ローマ皇帝マルクス・アウレリウスはバルザックやプルーストが書くのを止めた50歳から執筆を始め、亡くなるまでの9年間で12作品を書いたという。2世紀のローマでは、今のような評論家もいなかったし、第一皇帝に口を出すことなど考えられなかったであろう。それにしても素晴らしいことである。
Marc Aurèle (Marcus Aurelius Antoninus) (121-180)
un empereur et un philosophe stoïcien romain
この話を読んだ時に浮かんだのが、人生の時間の使われ方は全く人さまざまだな、ということである。ある時期から、それまでとは違うことに取り組めるだけのエネルギーが残っているかどうかだろう。バルザックなどはすでにすべてのエネルギーを使い果たしたことは容易に想像がつく (11 mai 2005)。
塩野七生によると、その声と姿が残っているローマ皇帝はマルクス・アウレリウスくらいであるという。彼の声は 「自省録」 Pensées pour moi-même の中に、またその姿はローマのカピトリーノの丘にある、運命のいたずらとその芸術性の高さによって歴史を生き延びた騎馬像として。いずれ彼の声と姿に触れてみたいものである。