先日、ギリシャ哲学者について書いた (21 août 2005)。その中で、ギリシャを特徴付けるものの一つに「劇場」をあげている人がいた。今日、「哲学者の誕生」(納富信留著、ちくま新書 2005)を読んでいて、その意味が少しだけよくわかってきたような気がした。エピソードは以下の通りです。
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ピュタゴラスはサモスからイタリアに亡命する途上、プレイウス(もしくはシキュオン)で、その地の僭主レオンとある対話を交わす。レオンがピュタゴラスに、彼が持っている学識とは何かを尋ねると、ピュタゴラスは自分は何の知ももってはいないが、「ピロソポス(知を愛し求める者)である」と答える。レオンはこの新奇な言葉を聞いて驚き、その意味を尋ねる。そこでピュタゴラスは、次にように答える。
「人間の生は、競技会に赴く人々に似ている。ある人は競技で勝利して名誉を得ることを求め、またある人はそこで物を売って利益を得ようとする。しかし、もっとも優れた人は、競技を見るためにやって来る。そのように、人生においても、名誉や利益のような奴隷的なものを求める生き方に対して、真理を観照し愛求するピロソポスの生こそがもっとも望ましいのである。」
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(キケロ 『トゥスクルム荘対談集』 からの要約)