おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「オチケン!」 大倉崇裕

2009年04月29日 | あ行の作家
「オチケン!」 大倉崇裕著 理論社 (09/04/29読了)

 おいおい、こりゃ、小学生文庫シリーズっすか? と聞きたくなるようなストーリーでした。薄くて、ぬるいコーヒー飲んだような物足りなさ。同著者の「福家警部補の挨拶」(創元推理文庫)はめちゃめちゃ楽しくって、私的には、超・期待の作家だっただけに、ややガッカリ。

 理論社の「ミステリーYA!」シリーズの中の一冊なので、一応、ミステリーなんでしょうが、あまりにもコジツケっぼく、事件の設定もくだらな過ぎて、謎解きをする気も萎える。文章のリズムもチンタラ(ゆったりとしているというプラスの評価はし難い…)していて、ノレなかった。

 しかし、それと比べると、巻末のオマケは面白い。理論社のウェブサイトに7回に渡って著者が寄稿した「落語ってミステリー?」を収録したものです。著者が、落語からいかにインスピレーションを得ているか、そして、敷居が高いと敬遠せずに多くの人に落語を聞いてもらいたいと思っていることが、素直に伝わってくるエッセイでした。多分、編集者的には、このエッセイを依頼した時点から、著者に落語をテーマにしたミステリーを書かせようと目論んでいたのでしょうね。

 この著者に限ったことではないのですが… 最近、「書かせすぎはやめよう!」と声を大にして叫びたくなることがある。ちょっと「当たり」が出た作家には、A出版も、B書店も、C社も押し寄せて、次々と、新作を要求する。でも、水量が衰えることなく、永遠に滾々とわき続ける泉なんて、そうはないんじゃないでしょうか。貴重な水源は、無駄にせずに、大切に使おうよ!!!! 「福家警部補」を読む限り、とっても、いい水が湧いている泉だと思うんです。だからこそ、こんな駄作で泉の寿命を縮めてしまうことは、もったいなくてなりません。