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二次元が好きだ!!

SSなどの二次創作作品の連載、気に入ったSSの紹介をします。
現在ストパン憑依物「ヴァルハラの乙女」を連載中。

ヴァルハラの乙女 第10話「戦争」Ⅱ

2014-04-28 22:37:26 | 連載中SS


『宮藤さん、リーネさん、お願い。ネウロイがそちらに向かっているわ……』

ミーナとエイラの戦闘を観戦する形になっていたリネットと芳佳は。
インカムから聞こえたミーナの通信でたちまち観客の座から引きずり降ろされた思いであった。

「こっちにくるよ!」

芳佳が水平線の向こうを指を指し叫ぶ。
海面を這うように飛んでいるネウロイが米粒大の大きさから徐々に大きくなっている

リネットは戦場の緊張と興奮。
そして、芳佳の叫びに釣られてロクに照準に定めぬまま、引き金を引いた。

瞬間、腹の底まで響く。
対戦車ライフル独特のひと際大きな発砲音。
だが、当然のことながら明後日の方向へ弾は飛んで行った。

「…っ!!」

リネットはすっかり馴染んだ動作でボルトハンドルを上げ、手元に引く。
火薬が延焼した熱を保つ薬莢が排出され、硝煙の臭さが鼻につくがそれを意識する間もなく。

今度はハンドルを押して薬室を閉鎖。
薬室には新たな13.9ミリ弾がライフルの上部にあるマガジンから薬室へ装填される。

もう一度発砲、そしてまた外れる。
今度は最初とは違い狙って撃ったが、自らのボバリングの揺れでライフルの先がブレて弾を外してしまった。

その上、訓練の動かぬ的と違い実戦の動く的と独自の緊張感が飛行の集中力を乱す。
リネットは焦りと自らに対する怒りと共に、三度目の正直とばかりに体にしみ込んだ装填の動作を実行。

先の2回よりも集中力を高めて、弾道を計算。
飛行魔法と射撃制御の魔法のコントロールがぶつかり、脳内修正を繰り返す。
訓練通りの理想的なコントロールができていなかったけど、三度目の正直とばかりに慌てず焦らずゆっくりトリガーを引く。

発砲――――しかし、外れる。

「だめ、全然当てられない!!」

絶望の心情を吐くようにリネットが叫んだ。
何せ時間はない、もしもここで逃せば文字通り後がない。

ここを抜かれればネウロイは慈悲も情けも容赦もなく基地を蹂躙するだろう。
501の基地には着任して短いとはいえ愛着はあるし、なによりも基地にいる戦えない人間を見殺すことはできない。
やはり自分は何もできないままで終わってしまうのか?そんな焦燥感が精神を侵攻し、絶望がリネットの心を暗く閉ざしかけたが。

「大丈夫、訓練ではあんなに上手だったんだから」

芳佳からの励ましの声。
けれどもリネットは励まされる事実が己の不甲斐なさを強調された気をした。
何よりもこんな状況にも関わらず、いつもと変わらない態度にリネットは苛立ちを感じた。

「…っ飛ぶのに精一杯で、射撃を魔法でコントロールできないないから」

一瞬、芳佳に八つ当たりをしようと口を開きかけたが。
リネットの言葉は後半に入ってからさらに小さく弱弱しく変化する。
やはり自分にはできない、そう諦めのマイナス思考が脳に染み込んでゆく。

出撃のさいにあった自信が萎縮されてゆく。
しかし、宮藤芳佳はまだ諦めていないかった。

「じゃあ、私が支えてあげる。
 だったら撃つのに集中できるでしょ?」

「え?」

リネットが返事をする前に宮藤は行動に移る。
行き成り高度を下げてリネットの足の下にもぐりだした。
戦闘中の突然の奇行にリネットは呆然としたが何をしたかったかすぐに悟る。

「んっ……!!」

股間に芳佳のこげ茶色の柔らかな感触を感じ。
布越しのくすぐったさにリネットはつい色っぽい声を小さく挙げた。

「どう、これで安定する?」
「あ、あ・…はい」

股間の感触のもどかしさで顔が赤く染まる。
意味が分からずリネットはしばらく呆然としていたが、気づく。
そう、芳佳が支えてくれるおかげでボバリングは比べものにならないほど安定していた。
それに気づいたリネットは確かな希望を見出し、冷静さを確保し思考がクリアなものへと移行する。

「西北西の風、風力3。敵速、位置――-」

芳佳に感謝の言葉を行動で示すべく、しっかりとライフルを敵に向けて構える。
狙撃に必要な要素を声に出して思考をより狙撃に適したのへと暗示させ、銃と一体化する。

だが、リネットは満足していなかった。
これでもなおネウロイを仕留めるには足りない。
正確無慈悲にその数値を叩きだしてもまだまだ外してしまう。

一体何がたりない?
一体何が足りない?
短い時間だがぐるぐると思考が回転する。

「そうだ、敵の避ける未来位置を予測してしてそこに撃てばいいだ」

空戦の基本。
それは未来位置を予測してそこに弾を一度に叩きこむ。
言う事は簡単だがやるとなると経験則に依存する技術ゆえに非常に難しい。

人間は的を見て、的に合わせて狙いを定める癖がある。
的が低速で二次元での移動なら簡単に予測できてしまうが三次元空間である空中はそうはいかない。
上下左右、のみならず広大な空間は無限にも等しい選択の自由を秘めている。

そんな高等技術を習得した者だけが5機撃墜から始まるエースにやっと成れて。
250機撃墜記録を保持し、今も更新を続けるスーパーエースのエーリカ・ハルトマンの後を追いかける権利を得られるのだ。

「宮藤さん!」

だが、手は無くもない。
その方法を思いついたリネットは芳佳に呼びかけた。

同時に新たなマガジンを装填。
弾道修正、ライフルを持ち上げる。

リネット・ビショップの固有魔法は『弾道の安定と魔力付加』
念動力で放った弾丸をコントロールして、魔法力付加で威力と射程を底上げするという正に狙撃手向けの才能だ。
高い集中力を有するゆえに今の今まで訓練以外はまったく才能を生かせなかったけど、宮藤が支えてくれている。

「うん!」

芳佳はリネットの言葉に答えた。

「わたしと一緒に撃って!!」
「わかった!」

即ち、下の芳佳に機銃を撃たせて行動の範囲を限定させる。
この場合、予測して算出される機動は下は海面なので左右か上にネウロイは逃げる以外ありえない。
ここでリネットはネウロイが100パーセントそれ以外逃げようがないタイミングを図り、一撃必殺を狙う。

狙うは腹を見せることになる、体を斜め上に傾ける上昇機動。
だからリネットは視界の遥か先でネウロイが微妙に上に傾けた瞬間を逃さなかった。

「今です!」

刹那、ライフルと機関銃が光の矢を放つ。
重量60グラム、13.9ミリ徹甲弾の秒速747メートルの矢。
重量52グラム、12.7ミリ曳光弾の秒速780メートルの矢。
そんなちっぽけな金属の塊は光の軌道を青い空に曳き、人類の敵ネウロイに襲い―――リネットは見事に初戦果を挙げた。

ネウロイは宮藤の機銃弾を避けるため上昇した瞬間、大きく腹を見せる。
標的の面積が拡大した上にあらかじめ計算してリネットが放った対戦車ライフルの弾が黒いボディを貫く。
唯でさえ高威力だった上に固有魔法で威力が挙げられたため回復する余裕もなく、ネウロイは白く散り始めた。




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