おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ひとり日和」 青山七恵

2011年03月01日 | あ行の作家
「ひとり日和」 青山七恵 河出書房新社 2011/02/28読了  

 初・青山七恵。2007年の第136回芥川賞受賞作。

埼玉で母親と暮らしていた知寿は、母親の中国への研修留学を機に東京に住む遠縁の吟子さんと暮らし始める。その、なんということもない日々を描いた小説。

知寿はフリーター。お金を貯めるためのパーティーコンパニオンと、笹塚駅でのKIOSKでのバイトを掛け持ち。コンパニオンのバイトをしているなんて、さぞや華やかな暮らしぶりかと思いきや、知寿の毎日は超地味である。というか、70歳を過ぎた吟子さん以上に老成しきっている。

欲がない。執着心がない。多少の不満があっても、「まあ、そんなものか」と受け入れる。吟子さんのダンスの発表会を見に行ったり、吟子さんと吟子さんの彼氏と一緒に居間で夕ご飯を食べて茶飲み話をしたりという、あまり心躍らなそうな日常を淡々と消化していく。唯一、KIOSKのバイトを通じて知り合った彼氏との別れには心理的なダメージを受けるものの、20歳そこそこの恋の終わり方としては、実に、あっさりとしたものである。

その後、小さな会社で正社員の職を得て、知寿に新しい恋が始まる予感を感じさせつつ物語は終わるのだが「もう、バイトの彼の時ほど、激しい恋にはならないだろう」と、始まる前からテンション低過ぎ。えっ~20歳代前半で、そんなこと決めちゃっていいわけ? 「若いんだしさ、もうちょっと、強欲に生きようよ」などと説教をしたくなったりする。

もちろん、私の日常だって平々凡々としたものである。知寿と同じように、休みの日には顔も洗わず、スウェットのままダラダラとお茶を飲みながら本を読んで気がついたら「昼過ぎ!」なんてこともある。しかし、若い作家が若い女子を主人公にして「諦念」をテーマにしたみたいな作品って、なんか、日本って本当に活力の無い国になってしまうんじゃないかと心配になるのでした。