おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「明日この手を離しても」 桂望実

2011年03月26日 | か行の作家
「明日この手を離しても」 桂望実著 新潮文庫    

 裁判官になることを夢見ていた大学時代に病気で突然、失明してしまった妹・凜子。短気で、気まぐれやの兄・真司。その後、母が自動車事故で亡くなり、父親は謎の失踪をとげ、2人だけが取り残される。決して、仲が良かったとは言えない兄妹が、少しずつ、歩み寄り、互いを理解しあうようになる成長物語。

 失明して、生きる気力も目的も失っていた凜子は、盲目の少女を主人公とする漫画の原作者として生きる喜びを取り戻していく。真司は、妹のサポート役として、漫画家との調整やコマ割りなどを担当。漫画の主人公を成長させるために知恵を出し合い、試行錯誤する2人。そのステップが凜子と真司を成長させる。

 物語の中で漫画が重要なアイテムだから―というわけではないと思うのですが、なんとなく、漫画チックな物語でした。「人生の途中で失明した女性が、いかに失意から立ち直り、生きる道を見出すか」という骨組みがあれば、かなり、ダイナミックな物語ができるような気がするのですが、どこかチマチマした印象。

細切れな感じでちょっとしたトラブルが凜子の身に降りかかり、それを解決していくことが、物語の推進力になっていのです。つまり、連続ドラマで、毎週毎週45分を過ぎたあたりで「えっ~~」と言いたくなるような出来事が起こるようなノリ。

 軽い読み物としては気楽で悪くないけれど、物語としての面白みはイマイチでした。