おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ハゲタカ」(上) 真山仁

2008年09月20日 | ま行の作家
「ハゲタカ」(上) 真山仁著 講談社文庫 (08/09/20読了)

 NHKのドラマでやっていたのって、もう、2年以上前かな? 話題になったのが気になって買ったものの、なんか、すっかり忘れてしまっていました。「今さら…」と思いつつ読み始めましたが、なんとも、タイムリーな一冊。物語の主たる舞台は1997年以降の日本。三洋証券、山一證券の破綻をひきがねに、金融再編の嵐の中、不良債権処理に外資系ファンドが存在感を強めていく…。住宅金融のつまづきから金融混乱に陥ってしまった現在の米国経済は、1997年の日本に似ているとも言われるだけに、当時をレビューできるのは感慨深い。フィクションとノンフィクションのボーダーラインを行ったり来たりするような物語。どこまでがフィクションなんだろうと考えたくなるぐらい、金融再編については史実に忠実(ってほど昔でもないですが)なので、その業界に関心のある人は、結構、のめり込んで読めるかも。

実在の銀行や証券会社はその通りの名前では登場しませんが、なかなか、工夫されています。
大阪のイケイケドンドン系の三葉銀行← 三和
97年に自主廃業した山野証券 ← 山一
 山野を捨てた銀行 富士見銀行 ← 富士
 栃木のボロボロ銀行 足助銀行 ← 足利
 外資に買われたおおぞら銀行  ← あおぞら
 ブラックな融資先抱える東京相愛銀行 ← 東京相和
 ゴールドマン・サックス ← ゴールドバーグ・コールズ
 などなど。不良債権処理をスピード感をもって効率的に進めるバルクセールや外資系投資ファンドによるゴルフ場再生ビジネスなど、なかなか臨場感を持って描かれていて、「なるほど、こういうことだったのか」と勉強になります。
 
 もちろん、単に、10年前の金融界を振り返っているだけではありません。経営不振に陥った日光の老舗ホテルの美貌の跡取り娘や、友人の経営する倒産寸前の地方スーパーの再生にかける元・三葉銀行のエリートなど、下巻での活躍が期待される登場人物もいて、展開にワクワクします。

 ところで主人公・鷲津が経営する投資ファンド・ホライズンキャピタルって、モデルは「ローンスター」なのでしょうか。気になるなぁ…と思いつつ、下巻に突入。