小樽のパパの子育て日記

日々のできごとを徒然なるままに2006年から書いて18年目になりました。
ヤプログから2019年9月に引越し。

ナポリ行き電車のこととか

2014-12-04 04:29:38 | 雑感

ローマからナポリに向かう電車の窓からみた光景が忘れられない。
丘陵地帯にどこまでも続くぶどう畑が夕焼けに赤く染まっていた。
ふと、老婦の姿に一瞬目が止まった。
農作業を終えてこれから家に帰るのだろう。
夕陽に照らされた表情は、幸せに満ちた笑顔で何とも言えずに印象的だった。
ナポリのホテルに着いたあとも、その後訪れたウィーン、ブタペスト、アムステルダム、どこにいてもその老婦の姿がフラッシュバックし、しばらく頭から離れなかった。

東京での4年間のサラリーマン生活に見切りをつけ、地元小樽に転職したのは26歳のときだった。
営業マンとしての仕事は順風満帆だったが、自分が理想とする暮らしとは何か、行く先の人生に思い悩んでいた時期だった。
小樽に戻る前にフラリと旅してみたくなり、バッグ1つで飛行機に飛び乗った。

イタリアに着いたのは、日本を離れて約3週間が経っていた頃だった。
初めての欧州、電車に乗って自由気ままな一人旅。
イギリス、フランス、スペインと写真でみたことのある有名な観光地をいくつも巡り満足していた。
異国の文化を直接肌で感じ経験値を積むことができて自分はなんて幸せな境遇なのかと、ある意味では悦に入っていた。
ニースからローマに入り、コロッセオやスペイン広場、トレビの泉に真実の口と、ガイドマップに載っているスポットを隈なく歩き、2、3日のローマ滞在後、ナポリ行きの電車に乗った。
老婦の表情が偶然にも飛び込んできたのはそんなときだった。

その老婦は幸せに満ちていた。
夕陽に照らされた彼女のシルエットが全身でそう語っていた。
いや、正確に言うと、そう語らせたのは、幸せとは何か、人生とは何か、そんなことに思い悩んでいた自分自身だったのかもしれない。

この老婦はぶどう畑が続くこの地で一生を終えるのだろう。
自分が住む日本という国を見ることもなく、もしかしたら、アジアの一番奥にそんな島国があることさえ知らずに。
かたや、遠く日本からきた自分は欧州各地を巡り、この老婦の故郷もみることができた。
でも自分は、この老婦のような幸せに満ちた表情を一生かけてもすることができるのだろうか。
優越感のような今までの自負がガラガラと崩れたような気がした。

幸せは自分が決めるもの。
自分の与えられた持ち場で一生懸命にベストを尽くすこと。
漠然と感じていた思いが確信に変わった瞬間だった。

今でも時々思い出す。
あれは自分の人生の転機だったと思う。