杉浦 ひとみの瞳

弁護士杉浦ひとみの視点から、出会った人やできごとについて、感じたままに。

・砂川判決は集団的自衛権には言及していない

2014-04-04 00:45:04 | 憲法問題
過去の最高裁の判決(砂川事件)が、国の自衛権に言及したことをもって、
「司法も集団的自衛権を認めていた」と解釈する自民党の高村副総裁の意見に対して、
公明党の山口代表は、この最高裁判決が在日米軍の基地についての問題で、
個別的自衛権を念頭において出された判決だと反論しました。

高村さんも山口さんも共に弁護士ですが、山口さんの理解が正しいと思います。
なぜなら、1959年当時は、自衛隊の存在自体が憲法9条に反するのではないかということが問題にされていた頃で、
自衛隊が海外に出て戦争をするなどいうことは問題にされていた時代ではないからです。

また、日本の裁判所は、具体的な紛争を解決するに必要な範囲で判断をするという付随的審査制をとっています。
当時、日本の憲法解釈に問題となっていないような集団的自衛権のことについて、
一般論として言及することは,司法制度のあり方としても考えることはできないからです。

集団的自衛権を何とか認めたい自民党の高村さんが、「自衛権」に言及した過去の判例に思い至って、
そのことを根拠にしようとしたことは、
弁護士としては、苦し紛れにせよいい思いつきだとは思いますが、
当時の時代背景の中で司法が到底言い及んでいないことを強弁しても、「請求棄却」(=認められない)となるはずです。

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2 コメント

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砂川判決 (ルビイ)
2014-04-21 01:04:12
高村副総裁は集団自衛権を認めたいがために、過去の砂川判決を持ち出し、自分の都合の良いように恣意的に解釈し、集団自衛権の容認にはずみをつけようとしていることが見得見得です。
もし日本が集団自衛権が容認されていた国だったら、イラク戦争で戦闘行為に参加、イラク人を殺し、日本人も殺されていたことでしょう。
集団自衛権の否認が、蛮行を食い止めた歯止めになったといえるでしょう。

ちなみに砂川判決で、歴史的な伊達判決を覆した最高裁の判決は、判決前に最高裁の判事が、米国側と事前に打ち合わせていたことが明らかになりつつあります。
最高裁判決は、当時の日米両政府の意に沿う形で判決が下されるように根回しがあったことは明らかでしょう。再審請求を行うのがベターなように思います。
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砂川判決は個別的自衛権に限定していない (鉄甲機)
2014-04-06 16:22:33
>1959年当時は、自衛隊の存在自体が憲法9条に反するのではないかということが問題にされていた頃で、
>自衛隊が海外に出て戦争をするなどいうことは問題にされていた時代ではないからです。

いやいや。普通に問題にされていましたよ。
当時から安保反対九条護持自衛隊解散を主張する方々は、「自衛隊違憲」から始まって「アメリカの戦争に日本が巻き込まれる」と続き、「徴兵制復活」「自衛隊は日本軍としてアメリカの戦争に参加することになる」と言いながらデモを繰り返しておられましたし、後に教職に就かれた方々は児童生徒にせっせと刷り込んでおられました。
まさかお忘れではないですよね。

>当時、日本の憲法解釈に問題となっていないような集団的自衛権のことについて、
>一般論として言及することは,司法制度のあり方としても考えることはできないからです。

いやいや。普通に判決文に載っていますよ。以下引用。
>平和条約がわが国に主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章がすべての国が個別的および集団的自衛の固有の権利を有することを承認しているのに基き、

また、田中耕太郎裁判官の補足意見として
>我々は、その解釈について争いが存する憲法9条2項をふくめて、同条全体を、一方前文に宣明されたところの、恒久平和と国際協調の理念からして、他方国際社会の現状ならびに将来の動向を洞察して解釈しなければならない。字句に拘泥しないところの、すなわち立法者が当初持っていた心理的意思でなく、その合理的意思にもとづくところの目的論的解釈方法は、あらゆる法の解釈に共通な原理として一般的に認められているところである。そしてこのことはとくに憲法の解釈に関して強調されなければならない。

ともありますな。

まあ大体がして、砂川判決自体がアメリカ政府の圧力と日本政府の陰謀で画期的な伊達判決を覆した政治的判決であり、そんなものには一片の価値も無いというのが、護憲派九条原理主義者の主張だったでしょ?
日米両政府の陰謀で正義を枉げた最高裁判決文なんですから、将来どうとでも取れるような軍国主義者の罠が仕組まれているに決まっているじゃありませんか。(棒読み

それを今更「個別的自衛権の話だいっ!」「集団的自衛権なんて聞いたことないよっ!」って、苦し紛れもいい加減にしろとしか。
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