Fate/kaleid night
さて、もう直ぐFateのアニメが放映されるので今回はFayeのSSを紹介します。
今回のお題は「UBW後の衛宮士郎がプリズマ世界に飛んでしまう」というテンプレな展開ですが。
プリズマ世界の衛宮士郎に憑依してしまう。
というかなり変わったもので、平凡な人生を送っていたプリズマ世界の衛宮士郎の魂を結果的に殺してしまいます。
そして有り得たかの知れない可能性を見せられ、
正義の味方のあり方に悩む中、魔術の世界に関わってゆく……。
「おはよう、お兄ちゃん。 あんまり起きないから、
セラがカンカンだったけど、私がフォローしといたからね。 まぁ、怒鳴られるのは確定かもだけど」
さらりと流れる銀の長髪は、まるで雪のようだった。
赤い、ころんとした大きな目は、純粋な色に染まっていて、体の小ささも相まってか、小動物染みている。
それは自分の知るイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと、とても酷似していた。
……でも何と無く、分かる。
この子は、俺の姉ではないことを。
自分が会いたかった、一緒に居たいと思った、
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンではないと、ハッキリ。
……なのに、何故だろう。
「あ、あれっ? ど、どうしたのお兄ちゃん? 何で泣いてるの?」
どうして、こんなにも両目から想いが溢れ落ちるんだろう。
涙は、止まることを知らなかった。 しゃくりあげるわけでもなく、
ただただ泣き続けるその様は、本当に不気味の筈だ。 玩具のブリキ人形が泣くとしたら、きっとこれ。
……例え、別人でも。
ここに、イリヤは居る。
そしてそんなイリヤの兄貴を、奪った自分が居る。
それで、胸の中のモノを勝手に出た。
「ねぇ、お兄ちゃん……ほ、ホントにどうしちゃったの……?」
「……ごめんな、イリヤ。 ダメな兄貴で」
イリヤの頭に、ぽんと手を置く。
触れてはいけないものだとしても、責任だけは果たさなければ。
そうでなければーー死んだエミヤシロウが浮かばれない。
と、ふと思う。 エミヤシロウなら、イリヤを抱き締めるだろうか。
不安な妹を安心させるために、強く。
……それは俺の役目ではないのかもしれない。 本当は、俺エミヤシロウしか許されないことだ。
兄貴であるお前の代わりは出来ないけど。
それでも、奪った責任だけは、果たし続けよう。
「……もう、一人になんかさせないから」
「え?」
頭に置いた手で、イリヤを撫でる。
その温かさを忘れないためにーー何よりエミヤシロウにそれが伝わるように、俺は告げる。
「もう二度と。 お前を、イリヤを、
一人ぼっちになんかさせないから……絶対に、俺がイリヤを守るから」
手の平から伝わるのは、動揺だけ。
不安など、彼女には既にない。 それだけで儲けものな気がして、笑った。
俺がお前を殺したのは、必然だった。
だからこそ、代わりにお前の幸せを受け継いでいく。
俺の命は、もう俺一人だけのものじゃない。
その幸せを受け継いで、お前が守りたかったモノまで、俺が必ず守る。
正義の味方として、イリヤの兄貴として……それを、ここに誓うよ。
「だからごめん……」
遠坂。 俺、生きて帰って来るとは言ったけど。
それが何時になるかはーーもう、分からないや。