ロンドンに住んでいた頃、ティル・フェルナーをよく聴いていた。徒歩圏内のウィグモアホールで彼のベートーヴェンソナタの全曲演奏会があったりしたこともあって。雨のパリで、彼と一緒にガボーホールから締め出しを食った(約束の時間なのにホールが開かなかった)ことは今でも思い出す。
下手うま、と言ったら怒られるけれど、決して技術力がピカイチ、とかではないのだけれど、癒される、と言うのだろうか、バッハのインヴェンションとフランス組曲の入ったCDは心安らかになりたい時によく聴いていた。
その彼がなぜ静岡という地方都市に来たのかは知らない(日本での公演は東京、大阪、静岡)。シューベルト、シェーンベルク、モーツァルト、ベートーヴェンを演奏した。シューベルトって秋に合う作曲家だと思う。前半のシューベルトの即興曲は、ところどこで遺作の3つのソナタを思い出させた。アンコールはバッハのフランス組曲第5番のサラバンド。やっぱり、これはいい。静岡に戻ってきてくれるかわからないけれど、いつか彼のシューベルトやバッハの演奏会を聴く機会があるとよいな。