ADHD、ADDといった言葉を聞いたことがあると思います。
ADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害のことです。
以前は注意欠陥・多動性障害と呼ばれていましたが、アメリカ精神医学会のDSM-5の改訂で現在の診断名に変わりました。
ADDは多動のないものです。現在では不注意優勢型ADHDと言うそうです。
大人の場合は、整理が極端に苦手、物が捨てられない、エネルギッシュに物事を始めるものの途中でやめてしまう、といった症状が現れます。
ADHDの障害は次の3つです。
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・不注意(注意を持続させることの困難)
・多動性(過剰な行動)
・衝動性(衝動をコントロールする・抑制の欠如)
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これらは同程度に混同するわけではありません。
基本障害は行動抑制の欠如ですが、症状や問題は変化して行きます。
幼児期・学齢期(6~15歳)にかけ、多動・衝動性が見られますが、学童中期には多動は収まってきます。
不注意は思春期以降も続く傾向があります。
男児に多く、女児に対し5:1~8:1の割合で見られます。
常に症状が出るわけではなく、教室や大勢の中、勉強時間、食事中、支度中に現れます。
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アメリカ精神医学会のDSM-5は、多動症/注意欠如(ADHD)になりましたが、その前のDSM-Ⅳには、注意欠陥および破壊的行動障害とありました。
破壊的行為障害とは、行為障害・反抗挑戦性障害・特定不能の破壊的行為障害を言います。
WHOのICDには、現在も行為障害、反抗挑戦性障害が書かれています。
(発達障がいの診断基準はDSM(アメリカ精神医学会)とWHO(世界保健機構)の2種類存在します)
反抗性挑戦障害は非社会的行為ではありません。
ADHDの25%~50%に反抗性挑戦障害は現れます。
これは、9歳前後に発症し思春期以降は発症しません。かんしゃく、口論、大人の要求を無視、わざと他人をイライラさせる、執念深い、といったものです。精神療法やカウンセリング、両親への行動療法が必要になります。
そして、これが進んでしまうと行為障害という2次障害が引き起こされます。
2次障害とは、発達障がいが原因で起こる失敗や挫折の繰り返しから、感情や行動にゆがみが生じ、周囲を困らせてしまう行動をとることです。
行為障害は、ADHDの10%にみられます。残虐行為、放火、盗み、家出、激しいかんしゃく、といった非社会的行為です。
行動を間違っていると認識していることが滅多になく、罪悪感が欠落しており治療は困難です。施設での治療が必要になります。
ここまで進んでしまう原因は、出来ないことや不快に感じることに配慮して対応しないためです。
反抗挑戦性障害の段階で、上手く行かないことが多いことから、「わざとふざけている」「やればできるのに」「何度言っても言うことを聞かない」と親が叱ってばかりいると危険です。
防ぐためには、
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・雑談をする
・返事が返らなくとも腹を立てない
・気長に構える
・感情を表に出せるよう仕向ける
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返事が返らないのは、無視をしているわけではなく、自分の気持ちについて話すことに慣れていない、自分の好きなことについて考えていて気付かないことがあるからです。
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家庭での対応が大切です。他の発達障がいと違い、気持ちの持ちようとか、心がけ次第とか思われてしまう可能性があります。ADHDは前頭葉の機能不全です。(前頭葉は注意・思考・感情のコントロールをつかさどり、物事を整理・処理・実行する機能を担います)
家でもピアノレッスンでもガミガミ言われていたら、その子供は行き場がなくなります。
ピアノのレッスンは雑談が必要な子供の場にもなります。
ピアノレッスンを受ける目的が、必ずしもピアノが弾けるようになるだけではないのです。
話している内に、自分の中にあることが整理されて見えてきます。
親以外のよく会う大人で、しかも学校の先生と違い一対一です。
2年でも3年でも、その生徒さんが気が済むまで話に付き合えるのがピアノの先生でもあります。
30分レッスンの25分が雑談でピアノは5分でも、その生徒さんにそれが一番必要なことでしたらそれで良いのです。
後ろに生徒さんがいなければ、教室が閉まる時間まで話を聞くことだって出来ます。ピアノを全く弾かずにそうやって毎週1時間半過ごした生徒さんもいます。
雑談ができるのは、あまり小さい年齢では無理で、小学校高学年以上です。
毎週一人一人の生徒さんと会っていて、しかも幼児から大人まで接しているピアノ講師は、学校の先生や親とも違う存在です。
そうは言っても、頑なに人に頼れないタイプの子供もいます。親がそのようなタイプであり、迷惑をかけてはいけないと考えているのかもしれません。人を頼ることは悪いことではありません。人間は誰かの役に立てることを嬉しく思うものです。
その子供が話せるようであれば、話を聞く。
2人の間だけの話。親に筒抜けにしないで。
誰でも、最後に決断するのは自分です。
それができる日まで見守る縁が訪れることも私たちにはあるのです。
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参考文献
『発達障がいの子供たち』 細川徹 編 者 / 中央法規 / 2003年
『発達障害ガイドブック』 東篠恵 著 / 考古堂 / 2004年
参考サイト
ADHD(注意欠如・多動性障害)とは?特徴やよくある困りごと、接し方など|LITALICOジュニア|発達障害・学習障害の子供向け発達支援・幼児教室|療育ご検討の方にも
ADDとは?症状や診断基準、ADHDとの違いを解説します