自閉症の生徒さんのレッスンで失敗したこと。
何をしたら良くないことが起きるのかわからず、気を付けていたものの、このような反応が出てしまうのか、と思ったことがありました。
彼女が小学2年生だった時のこと。
彼女はいつも1本指でブツブツ音を切ってピアノを弾いていました。
(ロシアンメソッドを知った今でしたら、むしろスタートはそこからと思いますが、その頃はこの導入法を知りませんでした)
まずは指を順番に使うことを覚えてほしいと思っていました。
(今でしたら、まずは3の指だけで弾いてもらいます。)
その日はノリノリでピアノを弾いていたので、今ならやってくれるかもしれないと思い、指を順番に使うことを教え始めると、態度が一変。
突然無表情になり、壁の一点を見つめて動かなくなりました。
名前を呼んでも、揺らしても、顔を覗き込んでも、くすぐってみても、無表情で壁の一点を見つめたまま動きません。
完全に彼女の中から私は消えていました。
自分の周りに囲いを作った様子でした。
私としては軽く「こうするといいよ」と強制するつもりもなく言ったのですが、邪魔された気分だったのかもしれません。
しばらくこの事はしてはいけないと思い、1本指のブツブツのままでした。
しかし、この3カ月後、絵を見て弾くクラウス・ルンツェの「2つの手12のキー」というテキストを使い、両手で5本の指を使いレガートで弾くことが出来るようになりました。
゚・*:.。. ☆☆.。.:*・゜゚
私の失敗はもう1回あります。
また同じ状態にしてしまったのです。
それは音の読み方を教えた時でした。
自閉症児に音は読めないと言われていました。しかし、何か方法があるのではないかと、その機会を私は狙っていました。
まずは5線を使ってどのくらいのことがわかるかと試し始めた途端、無表情で壁の一点を見つめ動かなくなりました。
またやってしまいました。
すぐに歌を歌い始めましたら、彼女は戻ってきました。
自閉症の人は抽象的なものが苦手です。
彼女には、ドレミは音の高さやメロディーというものを表したものではなく、歌詞でした。ドという言葉が音の高さを表していることがわかっていませんでした。
今でしたら、楽譜を読むことにこだわらなくとも、聴いて覚えられる曲を弾いてもらいます。私がそのような曲の存在を知ったからです。
不思議な音の国の教本には、音のキャラクターがいるので、今でしたらもっと違う教え方ができるかもしれません。
結局、音の読み方を教えることは出来ませんでした。
音楽を自閉症の方に教えたことはありませんが、何年か自閉症の子どもたちの保育をしたことがあります。
なかなかルールを教えられなくて困りました。
強制されたと思ったら固まってしまいますね。そんなつもりでなかったと言ってもだめですね。
やっぱり私の中に強制があったのだと考えないと一歩も動けません。
失敗やチャレンジの繰り返しで学ばれて来たのですね。素晴らしいと思います。