自閉症の女の子と初めて連弾ができた時の感激は、今も忘れません。
シューベルトの子守歌の後、少しずつ笑うようになった彼女。
小3の後半から前の人のレッスンが終わるのを静かに待つようになりました。
そして、この頃から会話が成立するようになってきました。
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初めて連弾ができたのもこの頃です。
私がピアノを弾くと必ず横でガチャガチャ弾く真似をしていたので、連弾は夢だろうと思っていました。
それが私が横で弾いても”弾かないで”というそぶりを見せなくなってきたので、もしかしたらと練習を進め、ある時、4小節の曲が、最後まで一緒に弾けました。
連弾が成功するとは思っていなかったので、この感動を独り占めにはできないと思い、レッスン室の外で待っていらしたお父様に「初めて連弾ができたんです。聴いて下さい。」と部屋に入って聴いていただきました。
「こんなに弾けると思わなかった」
と、喜んでいらっしゃいました。
別の日にお母様にも聴いていただきました。
連弾を聴き拍手をするお母様の姿を見て、部屋を出ていかれてから、その生徒さんが「喜んでた?」ときいてきました。
人の感情がわかるようになってきたのか、拍手をする時は喜んでいる時、と覚えたのか。
いずれにせよ、人の感情、気持ちというものの存在に気付いてきたと思いました。
連弾をするときに自分から「せいのーせ」と声をかけてきたり、冬さんさよならの歌で「冬はどこに行くの?」「春ってなに?」、ときいてくるなど、自分以外の存在、物事に関心が向いてきていました。
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小4の夏頃には、こちらから渡したものを両手で受け取れるようになり、冬には、静かに椅子に座り、自分の番になるとスクッと立ち上がりレッスン室に入るようになりました。
なかなか帰りたがらなかったものが、30分でレッスンは終わりなのだとわかるようになり、翌週のレッスンが休みの時に納得してもらうのに一苦労だったものが、休みの日もあるということがわかるようになりました。
これは少し笑える話で、なぜ休みかはレッスン回数が決まっているからなのですが、それを私が「一人で練習できるように」などとわかりにくい言い方で理由を言っていたもので、余計に納得できていませんでした。
それで、ある時に「先生も休みたいから」と言いましたら、それ以来、休みの週は「先生が休みたいから?」ときくようになりました。
小5になると、スタッフから手渡されたカード(会員証)を受け取る時に、奪い取るように受け取らなくなりました。鉛筆やペンの渡し方を覚えたのもこの頃です。
アスペルガーの人が書いた本に、このようにあります。
『物を受け取らせるには、ありがとうなどの返事や反応は一切期待せず、ただそのものをそこに置いて下さればいい』(モーツァルトとクジラより)
まずはここからスタートです。