日中には真夏日にもなるこのごろ、お風呂上りのからだはさっぱりするどころか汗が滲み出てくる。
髪を乾かすのもそこそこに居間へ行き、ベランダ側の掃きだし窓を開け放す。
海からの風はさらに川を渡り、涼やかな風となって部屋に流れ込む。
額から吹き出る汗をバスタオルで拭いながら、天井に取り付けてあるファンをリモコンで操作し、「強」で回転させる。
一枚の平面の板のように見える羽の下、外からの風は攪拌されていく。
汗がひくまではなるべくじっとしていたい。
私はパソコンデスクの前の回転椅子に座り、東に面している窓の外を眺める。
清水港にそびえるクレーンや煙突の明かりが点滅している。
住まいの前を流れる巴川から、水しぶきの音が聞こえる。
ボラが跳ねているのだ。
バッシャーン、バシャン。
水面に激しくからだを打ちつけている。
その姿を見るにつけ私は、芸人の江頭2:50がステージから客席に飛び込むときと似ていると思う。
両腕を体側にぴったりつけ、直立のまま右か左に横飛びしているような感じなのだ。
もっとスマートな飛び方をしたら、水の抵抗が少なくてすむのに、と思うけれど、体表に付着した寄生虫を取るため、このように飛んでいるという説がある。
巴川界隈には、飲食店や居酒屋が軒を連ねている。
若いころは、仕事帰りによく同僚と立ち寄っては、ほろ酔い気分で川沿いをそぞろ歩いた。
水面に映るネオンサインが、魚が跳ねるたびに揺らぐ。
「あれは鯉?」と問うと、「ボラだよ」と答えが返ってきた。
それから二十年以上も経って、このあたりに住むとは思いもしなかった。
夜毎、ボラが跳ねる不規則な音に耳を澄ませるころになると、夏が来たなあと思う。
今では私にとっての夏の風物詩だ。
でも、ボラはほんとうは一年中、跳ねているのかもしれない。
窓を閉ざしがちな季節は耳に届かず、日中は生活音に紛れたり、自分の意識が他へいったりして、気づかないだけなのかもしれない。
汗がひき、少し肌寒くなってきた。
天井のファンを止め、サッシを引こうとしたら、また外で水しぶきが上がった。
バッシャーン、バッシャーン。
ボラたちの夜は続く。
髪を乾かすのもそこそこに居間へ行き、ベランダ側の掃きだし窓を開け放す。
海からの風はさらに川を渡り、涼やかな風となって部屋に流れ込む。
額から吹き出る汗をバスタオルで拭いながら、天井に取り付けてあるファンをリモコンで操作し、「強」で回転させる。
一枚の平面の板のように見える羽の下、外からの風は攪拌されていく。
汗がひくまではなるべくじっとしていたい。
私はパソコンデスクの前の回転椅子に座り、東に面している窓の外を眺める。
清水港にそびえるクレーンや煙突の明かりが点滅している。
住まいの前を流れる巴川から、水しぶきの音が聞こえる。
ボラが跳ねているのだ。
バッシャーン、バシャン。
水面に激しくからだを打ちつけている。
その姿を見るにつけ私は、芸人の江頭2:50がステージから客席に飛び込むときと似ていると思う。
両腕を体側にぴったりつけ、直立のまま右か左に横飛びしているような感じなのだ。
もっとスマートな飛び方をしたら、水の抵抗が少なくてすむのに、と思うけれど、体表に付着した寄生虫を取るため、このように飛んでいるという説がある。
巴川界隈には、飲食店や居酒屋が軒を連ねている。
若いころは、仕事帰りによく同僚と立ち寄っては、ほろ酔い気分で川沿いをそぞろ歩いた。
水面に映るネオンサインが、魚が跳ねるたびに揺らぐ。
「あれは鯉?」と問うと、「ボラだよ」と答えが返ってきた。
それから二十年以上も経って、このあたりに住むとは思いもしなかった。
夜毎、ボラが跳ねる不規則な音に耳を澄ませるころになると、夏が来たなあと思う。
今では私にとっての夏の風物詩だ。
でも、ボラはほんとうは一年中、跳ねているのかもしれない。
窓を閉ざしがちな季節は耳に届かず、日中は生活音に紛れたり、自分の意識が他へいったりして、気づかないだけなのかもしれない。
汗がひき、少し肌寒くなってきた。
天井のファンを止め、サッシを引こうとしたら、また外で水しぶきが上がった。
バッシャーン、バッシャーン。
ボラたちの夜は続く。