少々古いハナシを書く。ボクの会社がまだ大阪にあり、
ボクがJRで通勤していた頃のことだが、今はもう消え
てなくなった旧式の車両がJRの「快速}として使われて
いた時代のこと。
同じオジサンと何度か同じ車両に乗りあわせたが、
このオジサンは必ずワンカップ大関を手にして
乗ってくる。
旧式車両は座席が二人掛けで向かい合う形だから、
正面で向き合うと膝が当たるほど狭い。
その中にワンカップ大関を持って乗り込んで来るから、
当初ボクは姫路か播州赤穂ぐらいの遠隔地に行く人
だと思っていた。
電車が大阪駅を発車すると、オジサンは待ちかねた
ようにワンカップ大関のフタを剥がしにかかる。
カップを持つ手が震えている、上手にフタを剥がして
くれないと、中の酒がこぼれてボクの膝にかかり
かねない。流石に手馴れていて一度も酒を
こぼされた事はなかった。
驚いたのはオジサンが最初の停車駅である芦屋で
降りたことだ。大阪を出て十五分ぐらい。そんな短時間
なら、もう少し辛抱して家に帰ってから、ゆっくりと
飲めば良いものをと思った。
たった十五分が、オジサンには我慢出来なかったの
だろうか。
このハナシを思い出したのは、今日の日経夕刊に、
灘の銘酒8社がブランド復活を狙って、この10月から
統一の「灘」のラベルを貼ると決めたとあったからで、
大関だってあんな近距離で慌てて飲まれたら、
如何にも安物の酒にしか見えなくなっていた。
田舎のあまり有名でない酒が幅を利かせる昨今だが、
天下に響き渡った「灘の生一本」ブランドが復活する
のは好ましいこと。
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