそも、大地は誰のものでも
海は誰のものでもなかったはず。
奪い、線引きし、所有し、名づけ
植民して開発しそして実りを得た。

いま用済みになった人を追い立て
後にくるのは何だろうか。

原発事故がなかったら
再生エネルギー政策に便乗した
自然破壊を放任することもなかった。
土地を取得した外資に認可を
与えたのは国の法律である。
ほぼザル法だ。

水も、豊かな土地も、海も
種苗も、売られ続けている。
早晩このあたりは
行き場を無くした熊の出没に
困るようになるだろうなあ。
ベイビー亡き今、我が家も
安全ではなくなる、
かもしれない。























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