フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

イル・ポスティーノ "IL POSTINO" THE POSTMAN

2006-02-20 00:31:53 | 映画・イメージ

先日、パブロ・ネルーダのお話から 「イル・ポスティーノ」 という映画で彼が描かれているということを知り、最近届いた DVD を見てみた。

始まって早々にアコーディオン?に乗って哀愁の篭った音楽が静かに流れる。画面の色とともに心に染み入り、すぐに引き込まれる。昔ながらの港町に老齢の漁師の父親とその仕事に疑問を持っている息子マリオが暮らしている。漁師がいやならアメリカや日本に行って仕事をしてみろと親父に言われたりしている。そこに祖国チリを追われた詩人パブロ・ネルーダ夫妻が来る。彼が人民の詩人で女性に絶大の人気を誇っていた人だとは知らなかった。

マリオはネルーダのための郵便配達人に応募しその職を得る。配達をしてネルーダと触れるうちにマリオは詩あるいは言葉の力に興味を持つようになる。詩集を読むようになる。比喩と隠喩、メタファー("メターフォレ"?"メタフォーレ"?)についてネルーダと話すようになる。ネルーダは、詩は説明するのではなく、その中に入って感じるものだ、というようなことも話す。そのうちマリオは詩の虜になる。

ネルーダは景色を詩で描写する、詩で会話する。そこでメタファーが大きな役割を演じる。力強い。詩の力を感じる。

マリオは街の店で出会った女に一目惚れ。恋の病をネルーダに相談する。恋する男のどうしようもない情けなさが自然に滲み出ていて、他人事として見ていると滑稽でもあるが共感するところ大。その彼女ベアトリーチェと詩で愛を語るようになる。マリオを全く買っていない母親と彼女やネルーダとの会話が非常によい。彼女は結局結婚し子供を授かる。そしてネルーダがチリに帰ってから再びこの街に戻ってくるところも心に沁みる。

主人公のマリオの声に力がない。役作りなのか、本人の病気のせいなのか(この映画完成後に亡くなったという)。ところどころに覗く海と空など背景が美しい。届くかどうかわからないものに愛情を込める。大きな声を出すことはないが、しっとりと心を満たしてくれる。素晴らしい映画であった。紹介していただいた方々に感謝したい。

この後、
La rose détachée et autres poèmes:ネルーダの詩集
J'avoue que j'ai vécu:回想録
La solitude lumineuse:外交官としてアジア(コロンボ、シンガポール、バタビアなど)に滞在していた時の印象記

を注文していた。

コメント (4)
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